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2025.02.03

【レポート】第75回AJI研究最前線セミナーを開催しました!Dr.角田燎、““TOKKO” and Postwar Japanese Society: Commemorative Activities of the Postwar Generation and their Dilemmas”

2025年1月14日 (火)、第75回AJI研究最前線セミナーをオンラインで開催しました。今回は、Dr.角田燎(立命館アジア日本研究機構 専門研究員)が““TOKKO” and Postwar Japanese Society: Commemorative Activities of the Postwar Generation and their Dilemmas”と題して英語で発表を行いました。

はじめに、Dr.角田は、「特攻」と呼ばれる神風特攻隊、べニアボートによる特攻作戦、陸海軍の人間魚雷(回天) などが日本の軍事史における究極の犠牲の象徴となってきたことを指摘しました。今回の発表は、戦後の日本社会における「特攻」の記憶と、亡くなったパイロットを記憶する今日の方法について考察するものです。

また、戦後、元将校たちが「特攻」を始め、特攻平和観音像や世田谷山観音寺での式典などを地元と自衛隊が協力して行っていることを紹介しました。しかし、これらの活動への支持は元将校たちが高齢になるにつれて減少していきます。若い世代の参加者たちは、特攻隊戦没者慰霊顕彰会を設立し、明確な「特攻」の犠牲に焦点を当てた活動を復活させ、拡大させていきます。これにより会員数は3,500人に増加しました。また、日本政府が1990年代に日本が侵略を認めたとき、「特攻」を追悼する団体からの反発を引き起こしました。しかし、2014年には、会員数は2,000人を下回っていきます。

発表では、この過程で自己犠牲と他者への献身を強調する「特攻精神」に焦点が移っていったこと、それと同時に、元自衛官の参加を奨励されるとともに、「特攻」の犠牲者と犠牲の精神に感情的なつながりを育むことに重点が置かれていくという理解が示されました。また、発表によれば、以上の動きを象徴するのが現在の知覧特攻平和会館であり、ここを訪れる人々は、いわば自分を方向づける物語のかたちで「特攻」を想起することができることが指摘されました。また、顕彰会の活動は、スポーツ合宿、企業ワークショップ、セミナーなどに及び、「特攻」との継続的なつながりを維持するために、その歴史的な事実あるいは出来事としてよりも「特攻」と現代のつながりのほうに力点を置いている点が強調されました。発表では、こうした団体、その活動、あるいは展示などを通じて、「特攻精神」が時代を超えて現代にまで継承されているということが明らかにされました。

質疑応答では、特攻隊員に国家のもとでの自己犠牲を促すことを可能にした精神性や歴史的文脈に関心が集まりました。Dr.角田は、日本文化における武士道精神が密接に関わっていることを指摘しました。また、今日の「特攻」に対する日本社会の評価や、アジアの複雑な歴史の中で日本の戦没者を追悼することの意味、また、記念式典における自衛隊の役割や、特攻の犠牲から学ぶべき歴史的教訓などについても議論が及びました。Dr.角田はこれらの質問に丁寧に応答し、非常に活発な討論となりました。

75th報告写真
発表を行うDr.角田燎

過去のAJI最前線セミナーについては以下のリンクからご覧いただけます。
https://www.ritsumei.ac.jp/research/aji/young_researcher/seminar/archive/