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2023.06.29
【レポート】ブックローンチ・国際シンポジウム「CAPTURE JAPAN」を開催しました!(共催:研究所重点プログラム「東アジアの文化芸術研究」ユニット[代表 竹中悠美教授])
2023年5月27日、立命館大学にて、竹中悠美教授(立命館大学先端総合学術研究科)が立命館大学アジア・日本研究所と先端総合学術研究科との共催でブックローンチ・国際シンポジウムを開催しました。2022年12月にイギリスのBloomsburyから刊行されたMarco Bohr(ed.), Capture Japan: Visual Culture and the Global Imagination from 1952 to the Presentは、グローバルな想像力の中で日本のイメージが構築される際にアート・映画・マンガ・ゲーム等の視覚文化が果たした役割を文化的、政治的、歴史的文脈から探求することを目的とし、「記号」「神話」「廃墟」「変容」の4パート、全12章で構成されています。
今回は6名の筆者が各々の研究背景と問題意識を共有し、本書が提起する問題について会場の参加者とともに議論するシンポジウムとして、衣笠キャンパスの創思館カンファレンスルームに集いました(うち2名はイギリスとカナダからオンライン参加)。
冒頭に筆者の一人である竹中悠美教授が本企画の主旨を説明した後、本書の編者であるマルコ・ボーア准教授(ノッティンガム・トレント大学)が基調講演を行い、国際的な美術市場で成功を収めている現代美術作家、杉本博司の作品における「Japanese Style」はアジア太平洋地域における日米の地政学的、経済的、文化的関係の変容の中で戦略的に形成されたものであることを論じました。
萩原弘子教授(大阪府立大学)の発表では、日本の太平洋戦争観を形成してきた「ヒロシマ写真」の系譜とは異なる写真家、石内都の「ひろしま」シリーズについての章で読者に伝えたかったこととして、作家中心主義から離れ、写真が展示される場で見て考えること、そしてが今直面している問題として考えることの重要性が語られました。
竹中悠美教授は、冷戦下の1955年にグローバルな想像力の形成を目指して世界巡回を始めたアメリカの写真展「ザ・ファミリー・オブ・マン」、その東京展で起こった原爆写真撤去事件を再考するための文脈として、ポスト占領期の写真ジャーナリズムの状況に加えて、第五福竜丸事件後の原水爆禁止運動と原子力平和利用推進運動の緊張関係を示しました。
マーティン・ロート准教授(立命館大学先端総合学術研究科)は、低予算で制作された安価なゲームソフト・シリーズに含まれる戦争ゲーム「THE最後の日本兵」と「THE戦艦」の事例から、太平洋戦争を引用しながらも脱文脈化された戦争表象とその陳腐かつ曖昧なナショナリズムは歴史修正主義的な日本の捉え直しとして考えうる可能性を提起しました。
マン=タット・テレンス・レオン博士(元香港理工大学講師)の発表では、ロラン・バルトの日本文化論『表徴の帝国』と竹内好の『方法としてのアジア』の反ヨーロッパ中心主義を比較検証しつつ、ポストバブル期の閉塞した現実とインターネット世界の間で生きる中学生を描いた岩井俊二の映画「リリィ・シュシュのすべて」の分析が試みられました。
セルマ・A・プラック助教授(カナダ、ウェスタン大学)は、女性漫画家ユニットCLAMPの『ちょびっツ』における美少女型パソコンと男性主人公とのピグマリオニズム的関係をヴァーチャル・アイドルと男性ファンとの関係にも敷衍し、ポストバブル期の経済、テクノロジー、そしてジェンダー・ポリティクスの変容に関連付けて論じました。
最後はボーア准教授の司会により、登壇者全員によるパディスカッションで締めくくられました。
それぞれの発表の質疑応答とパネルディスカッションでは、「東アジアの文化芸術研究」ユニットのメンバーである先端総合学術研究科の根岸貴哉研究指導助手と先端総合学術研究科院生の藤本流位氏、後山剛毅氏、Wu Zewei氏、Noam Stein氏、高畑和輝氏が意見と質問で議論の口火を切り、レベッカ・ジェニスン名誉教授(京都精華大学)や他大学院生諸氏を含む会場参加者からの質問が続いて、閉会時間まで熱のこもった議論が交わされました。