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2024.01.24

【レポート】立命館-ANU公開講演会開催!: Ben Hillman教授より中国の農村統治への党の影響力拡大について講演いただきました。

2024年1月11日(木)、Global China Studiesシリーズの第2回セミナーとして、オーストラリア国立大学のAustralian Centre on China in the World所長であるBen Hillman教授をお招きして、近年の研究を通じて得られた予備的な調査の知見を共有し、中国の農村地方の統治におけるパワーシフトについて講演していただきました。司会は、廣野美和教授(立命館大学グローバル教養学部)が務めました。この講演会には、立命館大学国際関係学部のGSIRの学生、若手研究者、教授など、様々な方にご参加いただきました。

講演において、Hillman教授は、中国共産党(CPC)が中国の農村への影響力と権威を徐々に回復している状況についての考察を示しました。農村開発は中国共産党の最優先課題となっている。「すべての面で中程度に豊かな社会」 を構築し、中国を農業大国にするという2つの100周年目標を達成するためには不可欠だ。実際のところ、農村開発は、中国共産党にとっての最優先課題となっています。というのも、「すべての面で適度に豊かな社会」 を構築し、中国を農業大国にするという100周年目標に掲げられた2つの目標を達成するために農村開発は不可欠だからです。また、中国は輸入への依存を減らし、食料安全保障を強化するために農業の近代化を必要としているという背景もあります。講演において、Hillman教授は、「穀物の主要供給源であるウクライナでの戦争は、サプライチェーンの混乱に対する懸念を高めた一方で、貿易戦争において、中国は、米国、カナダ、オーストラリアなどの頼みにならない相手国からの食料輸入に依存することに警戒感を強めている」と指摘しました。

中国の農村政策では、多くの注目を集めた目標設定である貧困撲滅キャンペーンを含み、党の役人の参加が非常に多くなっています。同キャンペーンの実施中、推定で300万人の職員がプロジェクトの実施と監督のために農村地域に動員されました。くわえて、管轄区域の貧困を解消できなかった地方自治体の指導者には、昇進の機会が与えられません。

こうして、農村活性化のための新しいキャンペーンを通じて、党のより強い役割が農村において続いています。党書記官が農村の行政を引き継ぎ、今年だけで約50万人の州職員が農村再生プロジェクトを監督するために動員されました。こうした事実は、毛沢東時代以来はじめて、党が村の農地と集団的事業を管理するという、村の統治の抜本的な見直しに着手していることを意味します。こうした状況について、Hillman教授は、地域主導のイノベーションには高いリスクが伴い、逆効果を生むかもしれないと結論づけました。今後、こうした党の農村への介入が中国の内政にどの程度の影響を及ぼすのか注目されます。

講演の後に行われた質疑応答では、参加者の学生や研究者から、農村レベルの動員の背後にある政治的インセンティブ、中国の人口問題に関する重要な問題についての質問が投げかけられただけでなく、中国でのフィールドワークについても質問があり、活発な議論が共有されました。

写真1
講演を行うBen Hillman教授

写真2
Hillman教授との記念撮影(左:足立研幾教授。右:廣野美和教授)