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2025.06.05

【レポート】アジア・日本研究グローバル・フォーラム「アジアで医を語り、言葉を創出する:越境的人文研究の地平へ」を開催しました!

2025年2月12日(水)13:00〜17:30(日本時間)、アジア・日本研究グローバル・フォーラム「アジアで医を語り、言葉を創出する:越境的人文研究の地平へ」が開催されました。本フォーラムでは、アジアにおける医学史や言語文化を専門とする6名の研究者をお招きし、医学を通じたアジアの知と言葉の創出について議論が行われました。日本語・英語・中国語の3言語による同時通訳を備え、国際的かつ充実した研究交流が実現しました。
冒頭では、竹田敏之先生(アジア・日本研究所副所長、教授)が開会の挨拶と趣旨説明を行い、中国をはじめとする遠方からご参加いただいた登壇者への歓迎の言葉を述べました。

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開会の挨拶を行う竹田敏之先生

・西嶋佑太郎(京都大学大学院人間・環境学研究科 博士後期課程)「蘭学者の訳語作成方法」
 西嶋氏は、蘭学者がどのように訳語を創出してきたのかに注目し、訳語の背景や作成方法の変遷について報告しました。

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報告を行う西嶋佑太郎氏

・畑有紀(新潟大学日本酒学センター 特任助教/開催時;現名城大学 外国語学部 准教授)「和歌形式の食物本草書に見る江戸時代の食養生知識」
 畑先生は、江戸時代の人々の食と食養生に関する知の源流としての『食物本草書』の成立と変容、特に米穀類をテーマにした和歌の変遷についてご報告くださいました。

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報告を行う畑有紀先生

・于業礼(上海中医薬大学 准教授)「清代中後期における“儒医”の意味の変遷」
 于先生は、「儒医」という語の意味の変化とそれを取り巻く社会文化的背景、特に中・後期清代における儒医の汚名化の現象の原因について報告しました。

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報告を行う于業礼先生

・石舒尹(上海中医薬大学 ポスドク研究員)「『金光明経』の医学用語研究:中国語訳とサンスクリット原本の比較」
 石氏は、『金光明経』の中国語訳とサンスクリット原典との比較を通して、アーユルヴェーダ医学と中国医学における病因観などの違いについて報告しました。

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報告を行う石舒尹氏

・成高雅(京都大学大学院人間・環境学研究科 人文学連携研究者/開催時)「江戸後期における医学考証学派とその目録学的学術実践」
 成氏は、江戸後期の医学考証学派である多紀家に注目し、彼らが重視した目録学的態度、実証的研究手法、そしてその学術的成果について報告しました。

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報告を行う成高雅氏

・姜姍(北京協和医学院 講師)「浮世絵におけるお灸の隠喩(17~19世紀)」
 姜先生は、17~19世紀の浮世絵に描かれたお灸の意味とその文化・社会的背景についてご報告くださいました。

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報告を行う姜姍先生

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会場の様子

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質疑応答の様子

閉会の辞は、今回の司会を務めた向静静先生(立命館アジア・日本研究機構 准教授)が担当され、「本フォーラムは、発表者と聴衆の間のみならず、発表者同士の間でも活発な交流が生まれ、アジアの医学史や医学に関わる言葉について知的に充実した議論を行うことができた」と総括されました。

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司会進行を行う向静静先生

フォーラムには、中国やアメリカをはじめとする世界各地から100名以上がオンラインで参加し、会場参加者とあわせて多くの質問が寄せられ、活発な議論が展開されました。 本グローバル・フォーラムは、アジア・日本研究所の先生方およびスタッフによる準備と運営に支えられ、盛会のうちに幕を閉じました。

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発表者と会場参加者で記念撮影