2015年度 音楽関連団体共同寄附講座

エンタテインメント・ビジネス産業論

第10回 12月4日 映画と音楽~さまざまな角度から

野辺優子(のべ・ゆうこ)先生

  合資会社エスポルト コーディネーター

 

 プロフィール

 東京外国語大学大学院、フランス国立東洋言語文化学院(INALCO)でベトナムを中心としたアジア映画を研究。在学中はフランス、イタリアのサッカーやラグビー等のスポーツメディアの通訳や翻訳も経験。映画プロデュースの大学院助手を経て、2008年より公益財団法人ユニジャパンで東京国際映画祭の運営を経て、国際事業部人材育成グループで、経済産業省の若手映像クリエイターの短編映像制作事業を手がける。そのうちの1本『ふたつのウーテル』(田崎恵美監督)が日本映画短編として46年ぶりに2011年カンヌ国際映画祭のコンペティションに出品された。2013年は『隕石とインポテンツ』(佐々木想監督)が再び同プロジェクトからカンヌ国際映画祭に出品、3年間で2度入選の成果を上げる。同年、日本初世界志向の短編映画を総合的にプロデュースするプロジェクト『JAPAN SHORTS』を立ち上げ、第一弾として新進気鋭の6監督の作品を新宿バルト9を始め全国6都市のシネコンで上映を実施。また、日本、アジアの短編映画の専門家として世界のプログラマーとネットワークをいかしたコーディネーターとして、海外の映画作品のキュレーションも行っている。本年のカンヌ国際映画祭短編部門出品の日本作品『八芳園』のコーディネーションを担当。現在は長編商業作品の海外映画祭コーディネーターの他、複数の短編作品のプロジェクト・プロデューサーも手がける。

 最近はベトナムの舞台芸術の調査研究も行い、昨年は国際交流基金の派遣で現地調査を担当。現在東京芸術大学大学院で博士論文の執筆中。

 講義概要

 コーディネーターとして様々な映画プロジェクトに携わる合資会社エスポルトの野辺優子氏が、「映画と音楽~さまざまな角度から」と題して講義を行った。映画における音楽の重要性について、実例も交え話した。

 講義ではまず、映画における音楽の役割について話した。映画には主題歌やBGMのほか、効果音など様々な音楽が使用される。映画に関する音楽は、監督や音楽ディレクターが決める以外にもタイアップや楽曲を元に映画が作られるなど多様なケースがある。

映像が音楽によってどの程度変化するか、編集段階の音楽あり・無しの映像を見せ、解説した。映画は映像だけでなく付随する音楽で見る部分もある。映画音楽は、映画館のスピーカーから聴くことを前提に制作されており、音楽の力によって映像に迫力や心理描写を反映する。映像と同じ趣旨の音を付けると、映像の力が半減してしまうこともあり、映画祭出品など多くの人に見てもらうことを前提とした映画では、一定の映像レベルが担保されているため、音楽・音の質で評価されることも少なくない。

 また、映画ビジネスに携わる際には、音楽の権利が重視される。映画の上映やパッケージ化には、映像に関する権利とは別に音楽制作者にも権利が発生する。作品の買い付け時にも同様であるため、双方の権利をクリアにしなければならない。

 講義課題として、「映画にとって音楽は重要かどうか」を提示し、講義を終えた。受講生からは音楽によって映像の迫力や臨場感が増したなど、音楽の重要性を認識したという意見が多くあがった。

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