NEWS

2022.09.22

中戸祐夫先生・崔正勲先生の共編著が刊行されました!『北朝鮮研究の新地平―理論的地域研究の模索』(晃洋書房)

中戸先生書影 北朝鮮

 アジア・日本研究所のメンバーで「アジア・日本研究推進プログラム」のリーダーをなさってきた中戸祐夫先生(国際関係学部教授)と、崔正勲先生(立命館アジア・日本研究機構助教)の新著が刊行されました。

 帯にあるように、本書は新進気鋭の研究者が集い、理論的地域研究アプローチに基づき、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)について研究した成果です。
 もう少し具体的には、北朝鮮研究において、理論的地域研究アプローチに基づき、既存の研究とは異なる新たな視座から切り込むことで、北朝鮮研究の知見の蓄積に貢献することを目的として、本書は編まれました。
 理論的アプローチでは、理論的諸変数間の関係を明確化しようとします。したがって、このアプローチでは、理論的な分析枠組みを明示し、叙述的ないしは計量的手法を用いて、変数間の因果関係を特定しようと試みています。
 上記のように「理論」を前面に押し出した説明を聞くと何か小難しく感じられますが、要は理論に裏打ちされた分析枠組み(「レンズ」あるいは「窓」のようなもの)を設定し、その観点から朝鮮半島地域にまつわる特定の問題を分析してみよう、という研究手法です。
ちなみに日本における朝鮮半島研究は歴史的アプローチが主流であり、とりわけ、理論的アプローチを用いた北朝鮮研究はほとんど存在しないといっても過言ではありません。ここに本書刊行の意義の一つがあります。

 次に本書の内容をかいつまんで紹介しますと、まず序章で、中戸祐夫先生が北朝鮮という研究対象を、理論を分析枠組みとしアプローチすることで得られる新たな視座とその意義について論じています。
 第1章では、崔正勲先生がアマルティア・センが証明したリベラル・パラドックスの観点から事例となる第一次朝鮮半島核危機を考察した上で、リベラル・パラドックスが持つ国際危機研究への示唆を示します。
 第2章では、小川伸一先生が近年における北朝鮮の核兵器高度化とその日本の安全保障への影響について、抑止論の視点から分析しています。
 第3章では、文京洙先生がハーバーマスが提唱した概念である「介入」と、それに対する韓国の知識人の反応をなぞり、統一問題について考察しています。
 第4章では、許在喆先生が中国の外交をネットワーク論の観点から考察した上で、この分析から得られる中朝関係の変化について指摘します。
 第5章では、馬場一輝先生が6者協議における日本の対北朝鮮政策を、外圧反応国家仮説に拉致問題要因を加えて分析しています。
 第6章では、張瑛周が6者協議の枠組み-特に米国による北朝鮮への非核化の圧力の構図-を強制モデルの抑止ゲームの観点から考察しています。
 第7章では、チェ・ユンヒョク先生がトランプ大統領の公式発表とTwitterのツイートを分析し、シンガポール会談の前後でトランプ大統領の北朝鮮に対する論調や態度の著しい変化・特徴があることを示します。
 第8章では、李承宰先生が「韓国的解放」の概念が形成される経緯や議論の特徴を解説し、「韓国的解放」が文在寅政権の安全保障政策でどう現れるのかを、実際の対北朝鮮関係、対米・対日関係の事例を用いて説明します。
 以上簡単な紹介文となりますが、ご興味のある方は、本書が朝鮮半島研究の第一人者である李鍾元先生が書かれた「その先進的な研究手法によって、北朝鮮の新たな側面が浮かび上がっている」という帯の評にかなうか否か、一度お読みいただき、是非ご感想をお聞かせください。

 本書は立命館大学アジア・日本研究推進プログラムの研究成果の一部であり、立命館大学の出版助成を受けました。

 本書のブックローンチが開催されます(2022年9月30日)。詳細はこちら