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2023.09.28

【Report】 Asia-Japan Academic Lecturesを開催しました。“New Developments in Cyber Law in South Asia: From the Perspective of Thailand”

2023年5月19日 (金) 、“New Developments in Cyber Law in South Asia: From the Perspective of Thailand”と題して、Asia-Japan Academic Lecturesが開催されました。今回の講義は、立命館大学アジア・日本研究所と法学部が共催しました。

本セミナーでは、タイからDr. Lasse Schuldt (タマサート大学法学部 助教)とDr. Papawadee Tanodomdej(チュラーロンコーン大学法学部 講師)を招聘し、それぞれのご研究について講演をしていただきました。

以下は、各講義の概要です。

Dr. Lasse Schuldt: “Responses to Fake News in Southeast Asia: Anti-falsehood Legislation and Impact on Freedom of Expression”

この連続講演の第一部として、タマサート大学法学部のラッセ・シュルド准教授による “Responses to Fake News in Southeast Asia: Anti-falsehood Legislation and Impact on Freedom of Expression”と題した発表が行われました。そもそもフェイクニュースとは何かという問題提起に始まり、東南アジアにおける反フェイクニュースの立法に関して、フェイクニュースに関するマレーシア(未発効)、いずれもインターネット上の虚偽の表示・操作に関するシンガポールとタイの法律について、現地でのニュースを交えて報告がなされました。そのうえで、表現の自由あるいは言論の自由の観点から、フェイクニュースは保護される価値があるかが論じられました。

豊富な情報に基づく報告でしたが、学生の理解を重視したわかりやすいプレゼンテーションが行われたこともあり、和やかなムードの中、闊達な質疑がなされました。フェイクニュースの規制主体は国かソーシャルメディアか、発言が虚偽かどうかの判断基準は何か、虚偽の表明の立証責任はだれが負うかなど、かなり理解が深まったことを感じさせる質問がなげかけられました。

第1の問題については、Dr. Schuldtは、両者に加え個人を含めた3層の共同責任であること、第2は、刑事と民事・行政の訴訟でその内容が異なること、第3は誤解を招く情報が課題であり、そこでは表現の自由が留意されるべきであると応答しました。

講演を行うDr. Schuldt
講演を行うDr. Schuldt

Dr. Papawadee Tanodomdej: “Development of International Law on the Use of Force in the Context of Cyber Operations”

本講演シリーズの第2部では、Dr.Papawadeeがサイバー作戦の文脈における武力行使に関する国際法の進化について論じました。サイバー作戦は、特に国家の重要な国家インフラを標的とし、負傷、人命の損失、財産への大規模な損害を引き起こす可能性がある場合に、国際関係においてますます重要になってきています。情報分野における開発に関する国連政府専門家 (UN GGE) の2013年の報告書は、サイバー作戦に対する国連憲章第2条 (4) の適用について明確にしていません。サイバー作戦と武力行使を比較する方法として、国際専門家グループが“Tallinn Manual 2.0”で提案した 「規模と効果(scale and effect)」 の枠組が最も広く受け入れられています。

Dr. Papawadeは、サイバー作戦がその規模と効果において武力行使に匹敵する場合、力のひとつの形態として考えるべきことを提案しました。また、彼女は、サイバースペースにおける主権について国家間で見解が依然として異なるため、サイバー作戦の文脈で 「領土保全」 を分析することは困難な問題であると強調しました。

質疑応答では、国や組織によって定義や基準が異なることから生じる実際的な影響に関して、いくつかの疑問が提起されました。質疑応答の中では、吾郷眞一教授からの批判的な問いかけから活発な議論が行われました。

講演を行うDr. Papawadee
講演を行うDr. Papawadee

当日の会場の様子
当日の会場の様子

Dr. SchuldtとDr. Papawadeeとともに記念撮影
Dr. SchuldtとDr. Papawadeeとともに記念撮影(左から:樋爪誠教授、越智萌准教授、Dr. Papawadee、Dr. Schuldt、小杉泰教授、吾郷眞一教授)