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2024.03.18

【レポート】AJIブックローンチを開催しました!『イスラーム・デジタル人文学』(人文書院)

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 2024年3月14日(水)13:30~14:30、オンラインにて2月に出版された『イスラーム・デジタル人文学』(人文書院)のブックローンチを開催しました。本書は、Dr.須永恵美子(東京大学附属図書館アジア研究図書館上廣倫理財団寄付研究部門特任研究員、立命館大学立命館アジア・日本研究機構客員研究員)と熊倉和歌子慶應義塾大学教授の共編著です。

 イスラーム世界がデジタル・トランスフォーメーション(DX)によって変わりつつあり、かつ、研究者の研究環境もアラビア文字の入力ソフトやインターネット環境など、10年、20年前とは大きく進展しています。研究対象と研究環境という両輪の変化をつなぐ新たなツールとして、デジタル人文学を取り入れた9章、9コラムの事例からなる本書が編まれました。

 ブックローンチでは、はじめにDr.須永が本書の概説と本書が編まれた経緯について語られました。特に、研究環境の変化という点で影響を受けた論文として、小杉泰所長も参加された「デジタル情報化時代の研究作法」(『地域研究スペクトラム: 地域研究の発展をめざす学術情報誌』第4号: 2–18.)が取り上げられました。続いて、Dr.須永が執筆された第4章のOCR(自動文字認識)やHTR(手書き文字認識)をイスラーム研究に取り入れる意義について論じられました。

 最後に、デジタル人文学を志す方に向けた学会や雑誌、情報収集の方法などが紹介されました。質疑応答では、他の学問分野へのインパクトや、デジタル人文学全体の構図・動向などについて質問がありました。これに対し、カタルを中心とした湾岸諸国で積極的なデジタルアーカイブの公開が進んでいること、各館が運営する独自のウェブサイトではなく、アーカイブの公開のための国際基準にのっとることで、より多くの利用者の目に触れられるようになることなどが議論されました。また、資料の収集と搾取という問題については、インドネシアを中心に展開される「東南アジア・イスラーム写本データベース」プロジェクトにおける、教育活動を兼ねた収集と保存のための啓蒙活動が紹介されました。ご参加いただいた皆さまに、深謝申し上げます。