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2022.10.13

【レポート】第9回AJIブックローンチを開催しました!中戸祐夫先生(立命館大学国際関係学部教授)と崔正勲先生(立命館アジア・日本研究機構助教)の編著本『北朝鮮研究の新地平:理論的地域研究の模索』(晃洋書房)について執筆者から報告

 2022年9月30日(金)17:00~18:00、オンラインにて、中戸祐夫先生(立命館大学国際関係学部教授)と崔正勲先生(立命館アジア・日本研究機構助教)による新著『北朝鮮研究の新地平:理論的地域研究の模索』(晃洋書房)のブックローンチが開催されました。

 本報告は共編者及び共著者による共同発表形式で行われました。冒頭に編者の一人である中戸祐夫先生が、本書の概要と出版に至った経緯について説明しました。とりわけ本書が朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)研究において、理論的地域研究手法に基づき、既存の研究とは異なる新たな視座から切り込むことで、北朝鮮研究の知見の蓄積に貢献することにあることが強調されました。

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本書について報告を行う中戸祐夫先生

 次にもう一人の編者である崔正勲先生と、共著者の中で参加することができた文京洙先生、張瑛周先生、馬場一樹先生が本書に掲載された内容について、その概要を説明しました。

 第一に、張瑛周先生が第6章について発表しました。具体的には、6者協議の枠組みを「強制モデルの抑止ゲーム」の観点から分析し、6者協議の過程で生じた二つの休会プロセスを比較することで、北朝鮮が米国の圧力に対抗するため、どのように核のオプションを使い分けたか、を考察しました。

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報告を行う張瑛周先生

 第二に、馬場一樹先生が第5章について説明しました。具体的には、「2レベル・同盟ゲーム」の観点から、6者協議における日本の対北朝鮮政策を、外圧反応国家仮説に拉致問題要因を加えて分析しました。

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報告を行う馬場一樹先生

 第三に、文京洙先生が第3章について発表しました。朝鮮半島の統一問題をめぐりハーバーマスが提唱した概念である「介入」と「デモス・エトノス」の観点から、それに対する韓国の知識人の反応をなぞり、その後の韓国社会の変化や南北統一をめぐる今日の状況について分析しました。

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報告を行う文京洙先生

 最後に、崔正勲先生が第一章について説明しました。分析枠組みとなるアマルティア・センが証明した定理「リベラル・パラドックス」について概説し、その後事例として冷戦体制崩壊以後における米朝間の緊張形成の1つである朝鮮半島核危機を用い、その分析を行いました。

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報告を行う崔正勲先生

 ブックローンチという場だからこそ直接著者から聞くことができる貴重なお話満載の会となりました。また、オンライン開催ゆえに共著者が一堂に集うことが可能となり、終始活発な議論が交わされる知的雰囲気の中、大変充実したイベントとなりました。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

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当日の会場の様子