所長室から

新しいスタイルの学術誌が出ました

 去る11月27日に、本研究所から新しい英文の学術誌が創刊されました。Asia-Japan Research Academic Bulletin です。日本語では『アジア・日本研究アカデミックブレティン』と呼んでいます。
Academic_Bulletin_ENG
 いわゆる『AJI Journal』が創刊されたのが7月末でしたから、4か月後に、さらにもう一誌、創刊したことになります。ペースとしては、かなり早いかもしれません。  
 7月に刊行した『AJI Journal』は年1回の刊行です。締切も年1回です。さらにプリント版もありますから、オンライン・ジャーナルといっても、かなり通常のプリント版のジャーナルに似ています。
 journal_ENG
 ところが、今度のブレティンは、オンラインジャーナルの新しい形の「随時掲載方式」です。これは、査読が終わり次第、オンラインで刊行していくというやりかたです。  

 随時掲載ですから、Vol.1を1年間オープンにしていると、その間に順にオンライン刊行された論文や研究ノートが、Vol.1に掲載されたことになります。掲載が随時ということは、締切も特定の日である必要がありません。というわけで、投稿も随時になりました。  

 ブレティンそのものには、特定に日付が付いていませんので、刊行日はそれぞれの論文のフッターに掲載します。こんな感じです。
Received on August 29, 2019; accepted after peer reviews on October 30, 2019;
published online: November 27, 2019.

 新しい形の「随時掲載方式」、と上に書きましたが、世界の学術雑誌のトレンドとしては、最近始まった新しい形というわけではなく、かなり前から広まっている方式のようです。といっても、特に広まっているのは自然科学系の分野のようで、私自身は人文・社会科学が専門ですから、わりあい最近までそのような刊行の方式になじみはありませんでした。  

 自然科学の分野では、新しい発見を一刻も早く公刊しないと先を越されてしまうこともありますから、随時掲載のほうに進むのは当然かもしれません。年に1回しか出ない雑誌に掲載されるのでは、世界的な競争のテンポについていけないということなのでしょう。  

 では、なぜ、今回アジア・日本研究所がそのような方式を採用したのかというと、1つは研究所が学際的な道を歩んでいて、いろいろな分野の要望やスタイルに応える必要があるということ、もう1つは、IT革命の時代ですから、人文・社会科学でもこういう形が徐々にトレンドになりつつあるということです。
 
 利点はいくつも、あります。人・社系では、自然科学のような時間との競争はないと言っても、論文を書く皆さまは、いろいろなスケジュールに追われています。特に若手の皆さんは、業績を作る際にけっこう時間の制約だったり、時間との競争だったりがあります。何かの理由で急いでいる時は、ちゃんとした査読をした上で、随時掲載してくれる雑誌はありがたいのではないでしょうか。  

 さっき、「なじみがありませんでした」と書きましたが、随時掲載方式の「初心者」としてやり方がわからなかったのが、ページ番号の振り方でした。紙に印刷雑誌は、学術誌であれ一般誌であれ、最初から終わりまで通し番号が振ってあります。では、随時掲載方式で、それぞれの論文の間に順番がない時に(それぞれのオンライン刊行の時系列の順番はありますが、それは内容上の順番ではありませんので)、ページをどうするのでしょうか。  
 いろいろ調べた結果、いくつか、やり方があることがわかりました。『アジア・日本研究アカデミックブレティン』が採ったのは、それぞれの論文や研究ノートに「コンテント・ナンバー」を振り、それぞれにp.1からページを割り当てる方式です。「コンテント」の複数が「コンテンツ」で、目次は英語で「テーブル・オブ・コンテンツ」といいますが、そのコンテンツの1個1個に識別番号を付けるわけです。  

 Asia-Japan Research Academic Bulletin を見ていただけばわかりますが、目次の最初に載っている論文は、Vol.1, 11 となっています。この「11」がコンテント・ナンバーです。  

 少し長く裏話を書きました。たぶん、自然科学系の研究者にとっては当たり前の話でも、人文・社会科学系の方には、けっこう新しい話なのではないでしょうか。情報共有と思って、あえて、随時掲載方式の「初心者」であることを隠さず、打ち明け話をしました。  

投稿も随時受け付けておりますので、何か発表したいテーマをお持ちの方は、是非ご投稿ください。いつでもウェウカムです!

(2019.12.20記)