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2025.04.15

【Report】 The 78th AJI Frontier Seminar was held! Dr. Yusy Widarahesty presented the “Precarious Cycle of Migrant Workers’ Reproductive Justice: The Case of Indonesian Migrant Workers in Japan.”

2025年4月8日(火)、第78回AJI研究最前線セミナーがオンラインで開催されました。今回 は、Dr. Yusy Widarahesty(立命館アジア・日本研究機構 専門研究員)より“Precarious Cycle of Migrant Workers’ Reproductive Justice: The Case of Indonesian Migrant Workers in Japan”というタイトルのもとで研究発表をしていただきました。

はじめに、発表では日本がインドネシア、ベトナム、フィリピンなどの東南アジア諸国か ら多くの移民労働力を受け入れており、1993年に技能実習制度(TITP)を創設して以来、 その制度が様々な要請や批判を受ける中で変更を重ねてきたという背景が示されました。 加えて、日本は特定の産業分野において技能実習なしに外国人専門労働者の就労を許可す る「特定技能」制度も創設した背景についても説明がなされました。

発表では、移民労働者たちは日本が権利を尊重する国家と考えている一方で、アメリカ政 府が日本政府に対して、送出機関や雇用者が実習生を搾取していることを批判していると いう問題を出発点としつつ、外国人労働者のリプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関す る権利)についてのフィールドワークに基づく調査結果が示されました。Dr. Yusyの調査は 、インドネシア人技能実習生の経験を中心に、出発前の準備段階および実習中における、 政府、送出機関、実習生、監理団体のすべての側面を対象として質的アプローチを行うも のです。

日本では、移民の女性たちも妊娠に関する差別や解雇から保護され、日本人と同様に産休 や育児休業、給付を受ける権利があるとされています。インドネシア政府も実習中に妊娠 した女性の権利を保護する姿勢を示しています。しかし、現実に目を向けると、多くの違 反が確認され、特に技能実習生や特定技能労働者に対する人権侵害が露わになります。例 えば、技能実習生の多くは、送出機関から妊娠を厳しく禁じられており、妊娠した場合は プログラムから除外され、本国に送還されるという事例報告があります。残念ながら、こ うした違法行為に対して政府は、当事者が訴えない限り対処しません。Dr. Yusyの調査チー ムは、こうした事態になる要因として、厳しい規律や準軍事的な訓練によって参加者が声 を上げにくい状況が生み出されているという実態を明らかにしました。結果として、妊婦 に対する違法な対応が再生産される構造が強化されています。彼女は女性の権利を保護す る新たな制度の構築が必要であると主張します。

発表後のQ&Aでは、新制度の運用方法、インドネシア人の母親とその子どもが日本で生活 するのと帰国するのではどちらが望ましいか、生まれてくる子どもの権利はどのように考 慮されるべきか、などの質問が参加者から投げかけられました。Dr. Yusyはこれらの質問に 真摯に答え、参加者との間で移民労働者の送出・受入について権利保護の観点を軸に考え ることの重要性を共有しました。

78th photo
発表を行うDr. Yusy Widarahesty

過去のAJI最前線セミナーについては以下のリンクからご覧いただけます。
https://www.ritsumei.ac.jp/research/aji/young_researcher/seminar/archive/