アジア・マップ Vol.01 | シンガポール

シンガポール21世紀年表  1999~2022年

田村慶子(北九州市立大学法学部・教授)

1999年

初代の民選大統領(候補者には収入や社会的地位などで厳しい条件がある)オン・テンションが任期満了で退任、任期中に政府との間で感情的な行き違いがあったと自ら暴露。S. R. ネイザンが無競争当選で次期大統領に就任
2000年

閣僚と上級公務員の人材確保のために、その給与を民間の高所得者の給与を基準に大幅引き上げ

事前の届け出によって野外集会を認める唯一の場所として、都心の公園内にスピーカーズ・コーナーを設置
2001年

総選挙実施、独立以来最悪の経済不況とテロの不安によって与党人民行動党(PAP)が得票率75.3%、国会の82議席(全84)を獲得して圧勝

米軍関連施設に対するテロ攻撃を準備したとして、マレー系を中心とするテロ組織を摘発
2002年

公立学校の女子生徒がヒジャブ(ムスリム女性が髪を覆う布)を着用して登校、首相は停学処分も辞さないと警告

日本と包括的経済連携協定(自由貿易協定)を締結、これは日本にとっては初の自由貿易協定
2003年

SARS(重症急性呼吸器症候群)発生、死者33人、感染者238人

アメリカと自由貿易協定を締結
2004年

第2代首相ゴー・チョクトンが退任、リー・シェンロン(初代首相リー・クアンユーの長男)が第3代首相に就任
2005年

S. R. ネイザンが大統領に無競争当選(2期目)、なお対立候補がいたが、資格要件を満たさないとして選挙管理委員会はその申請を却下

全国腎臓協会最高執行役員の不適切な資金運営が国民の激しい批判を浴びて、組織の見直しが行われる
2006年

同性どうしの性行為を罰する刑法377条は改正されるが、男性どうしの性行為を罰する377A条は改正されずに残される

総選挙実施、与党PAPが国会の82議席(全84)を獲得、ただ得票率は66.6%で前回よりも9%近く下落
2007年

リー首相が、今後編成される次期指導者(第4世代指導者)チームが次期首相を選ぶと明言

ジョホール州(マレーシア)南部を開発するイスカンダル計画が進展し、シンガポールとの経済補完関係の具体的協議が進む
2008年

中国と自由貿易協定、防衛交流・安全保障協力協定を締結

マレーシアと領有を争っていたペドラ・ブランカ島などについて、国際司法裁判所は「ペドラ・ブランカ島はシンガポール領、岩礁ミドル・ロックスはマレーシア領」という判決
2009年

対中経済関係の強化、天津エコシティや杭州サイエンス・テクノロジー・パークなどの工業団地、都市・観光開発の協力に合意

日本文化を中心とする情報を発信する拠点として「ジャパン・クリエイティブ・センター」が開所
2010年

国民の不満を受けて、外国人労働者の雇用規制開始

2008年の金融危機後低迷を続けた経済が急速にV字回復、通年で14.8%の成長
2011年

総選挙実施、与党PAPが国会の81議席(全87)を獲得するも得票率は史上最低の60.1%、野党労働者党はグループ選挙区1つ(5議席)を含む6議席を獲得

首相辞任後も内閣に留まっていたリー・クアンユー初代首相とゴー・チョクトン第2代首相が閣僚を退く
2012年

対ミャンマー関係を強化、経済特区や工業団地、商業・住宅地域の開発協力を確認

公共バスを運行するSMRT社の中国人バス運転手が、待遇改善を求めてシンガポールでは26年ぶりとなるストライキ実施
2013年

2030年までに人口650万~690万人、その45%が外国人という「人口白書」が発表され、多くの国民は強く反発

安倍首相訪問、リー首相は年に2度訪日

台湾と自由貿易協定を締結
2014年

外来診療の半額補助や国民皆保険(新制度)保険料の40~60%補助など、65歳以上の高齢者45万人への社会福祉拡大(パイオニア世代パッケージ)

2020年までにシンガポールとクアラルンプールを結ぶ高速鉄道計画を完成させることで合意
2015年

独立50周年の節目の年に初代首相リー・クアンユー死去(91歳)、国葬が行われる

総選挙実施、与党PAPは国会の議席83(全89議席)を獲得、得票率は69.9%と前回選挙から大きく増加
2016年

日本との国交樹立50周年

少数民族出身候補の優先と民間出身候補者の資格限定化を定めた修正大統領選出制度が決定

台湾で軍事演習を行ったシンガポール国軍の装甲車9台が、シンガポールへの帰路の香港で中国当局によって押収される
2017年

歴代2人目のマレー系で初の女性大統領が誕生、昨年の大統領選出制度の修正によって候補者が1人に絞り込まれた上での無投票当選で、一部に反発や議論をうむ

リー首相の妹と弟が、父親である故リー・クアンユー元首相の遺言と旧居処分について兄を非難
2018年

次世代指導者の中からヘン・スイキャット財務相が次期首相の最有力候補者に内定

セントサ島で史上初の米朝首脳会談開催、シンガポールは治安の良さと政治的中立を世界にアピール

高速鉄道計画の凍結、水資源の供給問題、領海・領空をめぐる問題で、対マレーシア関係が緊張
2019年

「オンライン虚偽情報・情報操作防止法」制定、オンライン上の情報が政府の判断で削除可能になる

米中対立が深まる中で、中国とは一帯一路の複数案件の協力という経済中心の関係を、アメリカとは対米軍事協定の15年延長という安全保障の関係を強化し、バランス外交を堅持
2020年

新型コロナウィルス感染拡大で職場閉鎖(4月7日~6月1日)、感染者の90%は建設現場などで働く外国人労働者

総選挙実施、与党PAPは国会の議席83(全93議席)を獲得、得票率は61.2%と前回よりも7.7%下落、野党労働者党は初めて10議席獲得
2021年

次期首相に内定していたヘン・スイキァット副首相が辞退を表明

「外国干渉対策法」制定、外国からの干渉を防止するため、政府がSNS運営者などの情報開示、アカウント制限やアプリ削除の要請が可能になる
2022年

ウクライナに侵攻したロシアに制裁、シンガポールは制裁を科す東南アジアで唯一の国に

ローレンス・ウォン財務相が次期首相に内定

男性どうしの性行為を禁じた刑法377条A廃止、ただ、「結婚は男女間に限る」と憲法に明記して同性婚の法的議論に終止符を打つ

書誌情報
田村慶子「シンガポール21世紀年表」『《アジア・日本研究 Webマガジン》アジア・マップ』1, SG.3.02(2023年5月31日掲載)
リンク: https://www.ritsumei.ac.jp/research/aji/asia_map_vol01/singapore/timeline/