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2022.07.20

【レポート】AJIブッククラブ「著者は語る」(第1回)を開催しました!末近浩太教授(国際関係学部)が初著『現代シリアの国家変容とイスラーム』について報告

 2022年7月6日(水)、AJIブッククラブ「著者は語る」がオンラインで開催されました。ブッククラブは、以前に出た重要な本について、著者に語っていただくというシリーズです。その記念すべき第1回は、末近浩太教授(国際関係学部)に、先生の初著『現代シリアの国家変容とイスラーム』(ナカニシヤ出版、2005年)を語っていただきました。著者のお話を直接聞き、質問もできるまたとない機会とあり、100名近い参加がありました。

 末近先生からは、「シリア」を説明する3つのキー概念、①地域としての「シリア」(シャーム/歴史的シリア)、②「シリア」のイスラーム(これを理解することで、宗教の力が弱まっていくという近代化論を相対化する試み)、③「未完の物語」としての「シリア分割」(オスマン帝国崩壊後に現在の国境線が引かれ国民国家ができ、その国の姿がさらに変わっていく可能性がある)、について分かりやすくご解説いただきました。

今のシリア(シリア・アラブ共和国)という国を理解するには、まず、それが乗っている土台である現代の「シリア」(①②③の組み合わせ)を理解しなければならないということ、すなわち、国家というのは人間が作った法制度であり、それを作り出した土台としての地域を研究しないとその国は分からない、という点が強調されました。

 また、シリアをはじめレバノンや、ドイツ(亡命シリア人の聞き取り)などでの調査の思い出を、懐かしい写真とともに振り返りながら、フィールドワークの醍醐味についても語られました。

 質疑では、地域研究と既存の学問分野との違いについての問いがあり、「研究対象とする地域と自覚的に向き合い、その地域を明らかにしようという『魂』があってこそ、地域研究」という明確かつ力強いお答えが、若手をはじめ多くの参加者を魅了しました。

 「好きなことをやって、好きな『謎』をライフワークとして解いていく、そして世界を飛び回っていろいろな人と会って情報を集める仕事はじつに楽しい」という先生の熱いメッセージは、大学院を目指す学生さんたちや研究を志す若手にとって大きな励みになったと思います。

 今回お話があったシリアのように、政治構造は国の中ではなく国家を超えたところにあり、それが国家を規定しているという視点が地域では大事であるということが確認でき、大変学びの多い会となりました。ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。

著者は語る 末近先生1
自著を語る末近教授

著者は語る 末近先生2
当日の参加者の様子

立命館アジア・日本研究所では、AJIブッククラブのもと、「著者は語る」シリーズだけでなく、AJIブックローンチなどを通して学術書の紹介・報告を行っています。過去のAJIブッククラブ開催イベントはこちら