(1)多様な学⽣の多様な学びを実現するための取り組み(学⽣の学びの環境整備)
1)⼤学での学びの核となる学部での学習・教育環境の充実
R2020では、多様な学⽣⼀⼈ひとりが学部での学びを通じた成⻑の実感が⼤切であることを前提として、以下の取り組みを進めました。
①正課を中心とした取り組み
1回⽣初年次⼩集団クラスでの取り組み
初年次教育は、⼤学での「学び⽅を学び」、「⽣徒」から「学⽣」への「学びの転換」をはかるという重要な役割を担うため、初年次教育の改⾰は常に⽴命館⼤学の取り組みの重点といえます。なかでも、基礎演習などの初年次の専⾨⼩集団科⽬は、少⼈数でのきめ細かな指導や学⽣同⼠の学び合いの場という点で、初年次教育の要となっています。
そこで、2014年に、教学改⾰・改善の指針としての教学ガイドラインで、1回生専門小集団科目のクラス規模30名を基準とすることを定めました。2010年度から2020年度にかけて、13学部のうち(※2010年度時点で開設されていなかった総合⼼理学部、⾷マネジメント学部、グローバル教養学部をのぞく)10学部において1クラスあたりの専門小集団科目の受講者数は減少しました(表2・表3参照)。また2010年度の時点では、4学部において1クラスあたりの受講者数が35名以上であったのに対し、2020年度の各学部の専門小集団のクラス規模をみると、教学ガイドラインの定める30名という基準をほぼ満たすか、少なくとも30名をわずかに超える範囲になりました。
⼩集団という形態を活かした一層きめ細かな指導をし、学びと成長に資する学部教学の改⾰・改善への取り組みが、前提としては重要となりますが、その取り組みを⽀える環境の整備として、1クラスあたりの受講者数の適正化は、重要となります。
表2:小集団授業の1クラスあたりの受講者数の比較表(2010年度-2020年度)
1回生小集団 | 3、4回生ゼミ | ||||
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2010年度 | 2020年度 | 2010年度 | 2020年度 | ||
法 | 36.3 | 29.6 | 14.8 | 14.3 | |
経済 | 経済学科:32.1 国際経済学科:23.9 |
経済専攻:31.3 国際専攻:29.6 |
21.3 | 19.8 | |
経営 | 経営学科:29.2 国際経営学科:25.8 |
経営学科:26.2 国際経営学科:22.2 |
19.5 | 15.0 | |
産社 | 31.3 | 28.2 | 13.3 | 13.9 | |
国関 | 29.7 | IR専攻:23.5 GS専攻:20 |
18.9 | 16.0 | |
政策 | 35.0 | 31.6 | 12.8 | 11.8 | |
文 | 30.8 | 26.3 | 18.0 | 18.3 | |
映像 | 30.0 | 32.4 | 17.1 | 17.4 | |
心理 | - | 35.0 | - | 10.9 | ※2016年度開設 |
理工 | 31.2 | 32.9 | 8.9 | 8.1 | |
情理 | 32.2 | 27.6 | 9.7 | 8.7 | |
生命 | 36.5 | 33.8 | 73.2 (10名~15名程度の小グループに編成して指導を行う) |
8.3 | |
薬 | 35.5 | 30.0 | 92.8 (10名~15名程度の小グループに編成して指導を行う) |
3.4 | |
スポ健 | 25.4 | 25.4 | - | 11.9 | ※2010年度開設 |
食 | - | 25.1 | - | 13.7 | ※2018年度開設 |
GLA | - | 16.8 | - | - | ※2019年度開設 |
※学科でクラス規模を変えているものは分けて記載しています。
※生命・薬の2010年度のカリキュラムでは、3・4回生小集団科目は一旦70~100名のクラスに分け、さらにクラス内で10~15名の小グループに分けて指導を行っていましたが、表中は小グループ化する前の数値で表示。
表3:2009年度~のカリキュラム改革の状況
2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 | 卒論必修化年度 | 備考 | |
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法 | 〇 | 〇 | 2016 | ※登録必修 | |||||||||||||||
経済 | 〇 | 〇 | 〇 | 2017 | |||||||||||||||
経営 | 〇 | 〇 | 〇 | 2022 | |||||||||||||||
産社 | 〇 | ※ | 〇 | 2018 | ※2020年度教科に関する科目の一部変更 | ||||||||||||||
国関 | 〇 | 〇 | 2018 | ||||||||||||||||
文 | 〇 | 〇 | 〇 | 開設当時 | |||||||||||||||
政策 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 2014 | ※2022は教養改革を適用 | |||||||||||||
映像 | 〇 | 〇 | 〇 | 開設当時 | |||||||||||||||
心理 | 設置 | 〇 | 開設当時 | ||||||||||||||||
理工 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 開設当時 | ※2018年度は環境都市のみ ※2020年度は環境都市以外 ※2022は環境都市のみ教養改革を適用 |
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GLA | 設置 | 〇 | 開設当時 | ||||||||||||||||
食 | 設置 | 開設当時 | |||||||||||||||||
情理 | 〇 | 〇 | 〇 | 開設当時 | |||||||||||||||
生命 | 〇 | 〇 | 開設当時 | ||||||||||||||||
薬 | 〇 | 開設当時 | |||||||||||||||||
スポ健 | 設置 | 〇 | 〇 | 開設当時 | |||||||||||||||
件数 | 0 | 3 | 2 | 6 | 1 | 2 | 2 | 3 | 3 | 4 | 1 | 2 | 2 | 4 | 2 | 0 | 0 |
3・4回⽣ゼミ(専⾨演習や卒業研究など)での取り組み
学⽣にとっては⼤学での学びの集⼤成あるいは卒業時の学びの質保証という観点から、⼀貫した専⾨⼩集団の学びにおいて重要な位置を占める「専⾨演習・卒業研究などの1クラスあたりの受講者数」について、2014年度に、教学ガイドラインで20名を基準とすることを定めました。2010年度では、ほぼすべての学部のクラス規模は教学ガイドラインの基準を実態として下回っていましたが、2020年度には、13学部中9学部において1クラスあたりの受講者数をさらに減少させました。1回⽣専⾨⼩集団科⽬の場合と同様、1クラスあたりの受講者数の規模の縮小は、学部の⽬指す教学改善の具体化とともに、卒業時の学びの質保証をより実質化するという点にも関わります。2010年度以降に開設された学部も含め、2020年度の時点では14学部において学びの集大成としての卒業論⽂を必修化してきています。他の2学部についても、1学部において2022年度入学生より必修化し、もう1学部において卒業研究の受講登録を必須化しています。
これらの取り組みの背景には、大学の教員数に関わる計画である教員組織整備計画に基づく教員体制の充実があります。教員数を増加させることで、教育・研究上の分野・テーマの幅が一層広がり、学⽣のゼミあるいは研究室の選択肢の増加に繋がった、という到達点があります。この点については、特に⾃然科学系学部において顕著な成果がみられます。
また、授業アンケートの結果では、このような小集団クラスによる授業形態は、「到達目標達成度」や「学び役立度」が講義の授業形態よりも相対的に高い傾向があります。さらに、2018年度の卒業生に対して実施したアンケートでは、文系学生にとって「自分の成長に最も貢献したもの」として、「卒論」および「ゼミ」が「課外活動」とほぼ並んで1位・2位を占めており、理系学部生では「卒論」が30%を超えて突出して多く、続く「課外活動」に「ゼミ」が次いでいます。この結果からも、3・4回生ゼミが学生の成長実感に大きな影響を与えたことが確認できます。
必修英語科⽬での取り組み
教学ガイドラインでは、外国語科⽬について1クラスあたりの受講者数の基準を35名としています。そのうえで、各学部の教学特性・科⽬特性(PBL型の授業、発信重視の授業など)をふまえ、1クラスあたりの受講者数の規模を改善してきています。(2010年度必修英語科⽬の「教員ひとりあたり学生数(以下、ST比)」31.72→2020年29.16)
加えて、政府の取り組みであるスーパーグローバル大学創成支援事業* (以下、SGU)との関係のもとで一層推進された教学の国際化の取り組みも進めてきました。そこでは、例えば英語基準専攻の充実、国際教養科⽬(教養科⽬B群)・学部英語開講科⽬の拡充、学部独⾃の海外留学プログラムの豊富化の取り組みを進めており、これらの取り組みの背景にもST⽐の改善が関係しています。こうした諸施策をうけて、2010年代から2021年度にかけ、英語教育における学びの成果が上がっています。SGUとの関連から、⽴命館⼤学では外国語⼒の到達度検証の基準をCEFR B1以上と設定しています。この基準を満たす⽴命館⼤学⽣の割合は、SGUの始まった2013年度には全体の23.5%(7,607名)であったのに対し、2021年度には45.6%(14,561名)まで上昇しています。
他方で、この間の全学協議会の議論では、学⽣の達成感や成⻑実感と到達度との間に乖離があると学友会から指摘があり、議論を継続しています。
なお、以上については、SGUとの関わりもあり、外国語のなかでも特に英語を取り上げて記述をしてきました。その一方で、世界の多様な文化をより詳細に理解し、国際的な諸課題をいっそう複眼的にとらえる力を身につけるために、英語以外の初修外国語を学ぶ意義が大きいということは、言うまでもありません。
*スーパーグローバル大学創成支援事業:日本の高等教育の国際競争力の向上を目的に、海外の卓越した大学との連携や大学改革により徹底した国際化を進める、世界レベルの教育研究を行うトップ大学や国際化を牽引するグローバル大学に対し、制度改革と組み合わせ重点支援を行う政府の事業です。⽴命館⼤学では⽴命館憲章の趣旨のもと、国際舞台で活躍する⼈材育成に努めており、こうした⼈材育成の趣旨と合致したため、これに参画し2014年に採択されました。
ライティング⽀援窓⼝などの学⽣⽀援の取り組み
R2020の取り組みの途上で判断したこととして、ライティング⽀援窓⼝などの学⽣⽀援の取り組みがあります。これは、2019年度の全学協議会において、卒業論⽂執筆の⼟台となる⽂章作成能⼒を育てるための全学的なライティング⽀援の必要性が、課題として確認されたことによります。こうした課題を解決するため、協創施策(2019〜2022年)の取り組みを進めてきています。協創施策の議論と関わって、Student Success Program(以下、SSP)をはじめ、Beyond Borders Plaza(以下、BBP)の運営や衣笠キャンパスを拠点とする全学ライティング支援など、多様な学⽣⽀援の取り組みも行ってきています。このように、正課と正課外の取り組みの⾼次な連携が、学びの多様性や⾃⽴した学習の涵養に繋がってきています。
目次
- 第Ⅰ章これまでの全学協議会における議論経過と2022年度全学協議会の位置づけ
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第Ⅱ章R2020からR2030に向けた⽴命館⼤学の取り組みについて
- 1.R2020の取り組み
- (1)多様な学⽣の多様な学びを実現するための取り組み(学⽣の学びの環境整備)
- (2)⼤学院におけるより⾼度な研究やキャリア⽀援の取り組み
- (3)より豊かで快適な学習・学⽣⽣活を実現するためのキャンパス環境整備
- 2.新型コロナウイルス禍での緊急対応とその経験をふまえた将来への展望
- 3.R2030チャレンジ・デザインの具体的な取り組みにむけて
- (1)R2030チャレンジ・デザインの考え⽅
- (2)研究と教育の拡⼤的再結合の意味−⽴命館⼤学の使命達成のために−
- (3)学⽣の学びと成⻑をさらに充実したものにするために
- (4)院生に期待する役割(⽴命館⼤学の考える「院生像」)
- (5)今後の⼤学院教学政策の展開に向けて
- 第Ⅲ章 R2020期間の財政運営と立命館大学の2023年度以降の学費・財政政策について
- 資料