研究プロジェクト紹介
共生領域
少子化が進むアジア諸国における科学的根拠に基づく女性の育児・就労支援システムの構築
プロジェクトリーダー
総合心理学部
矢藤 優子教授
プロジェクト紹介
この研究プロジェクトは、過去にアジア・日本研究推進プログラムやR-GIROなどを通じて行ってきた、日本・中国・韓国における育児・就労支援の比較に関する量的・質的な研究プロジェクトを、インドネシア・タイ・マレーシア・シンガポールなどの東南アジア諸国に視点を広げて発展させるものです。日中韓が共通して出生率低下の問題に直面していることはよく知られています。その背景には、女性の社会進出に伴って、仕事と結婚・育児の両立が難しくなり、非婚化・晩婚化が進んでいることが挙げられます。また、東アジア各国では、家事や育児は女性が担うべきであるという考えが根強く存在し、そのことが母親の産後の職場復帰や育児の両立を難しくています。こうした文化的背景のほかにも政策の育児への影響や、母親個人の育児経験や気質などの諸要素が存在し、それらが絡まり合って育児の環境が形づくられます。
また、タイやシンガポールなどの東南アジア諸国でも少子化が加速しています。さらに、コロナ禍は、子育てにも大きな影響を与えました。例えば、外出自粛、小中高の休校措置、在宅勤務や感染への不安などによるストレスに加えて家族で過ごす時間が長くなることで,夫から妻へのドメスティック・バイオレンスや児童虐待リスクの深刻化が問題となったことはアジアに限らず世界的にみられました。東南アジアでは、感染対策の影響による婚姻数の減少によって出生率の低下が進んだという研究結果もあります。今回の研究プロジェクトでは、ポスト・コロナ時代の育児環境の改善のために必要となる支援体制のあり方について、これまでの東アジア地域の育児・就労支援に関する研究の知見を活用して、東南アジア諸国における育児環境がいかなるものなのかを明らかにしていきます。こうした研究は、発達心理学とその周辺領域においてあまり知られてこなかった東南アジア圏の家族観や子育て事情を明らかにするという点で意義があるでしょう。こうした比較研究を通じて、働く女性に必要な育児支援を提示することを目指します。
SDGsに関していえば、この研究プロジェクトは、「3.すべての人に健康と福祉を」、「5. ジェンダー平等を実現しよう」、「8.働きがいも経済成長も」などの目標の実現にとって不可欠な知見を提供するものです。
さらに、本研究は、若手研究者育成に関しても、積極的に女性研究者を任用し、研究業績だけでなく、教育経験や共同研究を運営する能力を育てることに力を入れています。この研究プロジェクトでの培った経験やネットワークを通じて、大学における研究職だけでなく、企業の研究機関も選択肢として、キャリアの可能性を広げていけるように支援しています。また、大学院生もこのプロジェクトの遂行には積極的に関わっており、それを通じて研究力をつねに発展していけるように支援しています。
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