大学への通学には電車・バスを利用したり、バイク・自転車、徒歩で通学するなど様々である。
今春、立命館大学衣笠キャンパスの最寄りの嵐電に立命館大学の名称が入った駅が誕生した。
学生の通学に使われた衣笠キャンパスの最寄りの駅やバス停、朱雀キャンパスのバス停の今昔について紹介する。
1. 嵐電「等持院・立命館大学衣笠キャンパス前」駅
【等持院・立命館大学衣笠キャンパス前駅】
2020(令和2)年3月20日、嵐電の等持院駅が「等持院・立命館大学衣笠キャンパス前」駅となった。
先立つ3月14日の京都新聞は、20日に等持院駅を文字数・音読数国内最長の駅名とする記事を掲載した。文字数では3駅が17字で最長タイであるが、音読数では単独で最長とのことである。
京福電気鉄道株式会社と、学校法人立命館との連携・協力協定締結に伴う新たな駅名となった。
この駅はキャンパスまで徒歩6分、約450m。北野線の白梅町駅から西に一つ目の駅であるから、現在の通学には西方の帷子ノ辻方面からの利用の方が多いであろう。
衣笠キャンパスは1939(昭和14)年に開設した。もっとも衣笠キャンパスという名称は、1965(昭和40)年前後からで、それ以前は等持院学舎といった。
当時から最寄り駅は等持院駅であったが、東側には北野白梅町駅がまだなく、一つ東側は小松原駅で、さらに北野天満宮前の北野駅まで走っていた。市街地から登校する学生は北野駅で嵐電に乗り換え、等持院駅から学校に向かった。
1942(昭和17)年4月に専門学部工学科に入学したN君は、市内から市電を乗り継いで、嵐電北野駅から学校に通学している(「戦時下、専門学部工学科N君の学生生活」立命館史資料センターHP https://www.ritsumei.ac.jp/archives/column/article.html/?id=177)。
下の地図は『立命館日満高等工科学校概況(昭和16年度)』に掲載されたものである。
白梅町駅は1943(昭和18)年10月に開業、それとともに小松原駅が休止、昭和20年6月に廃止となった。1958(昭和33)年7月には北野駅から白梅町駅間が廃止、白梅町駅は北野白梅町駅となった。
西大路通には市電の電停「平野神社前」が見える。西大路線は1935(昭和10)年12月に千本北大路―わら天神間が、1936(昭和11)年11月にわら天神―北野白梅町間が開通、更に1943(昭和18)年10月に北野白梅町から西ノ京円町まで延伸したことにより西大路九条まで開通した。北大路方面や西大路の南方面からの等持院学舎への通学は、平野神社前を利用したのである。市電は1978(昭和53)年に全廃されたが、この時は既に平野神社前の電停は無かった。
なお、そもそも市電は日本最古の路面電車で、1895(明治28)年に民営の京都電気鉄道により開業、その後1918(大正7)年に全面市営化した。路線は順次拡張していったものである。
【昭和16年の等持院学舎案内図】
【昔の等持院駅 日満高等工科学校 昭和16年のアルバムより】
2. 市バス・JRバス「 立命館大学前 」「 立命館大学前 (キャンパス内) 」
衣笠キャンパス正門北側に、「立命館大学前」のバス停がある。市バス、JRバスのバス停となっている。
このバス停の名称が「立命館大学前」となったのは1986(昭和61)年3月31日。それ以前は「衣笠」であった。広い地域名を表す衣笠より、「立命館大学前」に、と地元の住民や市会議員の賛同を得て改称された。
このバス停(市バス)は大学の構内にある衣笠操車場から発着する。それ以外のバスもあるが。衣笠操車場ができたのは1962(昭和37)年。まだ経済学部や経営学部が広小路から移転してくる以前で、理工学部のみの時代である。バスの操車場が学校のなかにありそこから出入りするのは全国的にも珍しいのではないだろうか。
そもそも衣笠操車場は、1962(昭和37)年に京都市交通局から、立命館大学の移転した馬場の跡地を借用したいとの申し入れがあり、貸与したものである。
この結果、市バスの系統改正があり、12番系統や15番系統が衣笠操車場を起終点とすることになった。また、翌1963(昭和38)年には衣笠以西宇多野方面に通称観光道路(現在の愛称きぬかけの路)が開通した。
バス停の名称を変えただけではない。1974(昭和49)年以降、本学の公費助成連絡協議会は市バスの増便の運動にも取り組み、京都市に要請し、学生の交通の便を図ってきた。1978(昭和53)年に市電が廃止されると、市バスの増便に一層力を注いだ。またバス停名称が変わった1986(昭和61)年の10月からは西大路通に快速バスが走ることになった。
そして現在、正門前にあるバス停に加え、構内にもバス停を設置している。
市バスは、快速ラピッド205が京都駅と結んでおり、JRバスも同じバス停から快速立命ライナーが京都駅と結んでいる。
【写真:立命館大学前、立命館大学前(キャンパス内)】
3. 市バス・JRバス「千本三条・朱雀立命館前」
朱雀キャンパスの開設は2006(平成18)年9月であった。最寄り駅にJR二条駅があるが、本稿ではバス停について紹介する。最寄りのバス停は市バス、JRバスとも「千本三条」であったが、開設を迎えるにあたり、バス停の名称変更を京都市交通局及び西日本ジェイアールバスに要請した。
京都市は、要請にあたって地域の理解を得るようにとの条件であったので、地域を回りこれまでの地域名も生かしたバス停に名称変更することを理解していただいた。
当初は「千本三条・立命館朱雀キャンパス前」とする案であったが、文字数に制限があり「千本三条・朱雀立命館前」とすることになった。もう一点、表記だけでなくバスでアナウンスする際の朱雀の読み方、アクセントをどうするかということになった。3音を平坦に読む スザク とするか、第1音節にアクセントを置く スザク とするかであったが、京都市民になじまれている平坦に読むスザクとした。名称の変更時期について、京都市は年度の途中の9月とすることはできないので、3月のダイヤ改正に合わせてほしいとのことから、開設前の2006(平成18)年3月18日から実施した。JRバスも合わせていただいた。JRバスはそれまで一条通り経由のバスが多かったが、衣笠経由のバスを増便することとなった。
【写真:千本三条・朱雀立命館前】