Ritsumeikan University School of Law: Special Interview Series
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商社勤務、介護離職を経て法科大学院へ。
修了後5年目、最後のチャンスに
答案の書き方を鍛え直して合格。中川 雅貴さん
青山学院大学経営学部出身
未修者コース修了(2013年度)
2018年司法試験合格
1科目に4時間を予習にかけて
成績もトップクラスへ。
大学卒業後、勤務していた総合商社で国際法務系の弁護士と接し、興味を持ったという中川雅貴さん。その後、家族の介護のために仕事をやめたことがきっかけになり、法科大学院に入学。法律を学んだことがまったくなかったため、「どんな内容なんだろう?」と合格者ガイダンスの模擬授業にも参加した。「難しいけれど、事案ごとにドラマがあって面白そうだと感じました」。
入学後の授業は、すべてが新鮮で知的好奇心が刺激されると同時に、内容の濃さに驚いたという。先生からの質問に表面的な知識で答えると「どういう意味でそれを言ってるの?」と、より深くつっこんだ質問が来る。「法律を勉強するとはこういうことなのか」。授業範囲の基本概念や判例などをあらかじめ頭に入れて授業に臨まないととても追いつけないと考え「1科目4時間は予習していました。毎日朝7時から夜12時まで、授業以外の時間はずっと自習室にいましたね」。中川さんの予習法は、まずテキストを斜め読みして概要をつかみ、徐々に細かい部分を詰めていくというもの。「人の5倍は読んでいたと思います。奨励奨学金を受給するという目標も、モチベーションにつながりました」。成績もトップクラスになっていった。
しかし初めての司法試験は、「合格する気がしなかった」と話す中川さん。「成績が良いという慢心もあり、大学院の授業が終わると気が緩んでしまったんです」。修了後は名古屋の実家で一人勉強する日々。しかし、勉強が生活の中心ではなく、仕事やプライベートに逃げてしまっていたと振り返る。短答式試験は毎年合格するものの、論文式試験の点数が伸びず、最終合格にたどりつけない。それでも司法試験への気持ちは維持していた。「負けたくない一心です。奨学金までもらって合格できずに終わるのは申し訳ないですから」。
「こんなに簡単に書けるものだったのか」
弁護士ゼミで答案の書き方を叩き込まれた。
最後のチャンスとなる5回目の受験が半年後に迫った頃、勉強に集中できる環境を作るため、名古屋での生活をすべて捨てて再び京都へ。「それまで避けてきた答案の書き方を一から学び直す決意でした」。エクステンションセンターの弁護士ゼミを受講し、現役弁護士の先生に何度も答案を見てもらった。「なぜこれを書かないの?」「この文とこの文はどうつながるの?接続詞は必要?」などの詳細な指摘を受けながら、答案の型にはめこむ思考法を身につけていったのだ。自分で書いた答案と、添削後の答案の明らかなズレ。そこを正していくことによって「こんなに簡単に書けるものだったのか」「これが合格できる答案だったのか」ということが、はっきりわかったという。これまでとは違う大きな自信を持っての受験、そして合格。「事務室の方にも感謝しています。修了後も5年間サポートして下さり、あたたかい気持ちをいつも感じていました」。
合格の決め手は「己を知ること」と中川さん。「自分の今の実力をシビアに知り、弱点を洗い出すことが大切です。弁護士の先生には、『5年目でこの程度か』と思われることを覚悟で、ありのままの答案を提出していました。恥ずかしいからと時間をかけて作りこんだ答案では弱点が見つけられません。そのことに気づき、実行できる人が合格できるのだと思います」。
中川さんは現在38歳。弁護士にしかできない新しい事業を興すというプランもすでに描いている。「社会人の経験、介護の経験、司法試験の5年間、すべてが糧になればいいなと思っています」。
エクステンションセンター
立命館大学には正課外で様々な資格取得をサポートするエクステンションセンターがあり、10名〜20名の弁護士が担当する弁護士ゼミや、模試の学内実施、大手事務所訪問会など多様なサポートを行っています。