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2025.06.05

【レポート】第23回AJIブックローンチ開催!Dr.塚原真梨佳『戦艦大和の歴史社会学 軍事技術と日本の自画像』(新曜社、2025年)

2025年5月14日(水)に、第23回AJIブックローンチが開催されました。本イベントでは、Dr.塚原真梨佳(立命館大学立命館アジア・日本研究機構専門研究員)が自身初の単著『戦艦大和の歴史社会学:軍事技術と日本の自画像』(新曜社、2025年)について報告しました。

本書は、旧日本海軍による造艦技術およびその所産である戦艦を事例とし、戦前に国産戦艦建造事業が推し進められる中で、科学技術の水準に依拠した国家像を構想する「テクノ・ナショナリズム」の知的基盤がいかに準備されたか、そして敗戦後、軍国主義から平和主義へと転じたにも関わらず、戦艦大和に代表される旧軍技術がなぜ「民族の誇り」や「科学技術立国の礎」として、日本社会において見出されていったのかを軍事雑誌を中心とした諸資料の分析から検証したものです。

ブックローンチでは、本書の内容を、⑴軍事技術に依拠したテクノ・ナショナリズムの知的基盤がいかに準備されたか、⑵技術大国日本の象徴としての「大和」がいかに構築されたか、⑶「第二の敗戦」後における戦艦大和の記憶の三部に分け、造艦技術と戦艦をめぐるテクノ・ナショナリズム言説の変遷が紹介されました。そしてそれらの通史を踏まえて、戦前までに創造されたテクノ・ナショナリズムは、「相対的なテクノ・ナショナリズム」と「歴史的なテクノ・ナショナリズム」に分岐しつつ、戦後においても断絶することなく継承されていったという近現代日本社会におけるテクノ・ナショナリズム構築過程の見取り図が示されました。さらに、軍事技術開発の歴史がテクノ・ナショナリズムの拠り所として社会に記憶されていく過程で、軍事と技術が切り分けられ、後者のみが記憶されていくことで、技術による被害/加害の記憶や科学技術の戦争責任が透明化されていったという問題が提起されました。

また、質疑応答時には、司会を務めたDr.渡壁晃(京都大学大学院教育学研究科 日本学術振興会特別研究員 PD)をはじめ、フロアから、造艦技術以外の軍事技術分野との比較に関する質問や、軍事技術言説構築における旧軍技術者や自衛隊のプレゼンスがいかなるものであったか、資料との出会い方など、本書の今後の発展につながる重要な質問が寄せられ、闊達な議論となりました。

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自著について語るDr.塚原

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イベント・ポスターと司会のDr.渡壁晃(右上)

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