第Ⅱ章
R2020からR2030に向けた
⽴命館⼤学の取り組みについて
1.R2020の取り組み
「Creating a Future Beyond Borders ⾃分を超える、未来をつくる」を掲げ、2010年度から開始されたR2020では、教育・研究および学⽣⽣活⽀援などの様々な分野において、2020年度の学園のあり⽅を展望した諸施策を進めました。その原点となる「⽴命館学園ビジョンR2020」は、「多様なコミュニティにおける主体的な学びの展開」、「⼈類・⾃然・社会に貢献する⽴命館らしい研究⼤学への挑戦」および「学ぶことの喜びを実感できる学園づくり」の3つの柱で構成されています。同ビジョンの具体化は、前半期(2010〜2015年度)と後半期(2016〜2020年度)とで推進してきましたが、R2020の計画期間(2011年度~2020年度)を通じて、教育と学びの質転換、グローバル化を基軸とした各学部・研究科・教学機関における展開、大学院政策および研究高度化の取り組みを推進してきました。
まず、学びの立命館モデル「教育と学びの質転換」では、学習者中心の教育、学びのコミュニティの形成、生涯にわたって主体的に学び続ける学生育成のための教育の質向上に取り組んできました。多様な学習支援、履修指導、多様なコモンズをはじめとするピア・ラーニング支援、学生の主体的な学習を促進する特色ある授業の展開などにより、この間の全学協議会でもテーマになっている、大学での学びへの転換、大学での学びの質保証を進めてきました。「学びの立命館モデル」は、R2030においても立命館大学の教学の柱として位置づけられますが、学習指導要領の改訂を受けて、今後、社会で求められる問題解決能力や論理的思考力を身に付けていくためには、能動的な探求型の学びがより一層重要性を増します。探求型の学びは、これまでも一貫教育や大学において取り組んできましたが、変化の激しい社会においては、より高いレベルの問題解決力や思考力などの探究力の育成に取り組むことが求められます。そのためには、教育DXを通じ、学生ごとのニーズや特性に応じて教学エフォートを各自の能動的な学びに最適化し、包括的な学習支援と一体のシステムへとさらなる質転換を成し遂げる必要があります。
「国際社会と地域に貢献する開かれた学園-グローバル・イニシアティブの推進」を象徴する展開としては、SGU構想を具体化し、留学生の受入れや国内学生の海外派遣に取り組んだほか、国際関係学部グローバル・スタディーズ(GS)専攻、政策科学部CRPS専攻、情報理工学部ISSEコースを設置しました。現在、英語基準コースは、4学部4コース、大学院19コースが設置されており、大学全体のグローバル化への波及効果を生み出しています。また、⽂部科学省の世界展開⼒強化事業(⽂、政策、国際、経済、経営、理⼯、情報理⼯、⽣命)をはじめ、海外大学などとの連携した取り組みとして、情報理工学部の「大連理工大学・立命館大学国際情報ソフトウェア学部」や、国際関係学部の「アメリカン大学・立命館大学国際連携学科」、文学部の「キャンパスアジア・プログラム」などは高い注目と評価を得ています。さらに、世界有数の研究大学であるオーストラリア国立大学と連携した「グローバル教養学部」の開設は、立命館大学のグローバル教育の国内外のプレゼンスを飛躍的に高め、多文化コミュニティの形成に資するグローバル大学として発展を遂げる教学創造といえます。
また、「特色あふれるグローバル研究大学」として、研究高度化に取り組みました。R-GIROや、衣笠キャンパス(以下、衣笠C)、びわこ・くさつキャンパス(以下、BKC)・大阪いばらきキャンパス(以下、OIC)の各キャンパスの特色を活かした研究拠点の創出、科研費の採択件数・補助金額の増大による基盤的研究の促進、産学連携の更なる推進に取り組んできました。特に科研費の採択件数はR2020の期間の10年間で約1.8倍に増加しています。研究高度化とも関連する大学院政策では、大学院における質的・量的拡充をめざし、課程博士100人輩出(18年度97人)という目標にも肉薄してきました。また、産業界も巻き込んだ大学院と研究機構などとの連携を強化し、次世代を担う若手研究者育成ならびに女性研究者支援と、若手研究者のキャリアパスの実現への寄与に取り組んできました。これらの取り組みは、文部科学省「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ」に採択され、中間評価では唯一の「S」評価を得るなど、着実に高度化をしてきたと言えます。
これらの新しい教学創造や研究展開が、対内的にシナジーを生み、対外的に学園のブランド価値を向上させて、未来に貢献する教育・研究機関としての学園全体の力を高めてきました。
こうしたR2020の到達点をふまえ、2022年の全学協議会の議論との関係で特に重要な論点となる、「学びの⽴命館モデル」の構築、「教育と学びの質転換」、および「⼤学院改⾰の推進」を中心に、次に具体的な内容について記載していきます。
学園ビジョンR2020期間における教学創造
年度 | 学部・研究科の教学創造 |
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2011年 | 映像研究科を設置 |
国際関係学部「グローバル・スタディーズ専攻」設置 | |
2012年 | 情報理工学研究科を設置 |
生命科学研究科を設置 | |
理工学部電気電子工学科と電子光情報工学科を統合し電気電子工学科に再編 | |
電子情報デザイン学科を電子情報工学科に名称変更 | |
機械工学科とマイクロ機械システム工学科を統合し機械工学科に再編 | |
文学部の14専攻・プログラムを再編し、8学域、18専攻を設置 | |
2013年 | 政策科学部に「Community and Regional Policy Studies専攻」を設置 |
大連理工大学と共同で「大連理工大学・立命館大学国際情報ソフトウェア学部」を開設 | |
2014年 | 薬学研究科を設置 |
文学研究科に行動文化情報学専攻を設置し、2専攻15専修の体制に再編 | |
立命館中学校・高等学校が長岡京へ移転 | |
2015年 | 大阪いばらきキャンパスを開設 |
経営学部・政策科学部が大阪いばらきキャンパスへ移転 | |
2016年 | 総合心理学部を設置 |
2017年 | 教職研究科(教職大学院)を設置 |
情報理工学部に情報理工学科を開設し、1学科7コース制に再編 | |
経済学部を経済学科1学科2専攻に再編 | |
2018年 | 食マネジメント学部を設置 |
人間科学研究科を設置 | |
理工学部の都市システム工学科と環境システム工学科を統合し環境都市工学科に再編 | |
国際関係学部にアメリカン大学・立命館大学国際連携学科を設置 | |
2019年 | グローバル教養学部を設置 |
2020年 | 薬学研究科に薬科学専攻修士課程を設置 |
食マネジメント研究科の設置認可(2021年) |
目次
- 第Ⅰ章これまでの全学協議会における議論経過と2022年度全学協議会の位置づけ
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第Ⅱ章R2020からR2030に向けた⽴命館⼤学の取り組みについて
- 1.R2020の取り組み
- (1)多様な学⽣の多様な学びを実現するための取り組み(学⽣の学びの環境整備)
- (2)⼤学院におけるより⾼度な研究やキャリア⽀援の取り組み
- (3)より豊かで快適な学習・学⽣⽣活を実現するためのキャンパス環境整備
- 2.新型コロナウイルス禍での緊急対応とその経験をふまえた将来への展望
- 3.R2030チャレンジ・デザインの具体的な取り組みにむけて
- (1)R2030チャレンジ・デザインの考え⽅
- (2)研究と教育の拡⼤的再結合の意味−⽴命館⼤学の使命達成のために−
- (3)学⽣の学びと成⻑をさらに充実したものにするために
- (4)院生に期待する役割(⽴命館⼤学の考える「院生像」)
- (5)今後の⼤学院教学政策の展開に向けて
- 第Ⅲ章 R2020期間の財政運営と立命館大学の2023年度以降の学費・財政政策について
- 資料