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2022.11.15

【レポート】AJIブッククラブ「著者は語る」(第2回)を開催しました!文京洙教授(立命館大学名誉教授)がご著書『済州島四・三事件:「島のくに」の死と再生の物語』について報告

 2022年11月2日(水)17:00~18:00、オンラインにて、立命館大学アジア・日本研究所(AJI)の主催でブック・クラブ「著者は語る」が開催されました。今回は、文京洙・立命館大学名誉教授がご著書『済州島四・三事件:「島のくに」の死と再生の物語』(平凡社、2008年、増補版 岩波現代文庫 2018年)について語ってくださいました。

 本書は、朝鮮半島南端の島・済州島で、130余りの村が焼かれ3万人近い島民が犠牲となった「済州島四・三事件」について、長年タブーとされてきたその実相を解明し、事件の歴史的背景、真相糾明とその闘争、そして歴史と真実を回復し、島共同体が再生するまでの過程を綴ったものです。

 著書による紹介では、済州島四・三事件とはどんな事件なのかについて、まず、四・三事件の展開について、武装蜂起の背景、朝鮮半島の解放と分断と解放直後の済州島、朝鮮戦争勃発以後の虐殺といった時間的推移を通して論じられました。また、四・三特別法の公布前後の、犠牲者の名誉回復をめぐる問題の公論化やそれをめぐる動きについて詳しい説明がなされました。また、同事件を逃れた人びとが日本へ密航することによってその一角が形成された在日朝鮮人社会は、いわば、思想の違いを超えて同じ生活空間を共有する世界が形成されたという意味で、排除の論理を超えた和解の空間が生まれたという提起がなされ、同事件と在日朝鮮人社会の密接な関係性も明らかにされました。著者の大学院時代からの韓国での研究活動を含む様々な経験による実証的根拠に基づいて書かれた同書の内容と、それと結びついた時代相の紹介が展開されて、聞き手にとって大変示唆に富む著書紹介となりました。

 質疑応答では、これまでも多様な立場から語られてきた本事件を見る上での観点をめぐる問題や、韓国の政権による犠牲者の名誉回復と真相究明政策が実際の在日朝鮮人社会にどのような影響を与え、彼らの側でどのような認識が生まれたのかなどについて、学術的にも興味深い意見交換がなされ、とても有意義な会となりました。

文先生photo1
自著を語る文京洙教授

文先生photo2
当日の会場の様子

立命館アジア・日本研究所では、AJIブッククラブのもと、「著者は語る」シリーズだけでなく、AJIブックローンチなどを通して学術書の紹介・報告を行っています。過去のAJIブッククラブ開催イベントはこちら