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2023.09.14

【レポート】立命館/ノースウェスタン大学共催ワークショップ “Facing the Challenges of International Coexistence in Asia Today”を開催しました!

 2023年7月13日(木)11:00~16:00、“Facing the Challenges of International Coexistence in Asia Today”と題して、立命館大学アジア・日本研究所(AJI)とノースウェスタン大学カタル校・グローバルサウス研究所(Institute for Advanced Study in the Global South)の共催で国際ワークショップを開催しました。

 全体の司会進行は、竹田敏之先生(立命館アジア・日本研究機構准教授)が務め、オープニング・スピーチとクロージング・スピーチはそれぞれ小杉泰先生(立命館大学アジア・日本研究所長)とクローヴィス・バルジェール博士(ノースウェスタン大学カタル校・グローバルサウス研究所)が務めました。

 本ワークショップには、ハサン・マフムード博士(ノースウェスタン大学カタル校・グローバルサウス研究所)の基調講演のあと、日本からの教員とポスドク研究員、そして博士課程院生の4人の報告が行われました。

 ハサン博士による“Personal Troubles, Public issues: A Sociological Approach towards Migration Studies”と題した講演では、マイグレーション研究に対するポストコロニアル思想と社会学的理論のアプローチについて概観し、それがバングラデシュのムスリムにおけるパーソナルなイッシューとパブリックなイッシューがどのように議論されてきたかが紹介されました。

講演を行うDr.ハサン・マフムード
講演を行うDr.ハサン・マフムード

 Dr. 李眞惠は、“Diasporic Mobility and Belonging: A Chronicle of Koryo Saram’s Transborder, Forced Migration, and Return Experiences”と題した報告を行いました。旧ソ連におけるコリアン・ディアスポラであるコリョ・サラムの移住と定着について歴史的な観点から概略し、最新の彼らの韓国への移住傾向を紹介すると同時に、主に彼らの法的地位の変化について論じました。会場からは、社会学的視点から移民者コミュニティがホスト社会へ「同化」できるのか、または「統合」できるのかについてコメントされ、現在、韓国におけるコリョ・サラムの集住地の現状についての質問が寄せられました。

報告を行うDr.李眞惠
報告を行うDr.李眞惠

 キム・ヴィクトリア准教授は、“Integration of Marriage Migrants in Japan: Processes, Conflicts and Crises”と題する日本における結婚移民者たちの社会統合についての報告を行いました。移民者たちが日本への移民を選択するにことに至る経緯と過程、ホスト社会で経験する社会的な葛藤と問題などが紹介され、それと同時に結婚移民者の社会統合にける課題について論じられました。会場では、人種の観点からソ連の国際結婚の女性はどのような問題を抱えているのかが質問されました。それに対して、旧ソ連諸国出身の国際結婚の女性たちは、日本文化をよく知ることが期待されているフィリピン女性より日本文化に馴染むことがあまり期待されていないし、家庭内でロシアの慣習や伝統を守ろうとしていると回答されました。

報告を行うキム・ヴィクトリア准教授
報告を行うキム・ヴィクトリア准教授

 Dr. 望月葵による“Japan’s Humanitarian Response to the Syrian Refugee Crisis: Cultural Coexistence vs Refugees’ Belongingness”と題した発表は、近年のウクライナ難民問題との比較を交えつつ、日本の対ヨルダン人道支援のあり方からシリア難民問題への日本政府のアプローチを検討するものでした。質疑応答では、日本の掲げる「人間の安全保障」や多文化共生といった概念の展開について、議論が繰り広げられました。

報告を行うDr.望月葵
報告を行うDr.望月葵

 博士課程の浅井登紀子氏による“Emplacement of Muslim Internally Displaced Persons in Sri Lanka: Focusing on Social Relations among Women”と題した発表は、スリランカにおけるムスリム国内避難民と「ホーム」の結びつきを、長期にわたるフィールド調査で得られた女性たちの語りから論じるものでした。質疑応答では、調査者の属性がどのように調査に影響するかなど、フィールド調査の手法に関する議論が盛り上がりました。

報告を行う浅井登紀子氏
報告を行う浅井登紀子氏

 クロージング・セッションにおいてバルジェール博士が指摘した通り、今回のワークショップの発表では、belonging(帰属)という語がキータームになっていました。
 本ワークショップでは、ディアスポラ・移民・難民・国内避難民の移動の経験と帰属の関係とホスト社会での移住者との共生のための多様な過程について活発なディスカッションがおこなわれ、非常に有意義な会となりました。

会場でのディスカッションの様子
会場でのディスカッションの様子

 本ワークショップの開催は、アジア・日本研究所の研究ユニットである「アジアのディアスポラ研究」ユニットとも連動しています。今後、本ワークショップが研究者らとの交流の幅を広げ、研究ネットワークを構築し、多様な方法でコラボレーションできる機会につながることを期待したいと思います。

当日の参加者の様子
当日の参加者の様子(左から:Dr.李眞惠、竹田敏之准教授、Dr. ハサン・マフムード、浅井登紀子氏、Dr.クローヴィス・バルジェール、Dr.望月葵)