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2025.01.17

【Report】第22回AJIブックローンチを開催しました!Dr.十河和貴『帝国日本の政党政治構造:二大政党の統合構想と〈護憲三派体制〉』(吉田書店、2024年)

 2024年12月13日(金)17:00~18:00、Dr.十河和貴(立命館大学立命館アジア・日本研究機構専門研究員)初の単著『帝国日本の政党政治構造:二大政党の統合構想と〈護憲三派体制〉』(吉田書店、2024年)のブックローンチが開催されました。

 本書が扱う「帝国日本」の根底には、「天皇が最終決定者である」という変えられないタテマエが存在していました。このタテマエを要素とした明治憲法体制は、天皇とは異なる地点に実質的な権力中枢を創り出しかねない政党内閣(制)を拒絶するものだったとされます。本書は、こうした構造を前提に、それでも政党内閣が要請されたのはなぜか、そして一度は成立した政党内閣の時代がわずかな期間で崩壊に向かったのはなぜか、という古典的かつ今日的な問いに正面から挑むものです。これらの問いに答えるべく、本書は、帝国のタテマエと政党政治を両立させようとするとき、どのような制約が生じたのかに注目します。これにより、ともすれば「日本の政党政治は、第1次世界大戦後の世界的潮流と共に生まれ、その終焉によって崩壊した」とも要約可能な通説的理解に、日本という場に展開した政党政治をより内在的に、また連続的に捉え得る視座を対置するのです。とはいえ、本書は決して日本列島地域に閉じこもるものではありません。上記の制約がもたらす影響が最も顕著だった場として植民地を想定し、台湾を対象に具体的分析が試みられているのも本書の重要な特徴です。本書は「帝国日本の政党政治構造」をより内在的に、かつより広い範囲から見渡しながら、それが抱えた矛盾とそれでも垣間見えた可能性を読み解いていく野心作といえるでしょう。

 ブックローンチでは、著者からあらためて本書の論点が整理されたうえで、帝国日本における政党政治は徒花に過ぎなかったのか、本書の視点は後の時代に、あるいは学際的にいかなる広がりをもち得るのか、さらに装丁の魅力にまで話題が及び、大変充実した時間となりました。本書の成果を前提に、Dr.十河のご研究がどのように発展していくのか、大いに注目されるところです。

発表を行うDr.十河和貴
発表を行うDr.十河和貴

著者のDr.十河(左)と司会を務めたDr.吉田武弘(京都市上下水道局 琵琶湖疏水記念館 資料研究専門員)
著者のDr.十河(左)と司会を務めたDr.吉田武弘(京都市上下水道局 琵琶湖疏水記念館 資料研究専門員)

当日の参加者の様子
当日の参加者の様子