NEWS

2026.03.16

【レポート】第87回AJI研究最前線セミナー開催! Dr.堀田あゆみ「モンゴル遊牧民 の物質文化と情報戦」

2026年3月10日、第87回AJI研究最前線セミナーを開催しました。今回は、堀田あゆみ先生(立命館大学OIC総合研究機構サステナビリティ学研究センター 客員研究員)が「モンゴル遊牧民の物質文化と情報戦」と題する発表を行いました。

堀田先生は、モンゴル遊牧民の物質文化や情報文化に関する人類学を専門としており、実際に現地の遊牧民とともにゲルで暮らすことで、彼らの生活を形づくるモノがどのように捉えられているかを明らかにしようとしています。まず発表の冒頭で堀田先生は、これまでのモンゴル遊牧民の物質文化に関して、移動生活の性質上、彼らは少数の物で暮らすことに満足しているという言説が支配的であったことを指摘しました。しかし、堀田先生は、モンゴル留学の経験から、彼らが様々な物品に対して強い関心や執着を示したことに注目しました。この経験を出発点に、多くの遊牧民が生活するアルハンガイ県の一家(エンフバト家)での住み込み調査を行うことで、ゲルには1,500点あまりの様々な物が存在すること、そして、家族は一つ一つの物についてのエピソードを細かく記憶していることを突き止めました。

さらに興味深いことに、そうしたエピソードからは、いつ・どこで・いくらで購入したかだけでなく、他家からのもらい物や他家の物も多く含まれていることが分かりました。堀田先生の研究によれば、特に物のやり取りが(アルハンガイ県の)遊牧民の物質文化を理解するうえで重要です。なぜなら、物が世帯間を移動することがごく一般的に行われ、また、それを前提としたコミュニケーション戦略(情報戦)が日常的に行われているからです。堀田先生は、現地調査から遊牧民の人びとが誰に何を融通するか/しないかということに極めて戦略的であることを明らかにました。このように、モノのやり取りが一般的な遊牧社会では、何かを所持した瞬間に潜在的な交渉プロセスに入ったとみなされます。発表から、将来的な物のやり取りを見据えて、「物の情報」をやり取りする遊牧民の生活世界が浮き彫りになりました。

発表後の質疑応答では、参加者から物のやり取りにおける得手・不得手の条件、他の地域における遊牧民の物質文化、所有者側だけでなく要求者側にとっての情報戦のあり方など、多くの質問が投げかけられました。堀田先生は一つ一つの質問に対して応答し、活発な議論となりました。

発表を行うDr.堀田あゆみ先生
発表を行うDr.堀田あゆみ先生

過去のAJI最前線セミナーについては以下のリンクからご覧いただけます。
https://www.ritsumei.ac.jp/research/aji/young_researcher/seminar/archive/