NEWS

2022.03.24

第42回AJI研究最前線セミナー開催

 2022年3月8日、第42回AJI研究最前線セミナーをオンラインで開催しました。今回は、Dr.茶谷智之(兵庫教育大学大学院学校教育研究科講師)が“Aspirations and Urban Life among Poor Youth in Contemporary India: Focusing on Going Out Experiences of Teenage Girls in Secondary Schools”というタイトルのもとで、インド・デリーの都市スラムに暮らす女子中学生の生活と、彼女たちがいかに社会的障壁や親からの制約を乗り越えて、現代の都市生活を享受しようと試みているのかについて、英語で発表しました。Dr.茶谷は、先行研究では、現地のショッピングモールや高級住宅地に出入りしながら、彼は、これまでの研究では、低い社会的地位を隠しながら、ショッピングモールや高級住宅地に出入りし、上層階級の人々と交流する貧しい若者の行動を適切に捉えられてこなかったという問題点を指摘しました。また、周囲に広がる犯罪やアルコール、虐待などから少女を守るために、親は厳しく管理しなければなりません。そのもとで、どのようにして彼女らは都市生活への憧れを充たすことができたのでしょうか。第一に、家庭内での義務を果たすことを条件に、そして、厳しい門限のもとで友人と外出することが許されました。ある事例研究では、都市生活への憧れを持つある少女が、試験に失敗した後でさえ、スラムの近くのネットカフェで追加授業を受けたという事実が示されています。そのために、彼女は、母の要求を充たし、そのカフェで勉強することが許可され、またその後に、中流階層の友人たちと遊ぶことで、都市生活への憧れを実現しようとしたのです。中流階層の中学校に通う別の少女は、彼女の友人グループのなかで唯一のスラム出身です。彼女は、友人たちと公園に行き、友人のスマートフォンでYoutubeを見ながら、おしゃべりをしたり、歌ったり、踊ったりします。彼女は、母が課した外出制限を厳守し、放課後は友人たちと1時間遊ぶことが許され、そうした制限のもとで友人の誕生会に参加しています。

 母の外出禁止令を厳守し、放課後も友達と1時間遊ぶことができ、友達の誕生日パーティーも楽しんだ。つまり、中等教育を経験することで、インドのスラム地区の若者たちは、近代的生活への願望を実現するために、彼女たちが憧れる都市生活を経験しようとし、自らの置かれた不利な境遇を克服しようとしているのです。

 質疑応答では、インド社会の社会階層や、そのもとでの中流階級の生活スタイルへの上昇可能性について議論が交わされました。Dr.茶谷によれば、彼女たちの憧れは、中流階層の人々が享受する生活スタイルを部分的に経験することに限られています。また最後に、親元で厳格に管理されている彼女たちの日常を調査することに困難はないのか問われると、Dr.茶谷は、彼女たちの親からの信頼を得たうえで、厳格な調査の手続きを取ることではじめて調査が可能であることを強調しました。

220324_01
発表を行う茶谷先生

過去のAJI最前線セミナーについては以下のリンクからご覧いただけます。
https://www.ritsumei.ac.jp/research/aji/young_researcher/seminar/archive/