1970年代に本学に在学されていた校友の方から、『末川博随想全集』の宣伝パンフレットをいただきました。
表紙には「末川博随想全集 全九巻」「内容見本」「予約募集」とあり、B5判、巻頭1頁、内容11頁、巻末2頁からなる小冊子で、ハガキ大の「予約申込書」が綴り込まれており、『栗田出版会 刊行物ご案内 1972』というA5判4頁のパンフレットが挟み込まれていました。
内容を拝見すると、当時の知識人による「推薦のことば」が14篇掲載されており、ほかに内容見本など出版物の内容を紹介する記事が掲載されています。
ところで、文学部のある大学の図書館などでは「同時代評を探している」という相談を受けることがあります。「同時代評」とは、その文学作品の著者と同じ時代背景を共有している人による、その著者や著作の評価です。「同時代評」は、その著者や著作の時代性や進取性を読み取ったり、あるいはその時代そのものを再評価したりといったことに通じる資料です。この宣伝パンフレットはまさに末川博の同時代評ですので、それぞれ短文とはいえ、1970年代初めという時代の中での末川博を研究して行くうえでも、あるいは1970年代初めという時代を研究するうえでも、一級の資料ということがいえます。
末川博は本学の名誉総長で、『末川博随想全集』は末川博の学問的論文以外の随想を整理、集大成したものです。弊所のほか、本学図書館や国立国会図書館にも所蔵されており、末川博を研究する際の必読書といっても過言ではない資料となっています。しかし、今回いただいた宣伝パンフレットについては、これらの図書館の所蔵図書目録データベースには見当たらず、入手困難な資料であることは間違いありません。
たいへん貴重な資料をご提供いただき、誠にありがとうございました。
2023年3月23日 山田和幸
『末川博随想全集 全九巻 内容見本』目次
著者の言葉 | 末川博 | 巻頭 |
推薦のことば | ||
日本近現代史についての貴重な証言 | 家永三郎 | 1 |
ほんとうのジャーナリスト | 大内兵衛 | 1 |
時代のちがいをこえた共通遺産 | 久野収 | 2 |
温容の大儒 | 桑原武夫 | 2 |
真実を求めてやまぬ人 | 白石凡 | 3 |
大衆への影響力 | 住谷悦治 | 3 |
一人の自由主義者の軌跡 | 奈良本辰也 | 4 |
末川博随想全集 | 野間宏 | 4 |
考える人間の心の糧 | 藤田信勝 | 5 |
リベラルな末川先生 | 細野武男 | 5 |
末川博先生 | 松田道雄 | 6 |
七〇年代への指針 | 安田武 | 6 |
学問、思想、行動が渾然と統一 | 吉野源三郎 | 7 |
末川君の随想全集を若い学徒の伴侶に奨める | 我妻栄 | 7 |
全九巻内容 | 8 | |
末川博略年表 | 11 | |
組方見本 | 巻末 | |
刊行者のことば 株式会社栗田出版会 社長 栗田確也 | 巻末 |