NEWS

2026.06.05

【レポート】第89回AJI研究最前線セミナーDr.福山未智「自作派コスプレイヤーの当事者研究——13年間の遊びの継続と衣装制作における技術習得」

5月12日(月)、第89回AJI研究最前線セミナーがオンラインで行われました。今回は、福山未智先生(立命館大学OIC総合研究機構 研究教員助教)が「自作派コスプレイヤーの当事者研究——13年間の遊びの継続と衣装制作における技術習得」と題する発表を行いました。

これは、発表者自身を研究対象とした当事者研究であり、2025年度に提出された博士論文の第4章・第6章にもとづくものです。13年間にわたる201回のコスプレ経験データと約5万枚の写真を分析資料として、オートエスノグラフィーとTEM(複線径路等至性モデリング)を組み合わせたAuto-TEMを構築しました。そして、フランスの哲学者ジルベール・シモンドンの個体化論を援用してコスプレ文化の全体像と遊びを継続させる源泉を検討しました。

分析によれば、福山先生のコスプレ経験は、「三次元コスプレイヤー期」から「解放期」まで、前史を含めると7つの時期に区分され、コスプレをする目的が「自己満足」「他者評価」「道具の出来栄え」という三つの次元のなかで時期によって変化し続けていました。そして、コスプレの魅力とは、活動の中で立ち上がった目標、つまり不均衡を解消して新たな技術を身に纏ったコスプレイヤーとなる、という前–個体化から個体化へ至るプロセス自体にあると述べられました。また、13年間で自作した56着の衣装写真を手がかりとした分析により、大学の授業で習得した洋裁の基礎技術を出発点として、二次元キャラクターの立体化という独自の課題に直面しながら、試行錯誤・失敗・コミュニティでの実践知共有を通じて独自の技術体系を構築していく過程が明らかになりました。

発表後には活発な質疑応答が行われました。一事例にもとづく知見の一般化可能性や、コスプレイヤーを「消費者」と「生産者」のいずれの観点から捉えうるかといった点に議論が及び、福山先生は一つ一つの問いに丁寧に応じました。当事者研究という方法の射程と可能性をあらためて浮かび上がらせる、示唆に富む議論となりました。

発表を行うDr.福山未智
発表を行うDr.福山未智

過去のAJI最前線セミナーについては以下のリンクからご覧いただけます。
https://www.ritsumei.ac.jp/research/aji/young_researcher/seminar/archive/