「まだ余寒の去らぬ冷え冷えとした旧講堂(兼道場)に、担任を中心として級友一同が車座になって、赤飯の折詰め弁当のはしをとったのは、卒業式の終った直後の昼頃であった。
その折詰めの表紙に祝卒業・立命館清和会とあった。
禁衛隊(注)の芋がゆと、祝祭日の紅白の大きな立命のまんじゅうは、顔なじみであった私達に折詰めとは異例のことで大変印象深く、記憶に強く残っている。[中略] 昭和十三年の三月のことであった。」
これは、1981(昭56)年6月の『清和会報』で、1938(昭13)年に卒業された方が自身の思い出を綴られたなかの一節です。
卒業式に「紅白まんじゅう」「赤飯の折詰め」は今ではなじみの光景ですが、当時の生徒達にとって「芋がゆ」が「顔なじみであった」というのはどういうことなのでしょうか。
『立命館百年史』(通史第一巻)や史資料センター所蔵の写真を調べてみますと、当時、禁衛隊の服務(大学部隊では剣道隊、柔道隊の服務日割等の記録が残されています)が終わった後、構内に設営された給養テントでかゆの馳走を受けていたようです。
なるほど禁衛隊の服務に従事していた生徒達にとっては、「芋がゆ」は服務後ほっと一息ついて口にした、顔なじみの味だったというわけですね
服務後にかゆを食べる立命館中学校の生徒、昭和初期(写真:史資料センター所蔵資料より)
ではその「芋がゆ」は、どういうお味だったのでしょう。
残念ながら、史資料センターには、味を再現する資料は残っていませんでしたが、「こういうものだったのでは?」と再現したものがこちらです。
お粥にサツマイモの色合いが素朴ながらも鮮やかです。
作り方はいたって簡単なもので、米1:水6の配合に塩を少々入れ、30分ほど弱火で炊き、粥になったところに水にさらしておいた一口サイズのサツマイモを入れ、さらに10分ほど炊き込めば完成です。
塩加減の調整として、ごま塩を振ってもおいしく召し上がって頂けます。
できあがった芋がゆを、往時の生徒達への想いを馳せつつ、口にしましたところ、体が温まり、なおかつサツマイモの優しい甘みが、ほっこりした心持ちになるお味でした。
年代を問わず召し上がって頂ける優しいお粥です。
肌寒い日、体調の優れない日、ちょっと疲れたとき、ぜひお作りになってみて下さいませ。
注:禁衛隊 1928(昭和3)年昭和天皇即位大礼の際、御所を警備するために立命館独自に創設された軍事組織を模した組織。立命館は当時御所の東隣に学舎(広小路学舎)があった。当時の隊旗は「立命館大学国際平和ミュージアム」に展示されている。