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2025.12.04
【Report】第83回AJI研究最前線セミナー開催!Dr. BINTI ABD KHALID Nur Farhana presented “Negotiating the Trans-Pacific Partnership Agreement: A Comparative Study Between Malaysia, Singapore, and Vietnam.”
第83回 AJIフロンティア・セミナーが、2025年11月11日火曜日にオンラインで開催されました。今回は、Dr.ヌル・ファルハナ・ビンティ・アブド・ハリド(Nur Farhana Binti Abd Khalid; 立命館アジア・日本研究機構 専門研究員)が、“Negotiating the Trans-Pacific Partnership Agreement: A Comparative Study Between Malaysia, Singapore, and Vietnam”と題して講演を行いました。
まず、彼女は、マレーシア、シンガポール、ベトナムについて、グローバルな大国からの影響を非常に受けやすい小規模で開かれた経済システムを持つことを指摘しました。これらの国々はそれぞれ国内に様々な問題を抱えながらも、この状況に適応する姿勢を示してきました。その上で彼女は、マレーシアが実践的アプローチを採用品らが不安定であり、シンガポールが積極的で適応性があり、ベトナムが熱心に適応しながら柔軟であるというかたちでそれぞれの経済的なアプローチと帰結を類型化し、各国がTPP(環太平洋パートナーシップ協定)やCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)の交渉において、なぜ、そしてどのように異なるアプローチを採用したのか、という問いを投げかけました。
彼女の研究手法は、政府関係者へのインタビューや文献・政府資料の分析を含む、質的な比較事例研究を採用しています。彼女は、3カ国の異なる交渉でのアプローチを理解するために、新古典的現実主義と国際関係論を組み合わせた理論的枠組みを用いました。シンガポールについては、国際貿易への経済的依存とTPPへの戦略的アプローチが、市場アクセスの拡大とデジタル貿易のハブとしての地位強化という同国の役割が強調されました。加えて、Dr.ビンティ・アブド・ハリドは、シンガポールがマレーシアやベトナムと比較して改革の必要性が最小限であったため、協定を早期に批准できた点を指摘しました。ベトナムについては、TPPを通じて国内改革を促進し、質の高い海外直接投資を誘致するという二重の野心を持っている一方で、中国との関係のバランスも重視していることが示されました。
Q&Aでは、参加者とともにシンガポールの経済戦略について活発な議論が交わされ、天然資源の不足と小規模な国土から、成長と貿易の開放性に焦点を当てている点が強調されました。Dr.ビンティ・アブド・ハリドは、シンガポールがTPPの強力な支持者であり、かつ、貿易依存型アプローチを持続させていることも指摘しました。また、ベトナムのエリート層による社会改革に与える同枠組の影響や、TPPから生じる潜在的な対立についての質問に対して、彼女は、支配的なエリート層は優遇された機会から恩恵を受ける一方で、中国から自立的に経済主権を高めることによって、中国の経済危機に対する脆弱性を軽減することができると応答しました。さらに、ベトナムのTPP交渉での成功は、社会主義国家であるにもかかわらず、信頼できる国際的なアクターとしての対外的な存在感が高まっていることを示していることも指摘されました。
発表を行うDr.ビンティ・アブド・ハリド
過去のAJI最前線セミナーについては以下のリンクからご覧いただけます。
https://www.ritsumei.ac.jp/research/aji/young_researcher/seminar/archive/