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「第70回:女性研究者として生きていく覚悟を決めた本との出合い」中村 志保 先生(経営学部)

インタビュー:学生ライブラリースタッフ 森口、大西

2019.05.22

―中村先生の研究分野である「国際人的資源管理」について教えて下さい。

皆さんが、家電量販店へ行くと、“Made in China”と表記されている製品をよく見かけると思います。これは、その製品が海外で生産されていることを示しています。では、このように日本企業が海外でモノを生産したり、サービスを提供したりする際、何が問題になるでしょうか。

ヒトを中心に考えると、日本企業には国籍の異なる人たちが存在しています。本社の日本人が中国子会社へ派遣されることがあります。中国子会社の中国籍の社員がシンガポールへなど、国境を越えたヒトの移動も行われています。このような多国籍企業では、研修や評価、報酬は日本式でしょうか?それとも、欧米式や中国式でしょうか?優秀な現地人材を雇用し続けるためには何が必要なのでしょうか?このように、国境を超えたヒトのマネジメントについて学ぶことが「国際人的資源管理」です。

―中村先生が国際人的資源管理に興味を持ったきっかけを教えてください。

この分野に興味を持ったきっかけは、ニューヨーク州立大学に留学をしていた時に受講したバーバラ・ダーキン先生の国際人的資源管理の授業です。その先生には娘さんがいらっしゃるのですが、彼女も先生と一緒に授業に来られ、先生が講義をする教室で娘さんは本を読んでいるということが時々ありました。日本ではあまり見ないその場面が印象深く、また、とてもかっこいい先生だと私は感じました。先生との出会いの後、ある企業の国際人事がどのようになっているのかを調べてレポートを書いたのですが、これを通して私は日本企業の国際人的資源管理について具体的に考えるようになりました。

―ご自身の人生に影響を与えた本や、それに関するエピソードがありましたら教えてください。

日本に帰国した後、私は『国際人事』という石田英夫先生の本を見つけました。これを読んで、日本にもそのような研究分野があると初めて知り、私もダーキン先生のようなかっこいい先生になりたいと思うようになりました。しかし、当時の日本では30歳前には結婚するのが主流だったので、女性としては結婚・出産などを考えると、修士課程2年、博士課程3年と、最短でも大学院を修了するには5年かかるということを考えると、正直迷いもありました。そんな時期、私は本を読む中で『女が学者になる時』という本に出合いました。この本との出合いにより、大学院へ進学すると結婚や子育てが一般的な年齢より遅れたり、家庭と仕事の両立が大変になったりするかもしれないということの覚悟が出来きました。その後、私は大学院に進む決心をしました。

中村 志保 先生(経営学部)

―先生は学生時代、図書館をどのように利用されていましたか?

学生時代、図書館スタッフのアルバイトをしていたこともあり、図書館は縁のある場所です。私は留学をしたかったので、図書館では主にTOEFLの勉強をしていました。また、その後、大学院へ進んだ頃は、電子書籍もまだない時代だったので、院生の時は論文を書くために書庫をめぐることが多かったです。

―今の大学生に向けてメッセージをお願いします。

一つは、好きな本を読む時間があるのは学生時代しかないと思うので、学生のうちに色んなジャンルの本を読んで欲しいです。一方では、学術書を積極的に読んで欲しいと思います。今は、インターネットで簡単に情報を検索できる時代です。しかし、それらの情報の多くは、誰が書いたのか分からない証拠のないものです。学術書や公的機関のデータベースは、著名な方や専門家の方が書かれているものですので、その内容や情報に信頼性があります。図書館には、そのような、高価なそして、貴重なデータがたくさんあるので、これらを使わない手はないと思います。むしろ、そういうものが参考文献に並んでいないと、卒業論文として、あるいは学術論文として専門家よりは、価値がないと判断されます。だからこそ、参考文献に何を使うかは重要で、その際に図書館を活用して欲しいなと思います。時間をかけて参考文献を探すことで、論文に対して愛着も湧いてくるし、達成感や自信にも繋がると思います。

今回の対談で紹介した本

『女が学者になるとき』、倉沢愛子、1998年、草思社