フレームワークプラン
Chapter4では、目指すキャンパスの実現に向けて、検討・配慮すべき内容を部門別にフレームワークプランとして示す。フレームワークプランは、概ね15~30年程度の中長期的なキャンパス全体の整備方針に基づく計画である。どのようなアカデミックプランにおいても配慮すべき考え方や対応可能な考え方について述べる。
4.3建物内部の機能構成
教室の層別構成
上層階へ行くほどに専門性が高まる教室を配置し、低層階には教養科目や基礎的科目を想定した教室、中層階にはゼミ教室や実験実習施設、高層階には研究関連施設を配置する。教室は表のとおりである。(2017年4月時点)
施設概要
OIC各棟別·階別の機能構成を以下に示す。
パブリックからプライベートへの四層の構成
大阪いばらきキャンパスの建築物はキャンパス全体の平面的なゾーニングに従った機能を分担するが、個々の建築物においても、パブリックとプライベートの段階分けに主眼をおいた層構成に基づき計画される。
・低層部(1階、2階)
もっとも公共性の高い機能を配置する。生協、学生施設および運動施設(C・D棟)、コンコース、教室および事務室(A棟)、集会施設(B棟)など、学内でも不特定多数が利用する機能を優先的に配置する。特に公園に面してはレストランや店舗(A棟・B棟・C棟)、まちライブラリー(B棟)など、市民の利用率が高い機能を配置する。図書館(B棟)も市民のアクセス性を高めるために、一部この層に配置する。
・中層部(3階、4階)
教学機能を中心とした機能を配置するが、公共性の高いものを優先的に配置する。
A棟、C棟ではコンコース、アカデミックラウンジ、メディアラボ、ゼミ教室を中心的に配置し、B棟では、図書館の個人学習や研究の利用を主とするゾーンや、セミナールームや研究会室などを配置する。
・高層部 - 1(5階、6階)
教学および研究機能を主としたプライベート性の高い機能を配置する。A棟では学部固有の教学施設を配置し、各階の動線の交差部には極力コモンズ空間を設ける。C棟、D棟ではセミナーハウスや研究所、研究センター、産学交流ラウンジなどの研究的交流活動を促進する機能を配置する。
・高層部 - 2(7階以上)
研究機能を配置する。教員研究室のほか、各種共同研究室や研究ラウンジ、セミナールームなどを配置する。
キャンパス全体をラーニング・プレイスに
OICは「アジアのゲートウェイ」「都市共創」「地域・社会連携」という3つの教学コンセプトを持って開設された。これと同調して施設計画においても、知識の伝達だけではなく能動的・自律的な学習を行なえる学習者中心の教学にふさわしい空間づくりを目指している。
OICの各施設はA棟からD棟の4つの建築物に集約されているが、中心的な教学施設であるA棟は、低層部を中心に大小127の教室を擁し、また高層部に教員や院生の研究室を収容する1棟の建築物である。「キャンパス全体をラーニング・プレイスに」という考え方のもと、低層階でこれらの教室群をつなぐ「コンコース」と呼ばれる空間を配置している。
コンコースは、ひとつながりのオープン・スペースであり、「学びの軸」としてキャンパスの骨格的な屋内動線としての役割を果たす。また、これを基軸にしてコモンズを含む自由な学習環境が配置されている。「キャンパス全体をラーニング・プレイスに」という標語は、いつでも、どこでも、誰とでも学び、学び合う空間を学習者が作り出すことができる空間を目指すことを意味している。
一方、集中して学習できる空間は、人により異なる。学生全員が図書館で集中できるわけではなく、やや騒々しい中でこそ集中できる学生もいる。背中側に壁がないと落ち着かない学生もいる。さらに、学びの場は図書館だけではなく、学外にも広がっている。学生ごとに学びのスタイルや必要とする学習環境が異なるという前提に立って計画が行われている。
アクティブ・ラーニング
教室は、おおよそ3つのカテゴリーで構成されている。従来型の教室と、情報教室、アクティブ・ラーニングに主眼をおいた教室の3つである。いずれの教室も、単に教える空間ではなく、「学ぶ空間」として設置している。そのため室名称には、敢えて「教室」の語を用いていない。
アクティブ・ラーニングに特化した教室のコンセプトは、「柔軟性」「多様性」「曖昧さ」を兼ね備えた「型がない”ビュッフェ”形式の空間」としている。インフラとしてのICTの重要性を認識しつつ、アナログと組み合わせて展開できるようにしている。また、家具や什器のレイアウトもデフォルトの状態を設定していない。多様なアクティビティに対応し、利用者に適した学習環境をデザインできるように配慮している。
これらの教室は、「キャンパス全体をラーニング・プレイスに」の考えのもと、コモンズと共通した考え方で設計されている。