アジア・マップ Vol.01 | フィリピン
21世紀年表
宮川慎司(上智大学日本学術振興会特別研究員(PD))
1999年 | |
---|---|
5月 | 訪米米軍地位協定 (VFA)により、米軍との合同軍事演習や有事の際の米軍の迅速な対応を可能にする。 |
8月 | 台風オルガにより、大規模な地すべりが発生。 |
12月 | プエルト・プリンセサ地底河川国立公園が世界自然遺産に登録される。 |
2000年 | |
3月 | ジョセフ・エストラーダ大統領がイスラーム教徒の自治確立を目指すモロ・イスラーム解放戦線との「全面戦争」を宣言。 |
4月 | 21人の外国人がフィリピンからの独立を目指すイスラーム教組織アブサヤフによって誘拐される。 |
7月 | ケソン市のパヤタスでゴミ山が崩壊し、200人以上が死亡する。 |
11月 | エストラーダ大統領がフエテン賭博をめぐる上納金を受け取ったことに関して弾劾裁判所が設置される。 |
2001年 | |
1月 | 反エストラーダの市民による社会運動が発生(ピープルパワー2)。エストラーダが大統領から退き、副大統領のグロリア・アロヨが大統領に就任。 |
4月 | エストラーダ元大統領を擁護する市民が社会運動を起こす(ピープルパワー3)。 |
11月 | 住民投票が行われ、バシラン州とマラウィ市がムスリム・ミンダナオ自治地域に加盟。 |
2002年 | |
6月 | フィリピン軍の特殊部隊によってアブサヤフの捕虜に対する救助作戦が行われる。 |
10月 | アブサヤフによるものと見られる爆発事件がマニラ市とザンボアンガ市において起こる |
2003年 | |
2月 | モロ・イスラーム解放戦線から離脱したテロリスト集団ペンタゴン・ギャングに対して政府の兵士が攻撃を行う。 |
7月 | 待遇改善や国軍の汚職撲滅を訴える青年将校がホテルを占拠。 |
2004年 | |
2月 | アブサヤフ勢力によってスーパーフェリーが爆破され、116人が死亡。フィリピンにおける最も死者数が多いテロ事件となる。 |
5月 | 総選挙が行われアロヨが大統領に当選。しかし、公金を選挙資金として用いた疑惑が浮上した。 |
11月 | 熱帯低気圧のウィニーにより1500人以上が犠牲になる。 |
2005年 | |
2月 | マカティ市、ダバオ市、ジェネラルサントス市においてアブサヤフによるものとされる爆発が発生し、100人以上の死傷者が出る。 |
5月 | 政府の財政難の対策として、付加価値税率を引き上げる法案が成立。 |
6月 | アロヨ大統領と選挙管理委員長の間の、選挙結果を操作する話し合いの電話の録音が公開され、アロヨを弾劾しようとする動きが起こる(通称、ハロー・ガルシィ・スキャンダル)。 |
2006年 | |
2月 | 国軍幹部によるクーデター計画が判明し、アロヨ大統領が国家非常事態を宣言する。 |
6月 | アロヨ大統領が死刑を廃止する法案に署名。 |
11月 | 台風ドリアンが発生し、100人ほどの死傷者が出る。 |
2007年 | |
8月 | フィリピン共産党指導者のホセ・マリア・シソンがオランダで逮捕されるが、証拠不十分で釈放される。 |
10月 | 在任中の不正蓄財などの罪で終身刑判決を受けていたエストラーダ元大統領が恩赦を受け、保釈される。 |
2008年 | |
8月 | フィリピン政府とモロ・イスラーム解放戦線の間の和平交渉が決裂し、戦闘が激化。 |
2009年 | |
1月 | アブサヤフにより、スイス人およびイタリア人を含む国際赤十字委員会の職員が誘拐される。 |
8月 | 包括的農地改革延長法が通過し、包括的農地改革計画が2014年まで延長される。 |
11月 | ミンダナオ島マギンダナオ州で、地元の支配的一族の私兵によって地元政治家の親族やジャーナリストら57人が犠牲になる。 |
12月 | アロヨ大統領はマギンダナオに戒厳令を発令。虐殺に関与した一族の身柄を拘束。 |
2010年 | |
5月 | 総選挙が行われベニグノ・アキノ・3世が大統領に当選。 |
8月 | 観光名所リサール公園にて観光バスが乗っ取られる人質事件が発生。銃撃戦の末8人が死亡。 |
2011年 | |
11月 | アロヨ元大統領が2004年の大統領選における選挙妨害容疑で逮捕される。 |
2012年 | |
10月 | フィリピン政府とモロ・イスラーム解放戦線の間でバンサモロ枠組み合意が成立する。 1672年にキリスト教布教活動中にグアムで殺害されたペドロ・カルンソッドがフィリピンで二番目の聖人として列聖される。 |
12月 | アキノ大統領が避妊法の保障、中絶した母体の保護(中絶自体は違法)などを定めるリプロダクティブ・ヘルス法に署名。 |
2013年 | |
5月 | 基礎教育(初等教育と中等教育)を従来の10年から12年に延長するK-12プログラムの実施が定められる(2016年より実施)。 |
7月 | バンサモロ連邦共和国がフィリピンからの独立を宣言する。 |
8月 | 優先開発支援資金(ポークバレル)の流用に抗議する大規模デモがマニラで発生(ミリオン・ピープル・マーチ)。 |
11月 | 超大型台風ヨランダがフィリピン中部を横断。フィリピン史上最大級の被害が出た台風となる。 |
2014年 | |
3月 | バンサモロ包括和平合意が締結される。ムスリム・ミンダナオ自治政府が解消され、新たにバンサモロ自治政府が設立されることが合意される。 フィリピン政府が南シナ海の領有権をめぐる中国との争いに関して国連仲裁裁判所にパネルを設置し仲裁を要望。 |
4月 | アメリカとの防衛力強化協定が調印され、アメリカ軍との連携強化が確認される。 |
2015年 | |
1月 | ミンダナオ島ママサパノでフィリピン国家警察とモロ・イスラーム解放戦線が衝突。44人の警察官が死亡。 |
12月 | ピア・ウォルツバックがラスベガスにおけるミスユニバースコンテストで優勝。 |
2016年 | |
5月 | 総選挙が行われロドリゴ・ドゥテルテが大統領に当選。 |
7月 | ドゥテルテ大統領による麻薬の売人や使用者に対する超法規的な取締りが行われ、多数の人が警察官に殺害される。 南シナ海の領有権めぐる中国との争いに関して、常設仲裁裁判所が中国の主張する領有権には国際法的な根拠がないとの見解を示す。 ドゥテルテが政治の透明化のために行政機関に対する情報公開に関する大統領令に署名する。 |
11月 | 最高裁判所が、フェルディナンド・マルコス元大統領の遺体を英雄墓地に埋葬することを許可する決定を下す。 |
2017年 | |
4月 | フィリピンが気候変動対策として温室効果ガスの削減を定めるに関するパリ協定に調印。 |
5月 | マラウィ市における治安部隊と武装勢力との衝突により、ミンダナオ島に戒厳令が発出される。 |
8月 | ドゥテルテが国公立大学の授業料を無償化する法案に署名。 |
10月 | フィリピン軍と過激派組織との戦闘の末、ドゥテルテはマラウィ市の奪還を宣言。 |
2018年 | |
1月 | 税制改革法(TRAIN法)が施行される。 |
4月 | 環境汚染対策のために観光地ボラカイ島への観光客の立ち入りを半年間禁止する。 |
7月 | ドゥテルテがバンサモロ基本法に署名し、南部ミンダナオのバンサモロ自治政府に高度な自治が認められる。 |
2019年 | |
2月 | バンサモロ自治政府が発足し、ミンダナオ自治地域はバンサモロ自治地域へと移行。 ドゥテルテが国民皆保険法に署名。 |
3月 | ラメサダムの水位が低下し、マニラ首都圏において大規模な断水が発生。 |
2020年 | |
1月 | 保健省がフィリピンで最初のCOVID-19を確認。 |
2月 | フィリピン政府が訪米米軍地位協定(VFA)の破棄を通告(しかし、2021年6月にそれを撤回)。 |
3月 | COVID-19への対処のため、マニラ首都圏を部分的にロックダウン。 COVID-19に対応するために大統領の権限を強化。 |
7月 | 治安強化のために、テロリズム防止を目的とした反テロ法が成立。 |
2021年 | |
7月 | 女子重量挙げ選手のヒディリン・ディアスが東京オリンピックでフィリピン代表として初の金メダルを獲得。 |
10月 | 一般市民に対するCOVID-19ワクチンの摂取が始まる。 麻薬関係者への取締りなどに関して、ドゥテルテ政権の強権的な姿勢を批判してきたオンラインメディアであるラップラーの共同創設者のマリア・レッサが、表現の自由を守るために闘ったとしてノーベル平和賞を受賞。 |
2022年 | |
3月 | 海外企業からの投資活発化を目指した改正海外投資法が成立。 |
5月 | 総選挙が行われボンボン・マルコスが大統領に当選(フェルディナンド・マルコス元大統領の息子)。 |
12月 | 携帯電話を用いた犯罪防止のためにSIMカードの登録が義務化される。 |
書誌情報
宮川慎司「フィリピン21世紀年表」『アジア・マップ:アジア・日本研究Webマガジン』Vol.1, PH.3.03(2023年3月22日掲載)
リンク: https://www.ritsumei.ac.jp/research/aji/asia_map_vol01/philippines/timeline/