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2025.04.10
【レポート】第77回AJI研究最前線セミナー開催!Dr.中原雅人 “The Postwar History of the Self-Defense Forces and Disaster Relief: Focusing on the Changing Processes of Perception”
2025年3月11日(火)、AJI研究最前線セミナーをオンラインで開催しました。今回は、Dr.中原雅人(神戸大学 大学院国際協力研究科 助教)より、“The Postwar History of the Self-Defense Forces and Disaster Relief: Focusing on the Changing Processes of Perception”と題して、英語でご発表いただきました。
Dr.中原は、それまで社会的に敬遠されてきた自衛隊が、2018年には転じて英雄的に扱われるようになり、裁判所や裁判官、あるいは、警察、教師よりも信頼されるようになった歴史的な経緯と要因に関する研究について詳しく紹介しました。Dr.中原の発表では、自衛隊が国防のために創設されたにもかかわらず、災害救援活動において最も効果的な役割を果たし、それによって自衛隊の人気が高まったという議論がなされました。1959年の伊勢湾台風後、自衛隊は創設以来最大規模の災害派遣に参加し、民間からの厚い支持を得たという歴史的背景があります。また、その後、1963年の豪雪による災害に際しては、自衛隊の対応がテレビで大きく報道され、国民の災害意識が高まり、自衛隊を支援する団体が設立されました。
しかし、同時に、当時の日本は過去の軍事侵攻に対する反省から、自衛隊の軍事的役割に強く反対する反自衛隊運動の高まりも起こりました。こうした風潮に対して、阿部孝次郎や松下幸之助ら財界人は、自衛官の活動を激励し、促進するために自衛隊支援組織を形成しました。それにもかかわらず、1970年代に入ると、革新自治体が登場し、自衛隊を違憲と判断して自衛隊員の採用を阻止し、東京都や神戸市は自衛隊との防災訓練への協力すら拒否するという状況になります。その帰結として、1995年の阪神・淡路大震災では救援活動がうまくいかず、その反省から、自治体と自衛隊との連携強化に対する注目が再び高まりました。これが転機となり、自衛隊が地域社会に溶け込み始め、やがて「自衛隊ブーム」につながっていきます。全国各地で災害派遣訓練が行われ、最終的には広島、さらには反軍思想の強かった沖縄でも、自衛隊は地域の祭りに参加し、地域社会に溶け込んでいきました。
発表後の質疑応答では、昨今の自衛隊の国際的な平和維持活動に対する国民の認識、募集隊員数の少なさについての質問や、あるいは、災害時に民間人を支援し、地域の行事に参加するというイメージで自衛隊に入隊した日本の若者は、いざというときに国を守るために命をかける覚悟があるのか、また、東アジア地域で国際的な緊張が高まっている中で、日本政府は自衛隊に関する議論に宙力すべきではないかという質問が挙がりました。Dr.中原は聴衆の質問に丁寧に応答し、参加者との間で重要なとぷっくをめぐって活発な議論が共有されました。
発表を行うDr.中原雅人
過去のAJI最前線セミナーについては以下のリンクからご覧いただけます。
https://www.ritsumei.ac.jp/research/aji/young_researcher/seminar/archive/