第Ⅲ章

R2020期間の財政運営と
立命館大学の2023年度以降の
学費・財政政策について

R2020では、学習者中心の教育・包括的学習者支援などを目標として、教育・学びの質向上やグローバル化を推進するための基盤的条件整備を実施してきました。R2020での到達に立って、さらなる教育の質向上にむけた取り組みや、アフターコロナ時代を展望し策定されたR2030チャレンジ・デザインを着実に実施していくためには、財政の健全性・バランスを維持し続ける必要があります。

わが国の私立大学は、公財政支出の国際的に見た水準の低さと国立大学との格差という二重の構造的格差のなかに置かれています。日本は高等教育に対する公財政支出がOECD 加盟諸国のなかで最も低い国のひとつです。私立大学が支出する経常的な人件費や経費に対して国から配分される私立大学等経常費補助金の割合は10%に満たない水準にまで低下しています(私立大学等経常費補助金の根拠法である私立大学振興助成法は、この割合を50%とすることを付帯決議していますが、実際には、1980年度の29.5%をピークに下がり続けています。10%を下回るのはこの法律が制定される前の1971年度以来のことです)。

こうした背景から、日本の私立大学は、学納金(学費による収入)を主な原資としながら人件費や奨学金などの教育研究のために必要となる経費をまかなうとともに、将来の施設の取替・更新などに備えた資金を積み立てることで、永続的な教学運営・大学運営が可能になるという財務構造を持っています。私学の財政にとって学納金は不可欠な財源であり、学納金による財務基盤があるからこそ、教育・研究の質を保証し、持続的な展開・改善を実現することができます。

立命館大学では、学費・学費政策を、社会・家計の経済実態や他大学の状況などを背景として考慮しながら、教育の質的・量的条件と学園財政との総合的な接点として位置づけており、「学費の重みに応える教育」「学費に見合う学びと成長の実感」として表しています。全学協議会では、学園財政の現状と課題についての理解を深めるとともに、学納金を主な財源として実施・展開している教学の取り組みが、学生・院生のみなさんの学びと成長に寄与しているかどうか、学び、成長し続けようとする人たちにとって魅力のある大学づくりに繋がっているのかどうかについて協議していきたいと考えています。

R2030で示している大学像を展望すると、持続的な教育の質向上の営みや、それを支える財政運営の永続性は、学生・院生のみなさんが在学する今の教育条件の改善と同時に、卒業・修了後に、場合によっては社会人経験を経て、学び直しや大学院進学をする場としての母校(母港)の価値向上を実現・保証することでもあるという視点がいっそう重要になります。

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