立命館大学
キャンパスマスタープラン策定に向けて
chapter1では、「立命館憲章」や「R2020」などのアカデミックプランを支えるキャンパスマスタープランとしての理念や役割について確認する。
また、立命館大学におけるキャンパスマスタープランの策定までの検討の流れやキャンパス整備の目標達成までの方策などについて共有する。
1.1キャンパスマスタープランの理念
立命館憲章に謳われている私立総合学園である教育・研究機関として世界と日本の平和的・民主的・持続的発展に貢献するため、その活動フィールドとして世界に誇れるキャンパスを創造することを目指したキャンパスマスタープランを策定する。
1.1.1キャンパスマスタープランの運用指針
キャンパスマスタープランは、アカデミックプランを支え、中長期的な視点で良好なキャンパス環境を実現するために、キャンパス計画のビジョンやフレームワークを定めるものであり、具体的なアクションプラン策定の際の指針として運用する。
なお、アカデミックプランや経営戦略等の時代に応じた変化に対応する為、キャンパスマスタープランは定期的(5年程度)に更新を行いながら継承されるものである。
(2014年5月16日、第6回2015年度以降のBKCキャンパス整備計画検討部会資料「キャンパスマスタープラン策定にあたっての確認事項」より)
【キャンパスマスタープランの構成】
- フレームワークプラン:
- 中長期的(15~30年後)なキャンパス像を想定したゾーニングや交通計画などに関するビジョン
- アクションプラン:
- 短期的(5年程度)期間を想定した施設整備の実行計画
1.2キャンパスマスタープランの策定と運用
1.2.1キャンパスマスタープランの策定プロセス
良好なキャンパス環境・空間を創造するために、基本方針の策定、部門別の整備方針の策定の各段階において合意形成を図りながら、最終的に大学として意思決定されたキャンパスマスタープランとして策定する。
キャンパスマスタープランをもとに実現に向けた取り組みを進めるためには、キャンパスの整備方針や活用方針を策定することが重要となる。
1.2.2キャンパスマスタープランの運用プロセス
キャンパスマスタープランの運用においては、図1-3のような運用プロセス(PDCAサイクル)を踏まえることで、将来的なアカデミックプランや経営方針の変更などにも対応しながら、更新を前提とした継続的な運用が可能となる。
また各段階において、関係する諸機関の合意形成を図りつつ、学園として意思決定を行うことが重要となる。
1.3キャンパスマスタープランの構成
立命館大学のキャンパスマスタープランは「フレームワークプラン」、「アクションプランの検討」、「リーディングプロジェクト」の3つを骨格として検討を進める。ここでは、キャンパスマスタープランの構成を示す。
chapter1ではキャンパスマスタープラン策定にあたり、キャンパスマスタープランの理念や役割、達成方策などを確認し、chapter2でキャンパス整備の空間コンセプトやマスタープランの基本方針を示し、立命館大学のキャンパス整備の基本目標として策定する。そして、キャンパス毎の特徴に応じた方針の策定を進めるため、chapter3でキャンパスにおける現状の把握と課題を抽出し、chapter4では目指すべきキャンパス像を共有するため京都キャンパスの空間コンセプトを設定する。さらに、部門別の中長期的な整備方針としてchapter5でフレームワークプランを示す。chapter6ではマスタープランでの検討を今後の具体的な整備につなげていくため、短期的な整備方針としてのアクションプランの検討課題を述べるとともに、フレームワークプランとアクションプランをつなぎ、目指すべきキャンパス整備を実現するためのリーディングプロジェクトについて確認する。また、chapter7でキャンパス整備におけるファシリティマネジメントの必要性について触れる。最後に、キャンパスマスタープラン策定におけるこれまでの検討経過と取り組みについてchapter8でまとめた。
1.4キャンパスマスタープランの達成方策
キャンパスマスタープランは、整備期間別・課題別に方針を検討しながら、目指すべきキャンパス像をわかりやすいよう提示する必要がある。キャンパス整備に関する透明性の高い議論を促進し、目指すべきキャンパス像を学園の全構成員が共有することで、全学的協力体制による、学生・教職員が参画するキャンパス整備を推進する。また、必要に応じて行われる短期的な改修・更新などのキャンパス整備を長期的方針と整合を持たせながら滞りなく実現できるようにし、適切な時期に長期的ビジョンの見直しを行う作業をキャンパスマスタープランの検討サイクルに含め、継承性と持続性(サステナビリティ)を持ったキャンパスマスタープランの達成を目指す。
1.4.1フレームワークプランの設定
フレームワークプランとは、概ね15~30年程度の中長期的なキャンパス全体の整備方針に基づく計画である。
キャンパス整備の方針を部門別に示すことで課題や取り組むべき整備をわかりやすく伝えることが可能となる。キャンパス空間はその部門別方針が多層レイヤで構成されている、部門毎の方針の調和を図りながらその重ね合わせることで、良好なキャンパスの実現を目指す。
広大なキャンパスには多くの建物が建ち、多くの学生、教職員が生活をしている。キャンパス空間は、時代に対応した教育を実現する場を提供し、社会情勢・財政状況などに柔軟に対応していかなくてはならない。その際、統一した方針のもとにキャンパス整備を進めていかなければ、キャンパスは無秩序な空間となり、建替えすらできない状況に陥る危険性がある。これにより、長期的視点でキャンパス全体を見通した計画を検討し、キャンパスマスタープランの位置づけを共有することがきわめて肝要である。
1.4.2アクションプランの設定
アクションプランとは、概ね5年程度の整備方針に基づく短期的な計画である。
フレームワークプランで掲げたキャンパス整備の方向性を実現化するためには、アカデミックプランだけでなく、経営戦略や財務条件とのすり合わせを行いながら実現可能性を踏まえた検討が重要である。
キャンパスマスタープランでは、アクションプランとして検討すべき施設整備課題のキャンパスマスタープランにおける俯瞰的な位置づけと、アクションプランの具体的な検討にあたりフレームワークプランとの整合性を保つために考慮が必要な条件の整理や、必要に応じたガイドラインの提示までを行うものとする。
1.4.3リーディングプロジェクトの設定
リーディングプロジェクトとは、目指すべきキャンパスの実現に向け、キャンパス整備計画全体を主導するプロジェクトである。
アクションプランは通常、個別単体の施設に関わるものであることが多いが、リーディングプロジェクトを設定することにより、従来個別に検討・整備していく手法では実現できなかった複合的な課題に取組み、アカデミックプランと連動したキャンパス空間の再編・実現を目指す。また、キャンパス計画における未決定の上位計画を個別の施設整備計画と連動して検討することで、上位との整合性を保ちつつ、個別の整備課題を迅速かつ円滑に解決することを可能とする。キャンパスマスタープランにおいて、特に必要と判断される課題をリーディングプロジェクト(重点検討課題)として設定できることとし、関係各所と中長期的に目指すべきキャンパス像や課題を共有しながら、柔軟かつ横断的に課題解決を図る(詳細は6章にて後述)。
【リーディングプロジェクト設定のための条件】
- 複数の施設整備課題をまたぐ複合的、横断的な整備計画であること。
- キャンパス全体のゾーニング計画や、個々のゾーンの面的な整備計画への影響が大きいこと。
- 優先順位の高いアクションプランを含みながら、フレームワークプランに関する未決定の事項を潜在的に決定づける可能性があること。