アジア・マップ Vol.02 | クウェート

読書案内

石黒大岳(ジェトロ・アジア経済研究所 副主任研究員)

一般向け
牟田口義郎『石油に浮かぶ国 クウェートの歴史と現実』中央公論新社 1965年
古代から18世紀の建国および英国の保護から独立を果たすまでの歴史と、石油資源の開発によって富裕国へと変貌するに至るクウェートの通史。
高橋和夫『燃えあがる海 湾岸現代史』東京大学出版会 1995年
1971年の英国の湾岸地域からの撤退からイラン革命、湾岸危機・湾岸戦争へと至る地域情勢の通史のなかで、クウェートについても言及されている。
日本国際問題研究所『湾岸アラブと民主主義 イラク戦争後の眺望』日本評論社 2005年
イラク戦争と米国ブッシュ政権による中東の民主化推進政策の影響を論じるなかで、クウェートの民主化と選挙・議会政治の実情を取り上げている。
松尾昌樹『湾岸産油国 レンティア国家のゆくえ』講談社 2010年
湾岸産油国に対する学術的な分析枠組みについて解説したうえで、湾岸産油国の実体を描き出すとともに、分析対象への眼差しを問うなかで、クウェートが抱える問題について論じている。
松本弘『現代アラブを知るための56章』明石書店 2013年
アラブ諸国全般を対象としているが、湾岸諸国の近現代や政治体制・政治制度の特色およびアラブ人と国民意識に関する章でクウェートについて紹介されている。
研究書
石黒大岳『中東湾岸諸国の民主化と政党システム』明石書店 2013年
湾岸戦争後の議会政治の展開について、社会的亀裂構造と議員の組織化・会派の結成に着目して論じている。
細田尚美『湾岸アラブ諸国の移民労働者 「多外国人国家」の出現と生活実態』明石書店 2014年
フィールド調査に基づく外国人労働者の受け入れ政策の実態や外国人労働者コミュニティーの実情について、クウェートの事例についても論じている。
Herb, Michael 1999. All in the Family: Absolutism, Revolution, and Democracy in the Middle Eastern Monarchies. State University of New York Press.
中東諸国の君主制について、クウェートの事例をもとに、王族内の権力分有による体制維持の特性を「王朝型君主制」として論じている。
Tétreault, Mary Ann 2000. Stories of Democracy: Politics and Society in Contemporary Kuwait. Columbia University Press.
古代ギリシャの民主制のあり方をモチーフに、クウェートにおける国家―社会関係の変遷と議会制民主主義の歴史的展開について論じている。
Freer, Courtney 2018. Rentier Islamism: The Influence of the Muslim Brotherhood in Gulf Monarchies. Oxford University Press.
クウェートを中心に湾岸アラブ諸国におけるムスリム同胞団の在地組織の活動実態とその影響力の特性について、レンティア国家概念を援用して論じている。

書誌情報
石黒大岳「クウェートの読書案内」『《アジア・日本研究 Webマガジン》アジア・マップ』2, KW.5.01(2024年4月1日掲載)
リンク: https://www.ritsumei.ac.jp/research/aji/asia_map_vol02/kuwait/reading/