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2024.11.11

【レポート】第72回AJI研究最前線セミナー開催!Dr. Variya Kunapasut: “The Spillover Effects of Population Control Policies: Empirical Evidence from Vietnam”

2024年10月4日(火)、第72回AJI研究最前線セミナーを開催しました。今回は、Dr. Variya Kunapasut(立命館アジア・日本研究機構 専門研究員)が“The Spillover Effects of Population Control Policies: Empirical Evidence from Vietnam”と題して発表を行いました。Dr. Variyaは、人口増加を抑制するベトナムの政策が出生率と家族の規模に及ぼす影響について研究しています。はじめに、彼女は、世界人口が1986年の50億人から2020年には78億人に増加し、インドや中国などのいくつかの国では急速な人口増加を減速させようとしているなどの時代背景について説明しました。 こうした背景において、女性一人当たりの出生率が6人を超えるベトナムでは、1960年に産児制限が導入され、1989年8月には多数派であるキン族と公務員を対象とした厳格な二人っ子政策が導入されました。 この方針に従った人には一定の報償が与えられ、違反した家族には処罰が課せられました。

彼女の研究は、ベトナムの二人っ子政策の波及効果を初めて詳細に検討するものです。これまでの研究では、対象となっていない少数民族への影響は考慮されておらず、政策の効果を包括的に評価することは困難でした。 1989年8月に政策が導入されてから10カ月後に生まれた子どもに焦点を当てた2009年のベトナム国勢調査のデータに対して、Dr. Variyaは回帰不連続デザイン(RDD: Regression Discontinuity Design)を用いて、一人っ子として生まれる確率、または兄弟姉妹が一人まで生まれる確率に対する政策の影響を調査しました。

彼女は、精確な結果を得るために、三角カーネル関数、多項式次数、および最適バンド幅などを駆使して推定値がどのように計算されたかを示すことで、実証的方法論について明確に説明しました。彼女は研究で発見を図表やグラフで示し、単一の子供として生まれたり、兄弟姉妹だけを持ったりする確率が、キン族と非キン族、公務員、民間人に当てはまることを明確に示し、顕著な波及効果の存在を確認しました。

次に、Dr. Variyaは、二人っ子政策の予想外の波及効果は、家族計画に対する社会規範や態度の変化によるものである可能性があるという視点について議論しました。対象外のグループでさえ、この政策によって奨励された家族計画措置を自発的に採用していたのです。無料の避妊具を提供するために全国的に計画ユニットが設立されたことも要因として働いています。彼女はさらに、この政策は、公務員に対して課されたより厳しい処罰と監視方法を採用していたために、公務員の人々に対してはるかに大きな効果をもたらしたことを証明しました。

彼女の研究は、政策の対象ではない人々に対して家族計画政策の影響は受けないという仮定に異議を唱えるものです。また、そうした仮定のもとで行われてきた以前の研究の不十分さを克服するものです。

Dr. Variyaの興味深いプレゼンテーションに続いて質疑応答が行われました。特定のデータを選択した理由や、農村地域の住民が厳格な二人っ子政策に従うためにベトナム政府がしたことなどについて議論が交わされました。彼女は一つ一つの質問について、明快に回答し、活発な意見交換が行われました。

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発表を行うDr. Variya

過去のAJI最前線セミナーについては以下のリンクからご覧いただけます。
https://www.ritsumei.ac.jp/research/aji/young_researcher/seminar/archive/