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2022.05.13

鳥山純子先生の単著が刊行されました。

『「私らしさ」の民族誌―現代エジプトの女性、格差、欲望』

鳥山純子 「私らしさ」の民族誌

 アジア・日本研究所のメンバーで、アジア・日本研究推進プログラムのリーダーをなさってきた鳥山純子先生(国際関係学部准教授)の新著が刊行されました。

 本書は、ステレオタイプで語られがちな中東の女性について、外型から押し付けられる枠組みではなく、彼女たちが内在するロジックや実際の日々の姿から理解しようとした「人の民族誌」です。舞台となった21世紀初頭のカイロには、イスラーム教や帝国主義言説だけでなく、国家が作り出すエジプト像やグローバル資本主義など多様な論理がそれぞれの権力関係を構成しつつせめぎ合う状況がありました。人々の生活は、複数の論理が重層的に重なり、矛盾し、衝突するような空間の中に営まれています。そこに暮らす人々は、自ら多様な言説を積極的に利用しつつも、それらに翻弄され、生き方を規定されながら生きているのです

 本書で著者は、女性たちの特定の一部分を学問的目的のために切り取るのではなく、共感のもとに一人一人の人間として描き出すことを、しなやかに試みています。彼女たち自身が自分たち「らしさ」として語った人物像を起点に、当時のエジプトの社会状況、とりわけ女性たちが晒され、いやがおうでも影響される社会的圧力や、その中で発揮される女性たちのバイタリティについての考察を、是非、お読み下さい。
 本書の中心人物は三人のエジプト人女性と筆者である「私」です。この4人をエジプトを構成するリアルな存在として、それぞれの生き方を感じることのできる力作です

本書は立命館大学の出版助成を受けました。

本書のブックローンチが開催されます(2022年5月20日)。詳細は、こちら