はじめに
2023年は藤井聡太プロの八冠達成によって、将棋界が今まで以上に注目され、幼い年齢の子どもたちにも取り組める競技として、一躍大きなブームとなりました。
そこで、今回は立命館学園の付属校4校における将棋の歴史と現在を取り上げてみました。
1.立命館中学校・高等学校
(1)創部
1954(昭和29)年版の中学校と高等学校定時制(全日制には記載なし)入学案内のクラブ活動に初めて将棋部の名をみることができることから、創部は前年の1953(昭和28)年頃かと考えられます。戦後復興の時代、中高校生たちにとって将棋が貴重な娯楽兼競技であっただろうことでしょう。当時のクラブと同好会との定義づけは資料が残されていないため区別を明確にすることはできません。
中学校ではその後の活動記録が見られませんが、1967(昭和42)年に同好会として復活し活動を続け、1973(昭和48)年から正式のクラブとして昇格しています。
高等学校定時制将棋部は、1966(昭和41)年の廃校と共になくなりました。これ以降では、高等学校全日制で1973(昭和48)年から同好会として活動を始め、1979(昭和54)年正式クラブへと昇格し、その後は中高合同の将棋部として活動してきました。
(2)全国高等学校将棋選手権大会への道
高等学校の同好会であった1977(昭和52)年、団体で京都府第1位となって(全国大会の団体代表は都道府県から1校で、団体戦出場者は個人戦に出場できないという規定)初めて第13回全国高等学校将棋選手権大会(以下、全国大会)の男子団体の部に出場し、翌1978(昭和53)年の第14回大会では男子団体で第3位に入賞しています。その後も全国大会男子団体の部では1981年(第17回大会)、1983年(第19回大会)と出場し、1998年(第34回大会)での全国ベスト8を最後に全国大会団体出場は途絶えました。
写真1 立命館高等学校男子団体第3位
(3)その後
1988(昭和63)年に男女共学と深草移転となってからも活動を続け、少数ながらも女子の入部者もいました。しかし、部員数が年々減少していくこととなり、2004(平成16)年に中高共に最後の部員を送り出した後、一年間の暫定的期間を経て2006(平成18)年3月で将棋部は廃部となりました。
高校にはそれ以前から特別対応クラブという制度が認められていて、クラブがなくても個人で文化・運動面で励む生徒の活動を支えていました。この制度によって、2021(令和3)年に個人で将棋に取り組む三村陽菜さんが高校へ入学し、その年の第57回全国大会女子個人の部で5位入賞と活躍し、今年まで3年連続で全国大会に出場する活躍を続けています。これからも三村さんに続く生徒が登場することが期待されます。
2.立命館宇治中学校・高等学校
(1) 創部
前身である宇治高等学校時代では、1962(昭和57)年版の校務便覧に初めて囲碁同好会が登場以来、同好会として活動を続けてきました。1994(平成6)年に立命館宇治高等学校として開校してからしばらくは活動がありませんでしたが、2001(平成13)年からは囲碁同好会として再出発し、2003(平成15)年からは将棋・囲碁同好会として活動を続けてきました。
(2)全国高等学校将棋選手権大会への道
その後、SAプログラム(Scholar Athlete & Artist)【注1】の応援を受ける北村桂香さんが入学し、高校1年生ながら2011(平成23)年の第47回全国大会女子個人の部で優勝、翌年同大会準優勝という華々しい活躍をみせ、高校卒業後にプロの女流棋士への道を歩んでいます。
続いて、同じSAプログラムで入学した藤井奈々さんは第50回(2014年)と第51回(2015年)の全国大会女子個人の部で2年連続優勝という大偉業を達成しました。
(3)その後
このように個人として全国的に大活躍する生徒が誕生しましたが、現在、生徒のクラブ・同好会としての活動は途絶えています。輝ける先輩たちに続く後輩が登場することを願っています。
3.立命館慶祥中学校・高等学校
(1)創部
前身の札幌経済高等学校から1996(平成8)年に立命館大学慶祥高等学校が創立され、2000(平成12)年に中学校が開設されました。現在の囲碁・将棋部は、その後の2010(平成22)年に創部され、中学校と高等学校の男女部員たちが共に活動を続けています。
(2)全国高等学校将棋選手権大会への道
近年の高校生の活躍は目覚しく、2021(令和3)年の第57回全国大会女子の部に北海道代表として出場し、今年2023年の第59回大会では女子団体で準優勝となり、文化庁長官賞を受賞しています(現在の大会は全国高等学校総合文化祭の一つの部門として開催されています)。北海道勢女子の準優勝は9年ぶりの快挙でした。男子も、全国大会予選である全道高等学校将棋選手権大会の団体で第3位と健闘しています。中学生も文部科学大臣杯小・中学校将棋北海道大会の団体戦で2年連連続上位入賞と好成績を収めていて、中高で40名を超える部員たちが日々の活動に励んでいます。
写真2 立命館慶祥高等学校 全国大会女子団体準優勝
4.立命館守山中学校・高等学校
(1) 創部
立命館守山高等学校として開校された翌2007(平成19)年版の学校案内から将棋部の名前が登場しています。1,2年生の生徒たちで学校生活もクラブ活動も本格的に動き出した頃の創部で、文化クラブのなかでは開校からの早い時期での出発でした。以来、現在まで高等学校の男女部員たちで活動を続けてきています。
(2) 全国高等学校将棋選手権大会への道
近年、しっかりと実力を備えてきていて、滋賀県内でも実力校として評価を高めています。県代表として男子団体の部で、2021(令和3)年の第57回全国大会から今年まで3年連続で決勝トーナメント進出を果たしています。また、今年開催の近畿総合文化祭(近畿大会)には県代表として団体(3名)、個人(2名)が出場していて、これからの部員たちの活躍が大いに期待されています。
写真3 立命館守山中学校・高等学校将棋部 ホームページから
おわりに
現在、すべての付属校がクラブ活動として将棋に取り組んではいませんが、こうした活躍も見ていくと、いつの日か全国大会の決勝戦で立命館の付属校の生徒同士が対決する姿がみられるのではないかと期待も膨らんできます。
2023年12月6日 立命館 史資料センター 調査研究員 西田俊博
【注1】校外の活動で高いレベルで取り組み、かつ学業も高いレベルで両立しようとする生徒を応援するプログラム)