アジア・マップ Vol.01
巻頭言(Vol.1)
《AJI Webマガジン》として『アジア・マップ』を創刊し、皆さまにお届けいたします。
立命館大学アジア・日本研究所では、これまで「アジア・日本研究」の発展をめざして研究活動や国際連携を展開してきました。さらに、世界的なコロナ禍の状況下での困難を突破するために、デジタル・トランスフォーメーション(DX)を活用した学術情報の発信の実現に力を入れてきました。このWebマガジンの創刊は、その流れの中にあって、アジアと日本をめぐる研究成果や社会的に意義のある情報を発信する新しい手法を試みるものです。
新しい試みのポイントは、3つあります。まずアジアの「クリッカブル・マップ」です。トップページにアジアの地図を掲げ、地図上の任意の国をクリックすると、その国のページに飛んで、そこで提供されている日本とアジア各国に関するさまざまな論考・記事をすぐに閲覧することができます。地図を媒介とすることで、グローバルな世界の中での日本とアジア諸国の相関性を感じることができるか思います。アジアの結びつきを視覚的にとらえながら、アジア内の地域や国について考えていきたいと思います。
2番目のポイントは、これ自体が逐次刊行物となっていることです。ウェブ上で情報発信することは、もはや当たり前のことですが、学術情報をこのように読みやすい形で発信する際に、それを執筆者の「成果発信」としてきちんと位置付けることは、必ずしも定着しているわけではありません。デジタル情報発信をそれぞれの研究者の成果発信として書誌情報を明示することは、DX時代に推進すべき課題であろうかと思います。
3番目のポイントは、このような発信を契機としたアジア・日本研究の推進です。地図に落とし込み、そこにあるすべての国を対象とすることで、それらの国々に対する研究には濃淡があることも、すぐに見えてしまいます。実際に、本誌の編集過程で、専門家が非常に少ない国がいくつもあることがわかってきました。そこをできるだけ強化すべきことは、言うまでもありません。『アジア・マップ』では、専門家による学術的研究に基づいて、わかりやすく親しみやすい情報発信がめざしますが、濃淡の差を埋めて、アジア全域にわたって学術データ蓄積の質的・量的な拡大に努めていきたいと思います。
掲載される学術的なデジタル・コンテンツをご覧いただくと、おわかりのように、専門家の執筆者たちが、それぞれの国の概要をまとめた「~という国」、その国を長年研究してきた専門家による「~と私」というエッセイ(これは、若手の研究者やこれから研究をめざす学生さんにも役立つ記事だと思います)、最近のデータを盛り込んだ21世紀年表、都市に関するエッセイ、読書案内などを提供しています。読書案内では、一般の皆さまにとって親しみやすい書籍、専門書として重要な書籍などを区分けして、紹介しています。
『アジア・マップ』を通じて、アジア地域の多様性、歴史的な深みや現代社会のダイナミクスなどを体感していただき、また本誌を通じて、さらなるアジア・日本研究の発展に貢献できることを切に願っています。どうぞ、ご声援ください。
アジア・日本研究所長
小杉 泰
(2023/1/10記)