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吉田 満梨 先生(経営学部)

 

テーマ

マーケティングとは、モノが売れるようにするための仕組みづくりだ。いい製品ができただけでは、モノは売れない。メーカーの作った製品の価値を買い手が認めることによって初めて、消費が起こり、モノは価値を持った商品となる。また、その過程でメーカーは、消費者・競争相手・流通業者・供給業者といった様々な人々と関わりを持たねばならない。つまり、マーケティングとは、市場という場で出会う、異質で多様な他者を結びつけ、新たな価値を生み出すための、「見えない糸」なのである。
ただし他者との間に、お互いにとって価値ある何かを生み出そうとする取り組みは、なかなか思い通りにはいかない。それは、恋愛や人間関係を考えてみてもわかるだろう。相手のことを理解しながら、自分の良さを伝え、対話を通じて、新しい関係を創りだしていかねばならない。ここでは、そうした問題を考えるために役立ついくつかの文献を取り上げた。企業の活動だけではなくて、自分と周りの人との関係にも当てはめて、マーケティングの問題を考えてみてほしい。


『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』
岩崎夏海著 (ダイヤモンド社、2009年)

そもそも、"マネジメント"とは何か?について、知りたい人へ。高校野球のマネージャーになった主人公のみなみが、組織の経営者「マネージャー」を自分のことだと勘違いし、ある日、P・F・ドラッカーの著書『マネジメント』と出会う。そして、本に書いてある通りに、マネジメントやマーケティングを進めていった結果、弱小野球部がみるみる成長していく物語。小説でありながら、マネジメントのエッセンスを散りばめ、経営学やマーケティングが企業だけに役立つものではないことを教えてくれる良書。

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『ゼミナール マーケティング入門』
石井淳蔵 [ほか] 著(日本経済新聞社、2004年)

マーケティングの理論について、体系的に学びたい人へ。マーケティング・マネジメント(4P)から、組織、市場理解、流通、顧客との関係性、ブランドの問題まで、幅広い内容を網羅した、マーケティング論の優れたテキストの1つ。「消費者の言うことを素直に聞く一方で、消費者の言うことをそのままには信じない」つまり、「適応しつつ自立し、自立しつつ適応する」という特徴を持つマーケティング実践を、どのようにマネジメントしていけばよいのか。こうしたマーケティングの難しさと面白さについて、体系的に学ぶことができる。

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『売れる仕掛けはこうしてつくる : 成功企業のマーケティング』
栗木契, 余田拓郎, 清水信年編(日本経済新聞社、2006年)

マーケティングの理論について、実際の企業事例をもとに学びたい人へ。マーケティングとは、何をすることなのか?マーケティングの働きを活性化するために、企業はどのようなマネジメントを行うべきか?本書では、成功企業の実際の事例を見ながら、生きたマーケティングの知識を学んでいくことができる。本書の部構成は、『ゼミナール マーケティング入門』に対応しており、より網羅的に学習したい人には、参考書として『ゼミナール マーケティング入門』を併せて読むことを薦めたい。

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『マーケティングを学ぶ』
石井淳蔵著(ちくま新書 、2010年)

新書でありながら、企業にとって重要な市場志向の考え方やマネジメントについて、体系的に書かれたマーケティングのテキスト。「みずからの状況を創りだしつつ、その状況に適応する」という、マーケティングの本質を踏まえた上で、市場情報を組織内部に取り入れ、それを組織的活用し、生活者との間に関係を構築する方法について、先進的な企業の事例を通じて理解することができる。また、その際にブランド、営業、流通といった顧客接点をどのようにマネジメントすべきかについても理解できる。本書をポケットに入れて、マーケティングの現場に踏み出していって欲しい。

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『ビジネス三國志』
石井淳蔵 [ほか] 著(プレジデント社 、2009年)

企業間の競争は、時に新たな市場や知識を生み出すこともある。「相手を殲滅したり、市場を破壊したりするのは、競争の本質ではない。『質のいい競争』は、新しい着想や新しい市場を生み出し、そしてそれに必要な新しい資源を育てていく。その結果、そうした競争に遭遇した各社は、それぞれに次なる成長のための展開力を得て行く」(本書プロローグより)のである。本書では、ビール、ハンバーガー、モバイルPC、健康茶、ベビー用紙おむつ、家庭用ゲーム機という、6つの市場における大手3社の競争の歴史から、ダイナミックな戦略の論理を学ぶことができる。

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『マーケティング22の法則 : 売れるもマーケ当たるもマーケ』
アル・ライズ, ジャック・トラウト共著(東急エージェンシー出版部、1994年)

ある商品を提供するメーカーは1つだけではないため、企業は、競争相手の製品よりも自社製品が優れていると顧客に理解してもらわなければならない。こうした競争に対応するための戦略を考える上では、市場において自分をどのように位置づけるか、すなわち「ポジショニング」が大切になる。本書は、実務家としての著者たちの経験から、「マーケティングには22の法則が存在する」と言い切る、人気の高いビジネス書である。STP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)を中心とした、マーケティング戦略の定石について、数多くの具体的な事例と、わかりやすい言葉で学ぶことができる。

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『マーケティングの神話』
石井淳蔵著(岩波現代文庫 、2004年)

大学でマーケティング論を学んで、実際に企業で働き始める時、みなさんは現実のマーケティングの難しさを実感するだろう。消費者調査の結果見つかったニーズ対して、新製品を投入しても売れない、逆に思っても見なかった製品が評価される、といったことはビジネスの現場で日常的に起こる。本書は、マーケティング現場の問題に対する共感的な理解から、伝統的なマーケティングが仮定してきた、製品の「使用価値」や「消費者欲望」の存在が実は神話に過ぎないこと、そして、それらは逆に交換プロセスを通じて事後的に生み出されていくこと、を暴いていく。

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『複雑さを生きる : やわらかな制御』
安冨歩著(岩波書店、2006年)

マーケティングにとって重要なのは対話である。メーカーと消費者が対話を通じて、互いに学習をすることで、製品の価値やニーズが生まれていく。しかし現実には、一見してコミュニケーションが成立しているように見えて、実は一方の人間が学習を停止し、他者を操作しようとする関係に陥ってしまうことが多い。本書は、こうした関係を「ハラスメント」と呼び、それが現代社会のあらゆる問題の要因となっていることを指摘する。そして複雑系科学からの智恵を導きの糸としながら、互いに学習過程を作動させる「コミュニケーション」の重要性と「やわらかな制御」というアプローチを提案する。社会や組織の様々な問題、また人間関係で悩んでいる人にも、ぜひ読んで欲しい1冊。

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『ビジネス・インサイト : 創造の知とは何か』
石井淳蔵著(岩波新書、2009年)

市場環境や自社の資源をしっかり調査分析して、誰からも異論のない施策を考えるのは大切なことだが、過去の強みを活かして経営をしていった結果、企業や産業が先細りになっていくこともよくある。だから、だから時に新しいビジネスモデルを生み出して、「経営者は跳ばなければいけない」と著者は言う。 それでは過去の延長線上にはない新しいビジネスモデルを生み出すためには、何を手がかりとすべきなのか? それは、将来を見通す知、「ビジネスインサイト」である。本書では、具体的な事例を通じてビジネスインサイトの重要性と可能性について理解することができる。

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『言語ゲームが世界を創る : 人類学と科学』
中川敏著(世界思想社 、2009年)

本書は、わかりやすい「人類学」の入門書である。人類学では、世の中の常識や科学的真実、モノの意味や価値が、文化と呼ばれる規則の体系(言語ゲーム)によって異なることに注目する。一見マーケティングとは無関係に見えるが、商品の価値も、特定の規則の体系(言語ゲーム)の上で成立していることを忘れてはならない。野球選手が、試合の最中に野球のルール自体を疑うことがないように、日常生活をおくる私たちもまた、この規則の体系を当然のこととして受け入れる。しかし優れたマーケティング活動はしばしば、製品の評価基準や世の中の価値観といった、ゲームのルール自体を大きく変えていくことがある。無意識に自分らが縛られていたゲームを理解し、新たな発想を生み出すためのヒントを、本書は与えてくれるだろう。

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