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2022.11.11

【レポート】立命館大学アジア・日本研究所/医化学研究室セミナーを開催しました! 大阪公立大学 宇留島隼人先生をお迎えして肝星細胞にまつわるお話をしていただきました

西澤 幹雄(生命科学部生命医科学科・教授)
「アジアの伝統医薬と食材探索を用いた糖尿病予防の研究」プロジェクト代表

 2022年10月21日15:00〜16:00にBKCバイオリンク5階の演習室にて、立命館大学アジア・日本研究所/医化学研究室セミナーが開催されました。大阪公立大学大学院医学研究科 機能細胞形態学 講師の宇留島隼人(うるしま はやと)先生をお迎えして講演していただきました。「肝臓特異的組織構造に着目した肝星細胞脱活性化剤開発研究」と題する本セミナーでは肝星細胞のはたらきについて説明があり、肝星細胞(hepatic stellate cell)の機能を抑えて肝硬変を防ぐ機能性食品の探索に関する研究紹介がありました。

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ご講演いただいた宇留島先生

 糖尿病と肝疾患の密接な関係は有名で、糖尿病患者さんの約10人に1人が肝疾患関連で亡くなっているといわれています。とくに、2型糖尿病が肝細胞がんの危険因子(リスクファクター)であることが知られています。一方、肝硬変と肝細胞がんとの関連も深く、肝線維化における肝星細胞の役割が注目されています。糖尿病や肥満などにより肝臓の線維化が進んで肝硬変となり、がん化につながると考えられています。

 肝星細胞は肝臓内に存在する星形の細胞であり、肝臓の細胞数の約10%を占め、生体内のビタミンAの大部分を蓄えています。ところが、肝星細胞が障害を受けると活性化して、サイトカインの一種であるTGF-βやコラーゲンなどの細胞外マトリックスを産生し、障害部位を修復します。慢性肝炎では肝星細胞が持続的に活性化されて線維化を引き起こし、肝硬変に向かいます。肝硬変になってしまうと元には戻らないので、肝線維化の進展予防が臨床的にはとても大切です。

 肝星細胞が活性化される際には、細胞ががん化するときに見られる「上皮-間葉転換」に似た現象が起こります。宇留島先生らは、活性化した肝星細胞が上皮細胞のような形に転換できれば肝星細胞の活性化を防ぐことができるのではないかと考え、数千種の天然物や化合物を使ってスクリーニングを行い、候補化合物を発見されました。本セミナーではこの研究に関する詳細な説明がありました。また肝線維化は非常にゆっくりと進展するので、日々の生活習慣に留意した予防が大事です。宇留島先生らが行っている、肝星細胞の活性化を抑制する機能性食品に関する研究についても紹介されました。宇留島先生は獣医師であり、大阪公立大学の動物実験施設の実験動物管理者を兼任されており、比較動物学についての興味深いお話もありました。

 講演中や講演後には、肝星細胞の機能やその活性化のメカニズムについてのさまざまな質疑応答がありました。肝臓内では少数である肝星細胞の調製の困難さについても詳しい説明がありました。活発な議論が交わされて、大変充実したセミナーとなりました。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

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講演を行う宇留島先生

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当日の会場の様子