NEWS
2026.02.26
【レポート】AJI グローバル・シンポジウム 2026を開催しました!今年のテーマはグローバル 化するアニメ
2026年2月11日(水)、AJIグローバル・シンポジウム2026「立命館発 これからの価値共創と私たちの羅針盤:アジア・日本研究からの発信」を開催しました。今回は100名を超える方にご参加いただき、たいへん盛況なイベントとなりました。ご参加いただいた方々に、改めて厚く感謝申し上げます。
AJIグローバル・シンポジウム2026ポスター
竹田敏之教授(立命館アジア・日本研究機構副所長)が総合司会を務めました。開会に先立って仲谷善雄総長(学校法人立命館総長/立命館アジア・日本研究機構長)より開会挨拶をしていただき、アジア・日本研究所(AJI)が掲げてきた「アジア・日本研究のゲートウェイ」としての役割を再度強調していただきました。
開会挨拶を行う仲谷善雄総長
司会の竹田敏之先生
まず、イサム・ブカーリ氏(マンガプロダクションズCEO/マンガアラビア代表兼編集長)をお招きし、「若者の夢を開くマンガとアニメの未来:サウディアラビアのコンテンツ産業と日本との文化交流」と題して、基調講演をしていただきました。ブカーリ氏は日本での留学経験があり、また、現在ではサウディアラビアにおけるアニメ・コンテンツ産業を牽引する役割を担っています。ブカーリ氏は、自身の日本留学を志した経緯およびサウディアラビアと日本の間の文化的な交流関係から説き起こしました。ブカーリ氏自身も幼少期から日本の漫画やアニメに触れながら育ちました。そうした経験を背景としながら、今日のサウディアラビアにおいていかに漫画・アニメ文化が広がりつつあるかについて、マンガトレーニング教室、漫画雑誌の制作・配布、コンペティションなどを例に挙げながら具体的にお話いただきました。サウディアラビアではこれらの活動を通して、漫画やアニメへの関心が特に若者の間で着実に広がっています。その上で、ブカーリ氏はグローバルなアニメ産業の中でサウディアラビアが巨大な市場へと成長しつつあることを強調しました。
基調講演を行うイサム・ブカーリ氏
基調講演後の質疑応答では、サウディアラビアと日本の間の宗教的・言語的な違いに由来して、受容可能なコンテンツにどのような違いが生まれるのかという点が主に議論が及びました。この点について、ブカーリ氏はイスラームとそれ以外という差異だけでなく、様々な宗教的・文化的な違いと多様性に配慮しながらコンテンツ制作・配信を行う必要があることを強調しました。
第二部では「アニメのグローバル化3.0:国境をこえる制作ネットワークと世界での多様な受容」と題してパネル・ディスカッションを行いました。チェアは大山真司教授(立命館大学国際関係学部)が務めました。
まず、大山先生から一国で完結せず、国際的ネットワークの中で制作が行われる今日の文化創造産業の実体を捉える必要性があるという方向性が示されました。
チェアを務めた大山真司先生
一人目に登壇したスティービー・スアン准教授(法政大学グローバル教養学部)は、「アニメのグローバル性:国境を超える文化生産」と題して発表を行いました。発表では、日本に固有のアニメ文化という見方がこれまで支配的であり、地域研究もその見方を採用してきたという問題点が指摘されました。しかし、日本におけるアニメ・コンテンツは盛んであるにもかかわらず、その制作過程はもはや一国に止まるものではありません。むしろ、アニメの特定のカットは、東南アジア諸国において制作されており、そうしたネットワークに基づいた最終的な産物として作品が生み出されます。したがって、「アニメのグローバル化」と言うとき、日本から海外へのコンテンツの発信という視点を超えて、グローバルな制作ネットワークの中の日本のアニメという視点が求められます。
発表を行うスティービー・スアン先生
次に登壇した須川亜紀子教授(横浜国立大学都市イノベーション研究院)は、「北欧諸国におけるアニメ関連コンテンツの受容:若者たちによるアニメのポリローカリゼーション」と題して発表を行いました。須川先生は、「2.5次元文化」をキーワードとしてフィールド研究をしてきました。「2.5次元」とは、コンテンツを受容するファンが形成する「2次元」(アニメ)と「3次元」(現実)の間の空間ないし現象を指します。例えば、アニメ・キャラクターに扮したコスプレをするファンの実践が形づくるのが「2.5次元」に当たります。このキーワードにもとで須川先生は、北欧諸国における若者、とくに女性へのインタービュー調査に基づいて、アニメの受容のあり方についての研究を紹介しました。調査からは、LGBTQとしてのアイデンティティと国内社会における支配的なジェンダー観とのギャップ、過去に被ったいじめの経験などの諸個人が抱える問題を抱えながら、ファンがアニメを受容することを通して独自の文化として受け入れられていくことが示されました。ここから、日本のアニメ・コンテンツが単に他国で需要されるという図式を超えた多様なローカル化の文脈が浮かび上がります。加えて、ジェンダー平等先進国としての北欧諸国という一般的なイメージを異なる側面から見返すことができます。
発表を行う須川亜紀子先生
最後に登壇した三原龍太郎准教授(文化人類学者・慶應義塾大学経済学部)は「日本アニメのアジア国際共同製作の可能性:中国・インド・サウディアラビアの現場から」と題する発表を行いました。三原先生の発表では、一人目の発表者であるのスアン先生が示したアニメ制作の国際的ネットワークという視点を、人類学者としてどのような形で国際的な共同作業が行われているのかということに焦点が当てられました。三原先生のポイントは、アニメ制作の国際化が進む中で、もはや日本がアニメ制作のネットワークの中で中心ではなく、このネットワークを通じてアジア諸国で独自のアニメ・コンテンツを生み出す体制が整いつつあるということです。例えば、パキスタンで制作された『The Glass Worker』はリバース・エンジニアリング的なアニメ制作の技法によって製作された独自コンテンツです。同作品はジブリ・アニメ風のキャラクターデザインを採用していますが、日本とは全く関係のない文脈において制作されたという点で注目に値します。というのも、同作品はいわゆる「サブスク」を通じて世界で広く知られていますが、日本では当初公開されずクラウドファンディングを通じて公開に漕ぎつけたという経緯があります。このように、国際的なアニメ制作の状況は以前とは異なる様相を呈しています。三原先生は、このようなアニメ制作の国際的潮流をかつて日本の近代化の指針であった「和魂洋才」になぞらえて「亜魂和才」という概念を提示しました。「亜魂和才」は、日本が牽引してきたアニメ表現が、現在ではローカルな文脈に則したかたちで多様な形で独自に展開している状況を指し示すものです。いまや、各国が独自コンテンツとして様々なアニメ作品を生み出しているだけでなく、ローカルなアニメ風のキャラクターのイメージが街の看板などで目にするようになるなど、着実に日常化しつつあります。
発表を行う三原龍太郎先生
各報告は、今日のアニメの制作や受容のあり方を理解するために、その国際的かつローカルな文脈に注目することの重要性を可視化させるものでした。各パネルの報告後、パネル・ディスカッションが行われました。論点は、アニメの国際的状況のなかで「日本的」なアニメとは何か、今日のアニメの配信を担うプラットフォームの役割、国際的なヒット作と日本国内でのヒット作の間で生まれているギャップなどに及びました。
過去の「AJIグローバル・シンポジウム」のレポートについては以下のリンクからご覧になれます:https://www.ritsumei.ac.jp/research/aji/global/archive/