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2023.09.04

【レポート】国際ワークショップを開催しました!:“The Evolution, Reception, and Sharing of Sinographic Culture in East Asia: Textual Analyses and Theoretical Studies”

 7月30日(日)、立命館大学アジア・日本研究所で、国際ワークショップ“The Evolution, Reception, and Sharing of Sinographic Culture in East Asia: Textual Analyses and Theoretical Studies”が開催されました。
 当日は、以下の通り8名の発表者による研究発表が行われました。

・Dr. Chao Ling (Assistant Professor, Department of Chinese and History at the City University of Hong Kong):
“Stones in the Female Hands: The Art and Reception of Han Yuesu’s 韓約素 Seal Engraving”

・Dr. Ke Tang (Associate Professor of Comparative Literature, School of English Studies, Shanghai International Studies University):
“A Confucian Apology for Poetry in Early Modern China”

・Dr. Johann Noh (Research Professor, Institute for Sinographic Literatures and Philology, Korea University):
“The Reception and Vernacularization of Zhuangzi in the Early Choson Period”

・Dr. Xu Liu (Ph.D. Candidate in Philosophy at Wuhan University and Yale University, Assistant Professor, Institute for East Asia Studies of Zhejiang Gongshang University):
“China as the Body: Ricci’s Cultural Translation for Hylomorphism”

・Dr.Yat Hong Lee (Instructor, Chinese Language Centre, The Hong Kong Polytechnic University):
“Intellectual Reflections on the Rhythmic System of Wan Shu’s Cilu”

・Ms. Esme Wing Shan Chan (Ph.D. Candidate, SOAS, University of London):
“The Historical Shifts and the Changes of Political Ideology behind the Compilation of the Illustration Guide to the Three Relations (Samgang haengsilto, 三綱行實圖) ”

・Mr. Changhee Lee (Ph.D. Candidate, Sino-Korean Literature, Korea University, South Korea):
“Revisiting the First Translation of the Poetry of Du Fu (Tusionhae, 杜詩諺解): Production and Reception of Texts and Transnational Cultural Interactions in Choson Korea”

・Dr. Chunyu Jin (Senior Researcher, Ritsumeikan Asia-Japan Research Organization, Ritsumeikan University):
“Cultural Transmission in the Chinese Character Culture Circle: A Case of the Reception and Recreation of Chinese Poetic Literature in Wakokubon Works of Saito Setsudo”

 Dr.凌超の発表は、明清時代に活躍した最初の女性彫刻家である韓約素を紹介し、個人の創造性は特定の芸術ジャンルのスタイルとどのように調和するのか、芸術家が特定の「ブランド」の特徴に意識的に適合している場合、芸術家としての個人の特徴をどのように定義し、構築するのかなどの興味深い問題に焦点を当てたものでした。

発表を行うDr.凌超
発表を行うDr.凌超

 Dr.唐珂の発表は、清代康煕年間の文学評論家葉燮によって書かれた『原詩』を中心に、清代になって中国で芽生えた文芸批評の言語論が、葉燮の文章で成熟し、中国の詩論の進歩に重要な役割を果たしたことに重点を置いたものでした。会場からは、詩論における「理」と「景」との関連性に関する質問などが寄せられました。

発表を行うDr.唐珂
発表を行うDr.唐珂

 Dr.魯耀翰の発表は、朝鮮初期における『荘子』の受容と土着化に焦点を当てたものでした。朝鮮宮廷文学において、『荘子』は早くから読まれたのです。また、その他の書物の土着化の例としては『莊子鬳齋口議』、『句解南華眞經』、『南華眞經大文口訣』などが紹介されました。会場からは、荘子の和刻本や「口議」と『諺解』に関する質問などが寄せられました。

発表を行うDr.魯耀翰
発表を行うDr.魯耀翰

 劉旭氏の発表は、マテオ・リッチが、儒教や中国人の観念には、神の救いという概念が殆ど存在せず、あっても非常に薄いものであることに気づき、カトリックの文化翻訳という方法を通して、魂の概念と心身の関係を導入したことに焦点を当てたものでした。会場からは、欧米と中国の魂に対する概念の違いに関する質問などが寄せられました。

発表を行う劉旭氏
発表を行う劉旭氏

 Dr.李日康の発表は、六朝官制の改革と宋代大晟府の影響を顧みることで、万樹の『詞律』における思想的凝集性の観点から、万樹が詞の正統性に道を開き、古典風格の継承から楽府理論の独自の解釈をいかに発展させたかを論じたものでした。会場とオンラインから、万樹の『詞律』は日本の詞壇に与えた影響、日本人の填詞に関する質問などが寄せられました。

発表を行うDr.李日康
発表を行うDr.李日康

 Esme Wing Shan Chan氏の発表は、イデオロギーの伝達における「三綱」の意義と、社会的・政治的背景の変化が『三綱行実図』の出版の動機となったことと、中国の事例本が徳女の形成に与えた影響の分析に焦点を当てたものでした。会場からは、『三綱行実図』のイラストに登場する女性のイメージの変化に関する質問などが寄せられました。

発表を行う Esme Wing Shan Chan氏
発表を行う Esme Wing Shan Chan氏

 李昌煕氏の発表は、初訳の『杜詩諺解』を中心に、杜甫の訳詩テキストの生産と受容及び文化交流を論じたものでした。韓国における『杜詩諺解』の土着化は、複雑な文脈の中だけでなく、多様な要素のダイナミックな相互作用のもとで生み出されたという結論にたどり着きました。会場からは、杜甫詩の朝鮮への伝来と受容様相に関する質問などが寄せられました。

発表を行う李昌煕氏
発表を行う李昌煕氏

 Dr.靳春雨の発表は、日本における漢籍の受容と二次創作の視点から、漢学者斎藤拙堂による和刻本『高青邱詩醇』の流伝過程と刊行経緯に焦点を当てたものでした。会場からは、明人詩集和刻本の出版状況及び刊行理由に関する質問などが寄せられました。

発表を行うDr.靳春雨
発表を行うDr.靳春雨

 このように、本ワークショップでは、東アジアにおける漢字文化の形成を様々な時代、作品、特定の場所における文化活動から捉える画期的なものとなりました。また、漢籍の意味やその流通過程のなかでいかに読まれたのかということを、英語によって伝えるという困難にもかかわらず、参加者の間では非常に活発な議論が交わされる機会となりました。ご参加いただいた皆様には心からお礼申し上げます。

ワークショップの様子
ワークショップの様子