3.2023年度以降の学費・財政政策について

(1)私学の財政構造と学費について

学校法人の財政運営では、過去・現在・未来にわたる長期的視点をもって財務構造を形成する必要があります。教育・研究や学生・院生の学びの環境として、校舎、図書館などの施設や教室・実験室における機器などの設備を整備することが求められます。そのためには、施設・設備の取得時に必要な資金に加え、将来における老朽化、教育研究の高度化や学びのスタイルの変化などに即した更新のための資金が必要です。

学校法人は、こうした資金について、取得・更新を行う年度に在籍する特定の学生のみが負担するのではなく、長期的な視点、全学的な視点で平準化しながら必要な自己資金の積み立てを行う構造を持っています。例えば、立命館大学はR2020期間において、衣笠C存心館や清心館の大規模改修、BKCにおけるスポーツ健康コモンズの新設、OIC開設による教学条件改善を行いました。これらの施設整備を行った年度の支出は大きくなりますが、過去・現在・未来の長期的な時間軸での財政運営・資金形成を行い、その資金を整備費に充てることで、整備を行ったその時の学生に負担を集中させずに実施することが可能となります。2020年度以降の新型コロナウイルス禍への対応についても、財務上は、自己資金による積立の一部を緊急的に取り崩すことで機を逃さずに実施することができています。

昨今、自然災害、パンデミック、サイバー攻撃、地政学的緊張など、教育・研究活動を継続するうえでの不確実性が高まっています。今後も教育条件を維持・改善し続け、より多様で魅力のある学びの機会を創出していくためには、教学面においても財政運営面においても、社会の変化に対応できる機動性を備え持つことが求められます。こうした柔軟性や教学展開の持続性は、長期的な視点で収支のバランスを健全に保つことによって担保されています。

また、学費は、それぞれの学部・研究科における教学内容をふまえるとともに、奨学金や包括的学習者支援、課外自主活動支援、進路・就職支援、情報・通信環境、図書館など全学の教学条件にも関連しており、すべての学生に共通する全学的な学習・学生生活の環境・条件整備を通じても還元されています。

(2)R2030の財政運営について

R2030チャレンジ・デザインでは、新たな価値を創造する次世代研究大学とイノベーション・創発性人材を生み出す大学を掲げ、立命館大学から新たな価値や学びが生み出されることをめざしています。R2030前半期の財政運営では、R2030チャレンジ・デザインの推進など、教学の質向上・改善を財政的に支えることを第一の目的にしており、中長期的な視点では、このような教育・研究の成果の社会実装を通じて価値提供・価値創出することで、その価値に照らした収入構造の再構築をめざすことを方針としています。そのため、チャレンジ・デザインの機動的な推進をめざし、受取利息・配当金収入などの教育活動外収入を財源とする新たな予算を設定し、効果検証を行いながら実施することとします。

また、R2030前半期の財政運営基本方針では、経常的な収入に占める学納金の比率が75%を上回らないことを新たな指標として設けています。この指標を設けることで、過度な学納金への依存の抑制を図るとともに、支出については学園が学内外に有するリソース(ネットワークやデータなど)およびデジタル技術などのより積極的な利活用によって、事業の質や業務効率の向上を図るDXを推進することとします。

(3)2023~2026年度の学費政策

立命館大学では、入学時に在学期間の授業料を明示しており、在学期間中の授業料は基本的に変更することはありません。全学協議会で提起するのは、2023~2026年度に入学する学生に適用する学費政策になります。

この間、学友会などと、私学の財政構造や学園財政運営の到達点と課題、学費について継続的に意見交換を重ねてきました。学友会は、2021年度第1回全学協議会代表者会議で、2023年度以降の学費政策について、その決定までのプロセスに参加できる機会の担保を要望しました。これを受け、継続して学友会との懇談を続けてきました。

R2030チャレンジ・デザインの実現に向けては、恒常的・基盤的な事業による財政の健全性・バランスを確保することが前提となります。引き続き学納金以外の収入の多様化や経費削減にも努めていきますが、前述したとおり、私学財政の現実として、学びの環境・機会を保障し、将来にわたり持続的に教育研究の質向上を行うためには、学納金による収入基盤の維持・構築が不可欠です。R2030以降の教学展開、大学の価値創造を持続的・連続的に進めていくための財政基盤を維持・構築する重要な方策のひとつとして、2023~2026年度の入学者に適用する立命館大学の学費政策を提起します。

今次の授業料改定方式には、教育活動に伴う収支状況をふまえて適用する「教学維持改善費」を設定しています。大学としても、さまざまな意見・指摘を加えながら、時間をかけて厳しい議論・検討を重ねましたが、社会の変化に対応しながら、持続的に教学条件を維持・改善するため、またその実現を財務的に支える収支バランスを健全に保つためにどうしても必要な方針・考え方として提起することにしました。「教学維持改善費」を適用する場合は、常任理事会で検討し、学生・院生のみなさんに説明することとします。

1) 入学金

入学金は現行通りとします。(現行通り)。

区分 金額
入学、編入学、転入学、学士入学 200,000円
再入学 10,000円

ただし、次の場合は入学金を徴収しません。

①国際関係学部アメリカン大学・立命館大学国際連携学科の入学者でアメリカン大学で学習を開始する者およびグローバル教養学部の入学者でオーストラリア国立大学で学習を開始する者
② 本大学またはAPU の学部を卒業した者が、本大学院に入学する場合
③ 本大学またはAPU の学部から引き続き本大学院に入学する場合
④ 本大学またはAPU の大学院を修了した者または博士課程に標準修業年限以上在学し、学則に定める履修要件を満たした者で博士学位を取得せずに退学した者が本大学院に入学する場合

2) 2023~2026年度の入学者に適用する授業料改定方式

学部入学者に適用する授業料改定方式

新年度授業料=基本授業料×(1+物価指数アップ率)+教学維持改善費(※)

  • 「基本授業料」は2022年度入学者の授業料(年額)とする。
  • 「物価指数アップ率」は消費者物価指数(全国総合)の2020年度平均値を基準として、直近年度平均値における上昇率を用いる。ただし、上昇率が1.0ポイント未満の場合は適用しない。
  • 算出された新年度授業料が前年度授業料を下回る場合は、前年度授業料と同額とする。
  • 新年度授業料の1/2(百円単位で四捨五入)を学期授業料とする。
  • 「教学維持改善費」について
    • ・ 持続的に教学条件を維持・改善するため、教育活動に伴う収支状況をふまえて「教学維持改善費」を適用することがあります。
    • ・ 「教学維持改善費」を適用する場合は、5万円を超えないものとし、2023~2026年度において、初めに適用した年度以降の入学者に適用する「教学維持改善費」は同額とします。

2023年度入学者の授業料については、新型コロナウイルス禍における社会情勢を勘案し、収支状況に関わらず、教学維持改善費は適用しません。
2023年度入学者の授業料は上記に基づく計算の結果、2022年度入学者の授業料と同額とします。

博士前期課程、修士課程、一貫制博士課程(1・2年次)および専門職学位課程入学者に適用する授業料改定方式

新年度授業料=基本授業料×(1+物価指数アップ率)

  • 「基本授業料」は2022年度入学者の授業料(年額)とする。
  • 「物価指数アップ率」は消費者物価指数(全国総合)の2020年度平均値を基準として、直近年度平均値における上昇率を用いる。ただし、上昇率が1.0ポイント未満の場合は適用しない。
  • 算出された新年度授業料が前年度授業料を下回る場合は、前年度授業料と同額とする。
  • 新年度授業料の1/2(百円単位で四捨五入)を学期授業料とする。

大学院の学費については、R2020において大学院政策の一環として学費減額の判断をしました。R2030チャレンジ・デザインでは、次世代研究大学の実現に向け大学院生を探究し続ける自立した研究の実施者と考え、研究と教育の拡大的再結合に向けた政策を促進することから、現行の授業料改定方式を継続します。

2023年度入学者の授業料は上記に基づく計算の結果、2022年度入学者の授業料と同額とします。

また、博士後期課程、博士課程および一貫制博士課程(3年次以上)の授業料についても現行の考え方を継続し、授業料50万円(年額)を継続します。

3)新設学部・研究科等の授業料

学部等の新設・再編や大幅なカリキュラム改革等にあたっては、教員体制や学部等固有の施設・設備整備計画等をふまえて授業料を決定します。

4)在学期間の授業料明示

入学時に在学期間の授業料を明示する方式とします。

ただし、社会的要因による急激で大幅な物価上昇等があり、その影響への対処として在学生を含む学費改定が余儀なくされた場合には、緊急的な措置として学費改定を提起します。

5)2022年度以前の入学者に適用する授業料(学部・研究科)

2022年度以前の入学者には、すでに入学時に明示している授業料を適用します。

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