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Campus Master Plan

京都キャンパスの現状と課題

chapter3では京都キャンパスの学部・研究科の構成や立地条件、敷地概要など、キャンパスを構成する基本条件の確認を行う。これらキャンパスの現状を把握した上で、キャンパス計画や整備における課題を抽出する。

3.1京都キャンパスの現状

3.1.1キャンパスの位置づけ

京都キャンパスとは主に衣笠キャンパスと朱雀キャンパスを示す。京都キャンパスマスタープランでは、次の3つに分けて記述する。2014年度までの検討では主に衣笠キャンパスを中心に検討を行ってきた。

京都キャンパスが位置する京都市の政策においては、魅力的な京都を目指す中で「歩くまち京都」や「地域ごとの観光創出」(京都市基本計画)、また「優れた景観を保全・再生・創造する」(マスタープラン)といった政策が打ち出されている。大学に関しては、「大学の集積・交流が活力を生み出す」(京都市基本計画)と認識し、都市計画マスタープランの北区の項では、「大学を生かしたまちづくり」を掲げ、行政として大学を支援する姿勢も表明している。また、「世界に誇る『大学のまち京都』」を目指しており、行政と連携・協働したキャンパス整備や、地域に開かれたキャンパスづくりを模索していくことも必要となっている。

【京都キャンパス】

①衣笠キャンパス(西園寺記念館(氷室)、究論館、アカデメイア立命21、歴史都市防災研究所、などを含む)
②朱雀キャンパス
③その他大学施設(グラウンド(原谷・柊野)、インターナショナルハウス(双ヶ岡、 宇多野、大将軍)など)
図3-1 衣笠キャンパス配置図(2015年4月時点)
図3-1衣笠キャンパス配置図(2015年4月時点)

3.1.2学部・研究科の構成

下図に2015年度時点の衣笠キャンパスと朱雀キャンパスの学部・研究科の構成と学生数(予定)を示す。

大阪いばらきキャンパスが開設(2015年4月)したことにより、政策科学部、政策科学研究科が衣笠キャンパスから移転した。

表3-1 学部・研究科別キャンパス人口(2015年5月1日現在)
表3-1学部・研究科別キャンパス人口(2015年5月1日現在)
写真3-1 衣笠キャンパスの航空写真(2009年5月撮影)
写真3-1衣笠キャンパスの航空写真(2009年5月撮影)
図3-2 京都キャンパスで学ぶ学生データ(2015年5月1日現在)
図3-2京都キャンパスで学ぶ学生データ(2015年5月1日現在)

3.1.3立地条件

【衣笠キャンパス】

写真3-2 存心館の時計台と衣笠山
写真3-2存心館の時計台と衣笠山

1981(昭和56)年に広小路から全面移転し、学舎の統合がはかられた。京都市北西部に位置し,衣笠山を背景にした緑豊かな地域である。鹿苑寺(金閣寺)・龍安寺・仁和寺が周辺に位置し、また等持院に隣接しており、歴史的名刹に囲まれたキャンパスである。等持院墓地へは立命館大学内を通過する。キャンパス北側には金閣寺と龍安寺を繋ぐ「きぬかけの路」が隣接し、多くの観光客が訪れる。

【キャンパス所在地】
京都市北区等持院北町56-1 他

図3-3 衣笠キャンパスの位置図
図3-3衣笠キャンパスの位置図

【朱雀キャンパス】

写真3-3 中川会館外観写真
写真3-3中川会館外観写真

2006(平成18)年に開設した。平安京時代からの京都の中心部である朱雀大路上に位置しており、周辺には二条城などの歴史的名刹がある。付近には、佛教大学や専門学校などがあり、教育機関の集積地でもある。JR二条駅・京都市営地下鉄東西線二条駅・各種路線バス停に近く、交通アクセスの良い環境である。

【キャンパス所在地】
京都市中京区西ノ京朱雀町1(中川会館)

図3-4 朱雀キャンパスの位置図
図3-4朱雀キャンパスの位置図
【氷室】
西園寺記念館
写真3-4 西園寺記念館航空写真
写真3-4西園寺記念館航空写真
【原谷】
尚友館、第2尚友館、第3尚友館、原谷サッカー場更衣・倉庫棟
写真3-5 原谷グラウンド航空写真
写真3-5原谷グラウンド航空写真
【柊野】
柊野総合合宿所・クラブボックス等 11棟
写真3-6 柊野グラウンド航空写真
写真3-6柊野グラウンド航空写真
【双ケ岡】
立命館大学インターナショナルハウス常盤
(英語名称:International House Tokiwa)
【宇多野】
立命館大学インターナショナルハウス宇多野
(英語名称:International House Utano)
【大将軍】
立命館大学インターナショナルハウス大将軍
(英語名称:International House Taishogun)
【京都キャンパス周辺の主な観光地】
鹿苑寺(金閣寺)、龍安寺、二条城、仁和寺、平野神社、等持院、衣笠山、堂本印象美術館、妙心寺、北野天満宮、わら天神など
図3-5 衣笠キャンパス近郊の主要な観光地
図3-5衣笠キャンパス近郊の主要な観光地
図3-6 京都キャンパス近郊の主要な観光地と大学
図3-6京都キャンパス近郊の主要な観光地と大学

3.1.4京都キャンパスの沿革

【衣笠キャンパス】
1965年に経済学部・経営学部の広小路キャンパスからの移転にはじまった衣笠一拠点化は1981年に完成した。1988年の国際関係学部新設以降、政策科学部・映像学部の新設、国際インスティテュート等の教学創造が図られてきた。びわこ・くさつキャンパス開設に伴い、理工学部(1994年)経済学部・経営学部(1998年)が移転した。2015年4月の大阪いばらきキャンパス開設に伴い、政策科学部、政策科学研究科が移転した。
【朱雀キャンパス】
2006年に法人組織と大学院施設(法科大学院、経営管理研究科、公務研究科)を展開するキャンパスとして新設された。大阪いばらきキャンパス開設(2015年4月)に伴い、経営管理研究科が移転した。
表3-2 京都キャンパスの前史
表3-2京都キャンパスの前史
表3-3 京都キャンパスの沿革
表3-3京都キャンパスの沿革

キャンパスのヒストリー

写真3-7 1950年代末の広小路キャンパス
写真3-71950年代末の広小路キャンパス
写真3-8 正門から臨む1940年代の存心館(広小路キャンパス)
写真3-8正門から臨む1940年代の存心館(広小路キャンパス)
写真3-9 1950年代の衣笠(等持院)キャンパス
写真3-91950年代の衣笠(等持院)キャンパス
写真3-10 衣笠一拠点化完成前(1977年)の衣笠キャンパス
写真3-10衣笠一拠点化完成前(1977年)の衣笠キャンパス
写真3-11 衣笠一拠点化完成後(1984年頃)の衣笠キャンパス
写真3-11衣笠一拠点化完成後(1984年頃)の衣笠キャンパス
写真3-12 2009年の衣笠キャンパス
写真3-122009年の衣笠キャンパス

3.1.5衣笠キャンパスの敷地概要(条件・法規制等を含む)

衣笠キャンパス整備において、空間計画上考慮すべき主な法的条件と京都市の関連施策等には以下のようなものがある。
○都市計画に基づく用途地域
○京都市風致地区条例
○京都市景観条例
○京都市眺望景観創生条例
○京都市のまちづくり関連施策
など

京都の美しい景観を守るため、京都市では昔から全国に先駆けて様々な取り組みを進めてきている。特に、衣笠キャンパスは、鹿苑寺(金閣寺)や龍安寺、衣笠山のある区域に立地しているため、特に厳しい規制が設けられている地域である。世界遺産・京都にある大学として果たす役割として、公共の財産である景観を守るため、よりよい景観計画を行っていく必要がある。

【建ぺい率】
敷地面積に対する建築面積の割合。建築基準法によって、敷地内に適度な空地を確保し、防火と市街地環境への配慮を目的として都市計画区域内の用途地域に応じて上限が定められている。また、衣笠キャンパスの大半の敷地は、京都市の風致地区に定められており、用途地域の規制よりさらに厳しい規制がかかっている。特に、①の敷地の建ぺい率は上限を向かえており、新たに建物を建設するのは極めて難しい状況である。
【容積率】
敷地面積に対する延床面積の割合。建物の規模を規制する数値のひとつで、都市計画区域内の用途地域に応じて上限が定められている。
図3-7 土地情報
図3-7土地情報
表3-4 敷地面積等の一覧表(参考)
表3-4敷地面積等の一覧表(参考)
【用途地域】(都市計画法)
都市計画において、将来の土地利用の方針を踏まえ、用途の混在を防ぐことを目的として定められている。第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域には、大学用途の建築物は建設することができない。
【高度地区】(都市計画法)
土地利用及び地域特性を考慮して、居住環境の保全、自然環境や歴史的環境との調和、均衝の取れた市街地景観の形成による京都の風土にふさわしい都市美の育成等を目的として、当該地域には、建築物の高さを規定する高度地区の指定がある。図3-7の①の敷地のほとんどは「20m以下」、①の一部と③、④、⑤などは「12m以下」と定められている。
図3-8 京都市都市計画図(用途地域・高度地区)
図3-8京都市都市計画図(用途地域・高度地区)
表3-5 高度地区における建築物の高さ制限の考え方
表3-5高度地区における建築物の高さ制限の考え方
【地区計画】(都市計画法)
西園寺記念館のある氷室には京都都市計画(京都国際文化観光都市建設計画)において、都市計画立命館大学氷室地区地区計画の決定がされている。良好な教育・研究環境の確保と共に周辺の住環境及び景観と調和した良好な市街地環境の形成を図ることを目的とし、建ぺい率、容積率、壁面の位置、建築物等の高さ及びかき又はくさの構造に制限を加えた。
【都市計画道路】(都市計画法)
キャンパスに隣接して、南北に都市計画道路「3・6・120木辻通(区分番号35_1)」が存在し、一部キャンパスの敷地が含まれているため、将来存心館建替えなどの際には配慮が必要となる。また、2010年に都市計画道路の見直しが行われ、キャンパス内に計画されていた「Ⅱ・Ⅲ・34小松原通(区分番号39_1)」とキャンパス北側に隣接して計画されていた「Ⅱ・Ⅲ・34小松原通(区分番号178_1)」は廃止されている。
【敷地内の建物高さ制限】
衣笠キャンパスの土地は複数の用途地域、規制がかかっており、場所により高さや容積率、景観への配慮など守るべき規制が異なる。当該地域においては、「京都市風致地区条例」の高さ規制が最も厳しく、建替え時には配慮が必要となる。
【歴史的風土特別保存地区】(古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法[古都保存法])
「古都」における「歴史的風土」の保存を目的とした古都保存法に基づき、京都市において歴史的風土特別保存地区が指定され、この地区内においては、農林漁業用の小規模な建築物や地下に設ける建築物などを除いて建築物等の新築や宅地の造成、木竹の伐採、土石の堆積等の現状変更行為は原則として認められていない。図3-7の⑧第一バイク置場の一部が本地区に指定されている。
【京都市風致地区】(都市計画法)
都市の良好な自然的景観を維持することによって、都市全体の美しさを保全し、併せて良好な生活環境を保持していくことを目的として、風致地区が定められ、新築・増改築などに際して、意匠・色彩等の許可が必要で、かつ建築物の高さ制限が設けられている。図3-7の①の敷地のほとんどが「風致第5種」に指定されており、建築物の最高高さは高度地区の指定よりさらに厳しい「15m以下」と定められている。その他、「山ろく型建造物修景地区」や「沿線型美観形成地区」に指定されている。
図3-9 京都市都市計画図(風致地区等)
図3-9京都市都市計画図(風致地区等)
表3-6 風致地区における建築物の高さ、建ぺい率の基準
表3-6風致地区における建築物の高さ、建ぺい率の基準
【眺望空間保全区域】(京都市眺望景観創生条例)
京都の優れた眺望景観を創出するとともに、これらを将来の世代に敬称することを目的として「京都市眺望景観創生条例」が定められている。この条例に基づき、龍安寺近景デザイン保全地区および鹿苑寺(金閣寺)近景デザイン保全地区に属しており、高さ規制や屋外広告物の新基準、塔屋の高さ算入などより厳しい条件となっている。
図3-10 京都市都市計画図(眺望景観保全)
図3-10京都市都市計画図(眺望景観保全)
【土砂災害防止法による区域の指定】(土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律/京都府)
土砂災害のおそれのある区域や建築物に危害が生じ、住民に著しい危害が生じるおそれのある区域を明らかにし、危険の周知、警戒避難体制の整備等のソフト対策を推進するものである。本区域に柊野グラウンドが指定されている。また、衣笠キャンパス、西園寺記念館、原谷グラウンドの一部の敷地についても基礎調査が実施され、今後手続きを経て区域指定を行う見込みである。

3.1.6衣笠キャンパスの施設概要

衣笠キャンパスには、建物竣工以降に策定された高度地区や風致地区の高さ規制の基準を満たしていない既存不適格建物が存在する。これら対象建物の建て替え時には、現行の高さ規制(15m又は12m)が適用されるため、既存の建物高さより低くする必要がある。表3-8においては、衣笠キャンパス内の施設の耐震状況が確認できる。耐震対策は安全・安心への対応として年次計画的に進められ、2015年4月現在において耐震補強が未完了建物は現図書館と学生会館の2棟である。

図3-11 既存建物における築年数の状況(2015年4月時点の情報)
図3-11既存建物における築年数の状況(2015年4月時点の情報)
図3-12 既存建物における建物高さの状況(2015年4月時点の情報)
図3-12既存建物における建物高さの状況(2015年4月時点の情報)
表3-8 京都キャンパス内主要建築物の施設概要表と築年数・耐震性能に関するグラフ
表3-8京都キャンパス内主要建築物の施設概要表と築年数・耐震性能に関するグラフ