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松村 耕平 先生(情報理工学部)

2022.11.01


『実践日々のアナキズム:世界に抗う土着の秩序の作り方』
ジェームズ・C.スコット [著] ; 清水展, 日下渉, 中溝和弥訳(岩波書店、2017)
『タクティカル・アーバニズム:小さなアクションから都市を大きく変える』
泉山塁威 [ほか] 編著 ; マイク・ライドン [ほか] 著(学芸出版社、2021)
『ストリートファイト:人間の街路を取り戻したニューヨーク市交通局長の闘い』
ジャネット・サディク=カーン, セス・ソロモノウ著 ; 石田祐也, 関谷進吾, 三浦詩乃訳(学芸出版社、2020)

先端総合学術研究科の小川さやか先生の講演で「アナキズム準備体操」という話を聞きました。【実践日々のアナキズム】という本で提唱されている、日々の生活の中で、自分の頭で、ルールを判断するための訓練です。車通りのない道で、人々が信号機を律儀に守るのに対して、アナキズムの実践として、信号を無視して渡ってしまう。ただし、いつも無視をするのではなく、危険を判断できない子どもがいるときは渡らない。この本は、世の中のルールに疑いを持ち、自らの手で秩序を生み出すことが、より良く生きるためには必要じゃない?ということを書いています。

この本を読んで連想したのが【タクティカルアーバニズム】です。タクティカルアーバニズムとは、これまでのまちづくりがビジョン→設計→整備とすすめられるところ、まず小さなアクションから始めて長期的なまちづくりを進めてようとする戦略です。この端的な例として、街に勝手に看板を設置したり(違法)、勝手に横断歩道を書いたり(違法)、ビール工場の廃屋を勝手に掃除してビアガーデンを作ったり(違法)する「ゲリラ的」な活動があります。この(過激な?)ゲリラ活動が行政を動かし、街を変えていくわけです。なんだか「アナキズム準備体操」的だと思いませんか。

3冊めの【ストリートファイト】はタクティカルアーバニズムを行政が実践した例を紹介しています。ニューヨークのタイムズスクエアには歩行者や自転車に溢れているのに、なぜ自動車道路がそのほとんどを専有しているのか?歩行者や自転車が使うべきじゃないか?その思いが不可能だと思われていた人間のための街路づくりにつながっていく、ニューヨーク市の元交通局長の戦いの記録です。私も彼女が来日したときに会う機会がありましたがアツい人でした!

私はいろいろな分野の本を思いつくままにパラパラとよむことがあります。ときどき、全然関係ないと思われていた本たちがつながって、パァッと思考が開ける体験をします。この体験は何事にも代えがたいものです。その瞬間のために「積ん読」と「読んどく」を繰り返しています。

『実践日々のアナキズム:世界に抗う土着の秩序の作り方』

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『タクティカル・アーバニズム:小さなアクションから都市を大きく変える』

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『ストリートファイト:人間の街路を取り戻したニューヨーク市交通局長の闘い』

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『遊びと人間』
ロジェ・カイヨワ [著] ; 多田道太郎, 塚崎幹夫訳(講談社、1990)
『ホモ・ルーデンス』
ヨハン・ホイジンガ著 ; 高橋英夫訳(中公公論社、1973)
『ハーフリアル』
イェスパー・ユール著 ; 松永伸司訳(ニューズゲームズオーダー、2016)

とにかく遊んで暮らしたい。わたしたちの夢のひとつかもしれません。ところで「遊び」ってなんなんでしょうね。そういった疑問に答えてくれるかもしれない3冊を紹介します。遊びに関する古典を二つ挙げよと問われれば、多くの人がホイジンガの【ホモ・ルーデンス】とカイヨワの【遊びと人間】を選ぶと思います。まずは、それくらいに有名な2冊を紹介します。

わたしたち人間の本質はなんであるのか、という問いに対して様々な人が答えようとしてきています。リンネはホモ・サピエンス(知恵ある人)、カントはホモ・フェノメノン(現象としての人)とホモ・ヌーメノン(本体としての人)の二つの属性、ベルクソンはホモ・ファベル(工作する人)と、それぞれの視点から特徴化しています。これに対して、ホイジンガはホモ・ルーデンス(遊ぶ人)という観点から、わたしたち人間の文化の根源は遊びにあるんだ、遊びこそが人間の活動の本質なんだと主張します。あらゆる文化の中心にある要素としての遊びを捉えています。1938年に発表された古い本ですが、わたしたちがわたしたち自身を考えるときに遊びをどのように位置付けることができるのか、を学ぶことができると思います。

わたしたちは何を遊びと呼んでいるのでしょうか、遊びやゲームを分類したことで知られるのがカイヨワの【遊びと人間】です。この本の中で紹介される、アゴン(競争)、アレア(偶然の遊び)、ミミクリ(真似やごっこ遊び)、イリンクス(めまい)の4つの分類は様々な批判はあるものの、遊びやゲームの研究において、いまもなお(本当ですよ。最近のゲームに関する論文でも引用されています)言及がされています。

ところで、わたしたちが本当に素晴らしいものにであったとき、それを他の人から秘密にしておきたいと思うことはありませんか。私にはあります。そして、私はこの本、【ハーフリアル】を秘密にしておきたいです。ユールの博士論文として書かれたこの本は、遊び(というよりゲーム)、特にビデオゲームとは何か、という疑問に真正面から向き合った傑作です。先に挙げたホイジンガやカイヨワを含めた7つの立場から古典的なゲームの定義について論じていたかと思えば、ゲームのルールとプレイヤーの認知についての議論などから、本のタイトルであるハーフリアル(半分現実)というビデオゲームの本質に迫っていきます。いや、ほんと、これは読んだ方がいいよ。

『遊びと人間』

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『ホモ・ルーデンス』

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『ハーフリアル』

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