NEWS

2025.02.28

【レポート】 第76回AJI研究最前線セミナー開催!グエン・ティ・トゥ・ヒエン:“Farm Mechanization and Non-farm Employment in Rural Central Vietnam.”

2025年2月18日、第76回AJI研究最前線セミナーを開催しました。今回は、グエン・ティ・トゥ・ヒエン氏(立命館大学経済学研究科博士後期課程)に“Farm Mechanization and Non-farm Employment in Rural Central Vietnam”と題して、ベトナムにおける農業と政策の現状について興味深い研究報告をしていただきました。

まず、グエン氏は、急速な都市化と工業化、農村部の賃金上昇、集約型の農業の広がりによって、農業労働力が不足している農村部において、機械や道具を使った農業機械化がますます活発化している現状について説明しました。加えて、ザンビア、中国、コートジボワールなどにおえ、機械化を導入することで季節的な労働力不足を補い、農家が規模の経済を達成するために畑を拡大することができた事例についても言及されました。農村世帯では、非農業部門の労働が所得を補完することで貧困を緩和し、世帯の生活水準を改善する重要な方策となりつつあります。それと同時に、農業機械化は、非農業雇用へと労働者の機会を開き、世帯収入を増加させる効果を持ちます。また、余剰収入は農場経営に投資することができ、それによって家計がさらに改善することが見込まれます。

今日のベトナムでは、トラクターやコンバインの使用が増加し、特に農地の細分化が進んでいない3つの主要なデルタ地帯では、より効率的な生産が農家の収入を増加させています。それとともに、ベトナム政府は農家の設備購入を支援する政策を開始しました。しかし、申請手続きが煩雑なため普及していないのが現状であり、ほとんどの農家はコストが高いことや規模が小さいことから機械のレンタルを選択しています。

グエン氏は、非農業雇用と農業機械化の関係について多角的に調査した結果、機械化への支出が多いほど、非農業活動に従事する世帯員の数と正の相関があり、さらに、世帯の非農業雇用が農業の機械化への支出に正の影響を与えると結論づけました。

グエン氏は、この調査結果に基づき、小規模農家に適した機械を開発し、教育水準の低い農家が使いやすいよう、メーカーに補助金を支給することを提唱しました。また、ソーシャルメディアを通じて機械化を促進することが必要であることも議論されました。加えて、彼女は、土地の統合によって、農業機械化を進め、より効率的な農村地域を創出できることを強調し、機械への投資を奨励するために農民の収入源を多様化する戦略を導入することも提案しました。最後に、グエン氏は、女性の農業機械技術と非農業雇用へのアクセスを改善することで、世帯の福祉と生産パフォーマンスを向上させ、ジェンダー不平等を減らすことができるという点についても強調しました。

質疑応答では、ベトナムの農村について、農村ではどのような非農作業があるのか、政府は農村開発にどれだけ力を入れているのか、などの質問が参加者から投げかけられました。グエン氏は、農家は工場だけでなく、他の大規模な農場でも雇用されている可能性を指摘しました。グエン氏は一つ一つの質問に丁寧に答え、参加者との間で活発な議論が共有されました。

76th報告写真
発表を行うグエン・ティ・トゥ・ヒエン

過去のAJI最前線セミナーについては以下のリンクからご覧いただけます。
https://www.ritsumei.ac.jp/research/aji/young_researcher/seminar/archive/