研究プロジェクト紹介

共生領域

創造的キャリアの未来を形成する:アジアにおけるCCI人材の比較分析と大学の役割

プロジェクトリーダー
国際関係学部

大山 真司教授

プロジェクト紹介

 近年、アジアにおいて文化創造産業(Cultural and Creative Industries, CCI)が急成長しています。その背景には、21世紀の急速なデジタル化とグローバル化にアジア諸国の文化経済が適応しようとするなかで、映画、テレビ、アニメ、ビデオゲーム、出版、デザイン、ファッション、広告・マーケティングなどへの関心が高まったことが挙げられます。日本の「クール・ジャパン」も、こうした潮流のなかで、日本の文化コンテンツを世界へと広げようとする政策です。しかし、アジアにおけるCCIに関する研究動向に目を向けると、CCIに関わる労働者の実態研究に加えて、人材育成に対してアジア各国の産業界、政府、また、大学が、いかなるアプローチを取っているのかについても詳細な研究がなされてこなかったという問題が浮かび上がります。たとえば、欧米諸国や中国、韓国では、CCIに関連する専門性を身に着けるためのプログラムが大学院にまで組み込まれていますが、日本ではそうした取り組みに関する知見は蓄積されておらず、いうまでもなくそうした制度の整備も遅れています。

 この研究プロジェクトは、こうした背景のなかで、CCIで働く労働者のメディア産業研究に加えて人材育成のための制度やキャリア形成の道筋がアジア各国でどのように進められているのかを比較し、最終的には、日本のメディア労働者に関する分析に加えて、今後のCCIの発展にとって重要となる専門的な人材の育成のための教育を含む制度のあり方を明らかにしていきます。くわえて、こうした比較を通じて、CCIのグローバルな拡大のなかで、競争力を持つだけでなく、より公正かつ多様なCCI人材育成のあり方を示すことができると考えています。

 SDGsの課題解決との関わりについて言えば、この研究プロジェクトは、急成長するクリエイティブ産業における公正かつ多様な働き方の促進に結びつくという意味で、「8. 働きがいも経済成長も」や「9. 産業と技術革新の基盤をつくろう」と密接に関わります。また、CCIの人材育成に焦点を当てるという点で、「4. 質の高い教育をみんなに」という目標実現にも貢献できるでしょう。

 また、若手の次世代研究者の育成に関して、本プロジェクトは、専門研究員や大学院生の研究能力の発展に力を注いでいます。とりわけ、本研究は、CCIに関して、領域横断的なアプローチを取っており、若手研究者たちは、経験豊富な学者と関わったり、また、イベントの企画・運営を担ったりするなかで、研究に必要となるリーダーシップや研究イベントの運営能力を得ることができるだけでなく、国際水準の研究発信力を身につけていくことができるでしょう。

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