NEWS

2023.02.17

【レポート】立命館大学・オーストラリア国立大学公開講演会を開催しました!: “Indonesia after Widodo: Contested Legacies and Futures” (Prof. Marcus Mietzner, 2023年2月2日)

 2023年2月2日、立命館大学にて、マルクス・ミーツナー(Marcus Mietzner)准教授(オーストラリア国立大学)が、立命館大学アジア・日本研究所と国際地域研究所の共催で公開講演会を行いました。今回の講演では、3期目の大統領就任を目指すことを見送る可能性が高いインドネシアのジョコ・ウィドド大統領がこれまでに遺したものや、2024年に彼が大統領を退任した後のインドネシアの将来像などについて語られました。ミーツナー教授は、2014年に政権を握ったウィドド大統領が当初掲げた主要な公約にもかかわらず、そのインドネシアへの影響力は限定的だったことを強調しました。この点において、前任のスシロ・バンバン・ユドヨノ大統領政権のもとでのインドネシアと比べると、ウィドド大統領政権のもとでのインドネシアは変化よりも継続が特徴であることが分かります。ユドヨノ政権時代と同様に、ウィドド政権下でもインドネシア経済は着実に成長しています。しかし、ウィドド大統領は就任当初、国内政治で大規模な連立を構築するという前任者の慣行から脱却するという公約を掲げましたが、結局は、それを完全に受け入れるかたちになりました。その結果として、インドネシアの民主主義は、その弾力性(resilience)を維持しているものの、その質は継続的に低下したことが指摘されました。なぜなら、連立の形成は妥協を招き、現状の変更を妨げるからです。くわえて、講演会では、インドネシアの軍事費が少ないことを主な理由として、国際政治にほとんど影響を与えないミドルパワーにとどまっている点についても話題が及びました。インドネシアは、米中の大国間競争への加担を回避する戦略をとり続けてきました。ミーツナー教授は、国内の政治体制が現状維持からの脱却を抑止してることから、2024年の政権交代後もこうした傾向は続く可能性が高いことを指摘しました。最後に、現状維持から変化を生み出すためには思い切ってリスクを背負う必要があるが、現在の後継者候補の中に適任者を見つけるのは難しいという見通しが語られました。今回の講演会は、現代のインドネシア政治を包括的かつ明確に理解することのできる大変有意義なものとなりました。

Written by Daichi Morishige
(PhD student at Ritsumeikan University)

ANU報告img1
講演を行うミーツナー教授

ANU報告img2
ミーツナー教授を囲んで記念撮影(左から:足立研幾授、ミーツナー教授、本名純教授、小杉泰教授)