フレームワークプラン
Chapter4では、目指すキャンパスの実現に向けて、検討・配慮すべき内容を部門別にフレームワークプランとして示す。フレームワークプランは、概ね15~30年程度の中長期的なキャンパス全体の整備方針に基づく計画である。どのようなアカデミックプランにおいても配慮すべき考え方や対応可能な考え方について述べる。
4.8環境配慮
4.8.1エコアクション・キャンパス
ユーザーと環境の関わりを誘発する「エコアクション・キャンパス」への取り組み
OICで採用されているエコアクション促進BEMSの概要を下図に示す。エコアクション、熱源、電力の情報を統合し、より効率の高い運転、施設運用に繋げるようコントロールすることが重要である。
ソトワーク
屋外環境の快適性を見える化し、積極的な活用を促す屋外の快適性(天気、温度、湿度など)を数値化し、室内表示することで利用者に屋外での活動(ソトワーク)を促す。気持ちの良い空間での活動が閃きを促し、建物内の省エネ(照明、空調など)効果を高める。
MOTTAINAI システム
学生数に応じて、照明や空調の利用エリアを自動調整大教室内に設置した人感センサーで在室数をカウントしながら、照明、空量、換気を自動制御し、前方ほど快適性が高くなるように環境をコントロールする。人数が少ない時でも授業時の親近感を高めると同時に、省エネルギー効果も高める。
スマート講義システム
季節や方位、学生数に応じ、講義室運用を調整講義室運用システムとBEMSを連動させ、スマート講義システムとして運用している。季節、方位、利用人数から空調負荷のより低い部屋を優先して割り当てることで省エネにつなげる。(例:夏期の午前中は西側の教室利用、利用する教室をなるべく隣接させ隣室非空調部を減らす、エネルギーセンター棟に近い教室利用を優先し、配管ロスを減らす等)
複数建物連携によるエネルギーの最適化
再生可能エネルギー、コジェネレーション、ソーラークーリング、空冷チラーをベストミックスさせたエネルギーセンターを配置、複数建物のエネルギー需給状況を最適化すると共に「エコ・アクション」をコントロールすることで、34%の省エネ化を目指している。
WAONポイントによる環境運動の促進
WAONポイントを活用した環境行動を促進環境行動(エコアクション)に応じて、全国普及しているWAONカードにポイント付与している。隣接するイオンモール茨木(イオンリテール)と連携し、環境活動だけでなく社会・地域貢献活動の促進も含めた展開を実施している。
4.8.2外装での配慮
知のハニカム <研究者の知が集積する>
教員研究室の北面、南面の外装である。各棟が短冊状に対面配置となることから、視線の見合いを制御するため、座位時には視線が切れる腰高1100mmの横窓と、対面する窓を入れ違いで配置した縦窓を組み合わせた形式としている。
外壁はALC+ガルバリウム鋼鈑の2重壁とし、断熱性の向上、騒音の低減を図っている。また、外壁厚280mm、内壁厚300mmと壁に厚みを持たせ、横窓と縦窓の組み合わせにより日射受照量を四角の開口+小庇600mmと比べて約42%低減できるように計画している。また外壁仕上げは台形形状のスパンドレルを左右反転して市松状に配置することで、見る角度や光のあたり方によって刻々と表情を変えるゆらぎのある外装としている。
杜のユラギ <木漏れ日に抱かれた学びの場>
公園側に配置した大講義室の北面、東面、南面の外装である。3種類の幅の異なる縦長PC板と縦連窓により「杜」の木立をイメージしている。PC板は方位に呼応した菱形の形状とし、直達日射を最小化し、教壇に向かう学生の視線は、木漏れ日のように柔らかな自然の間接光によって、授業への集中と安らぎをもたせた。四角形状のPC板と比べて菱形形状とすることで日射受照量は約15%低減できるようにしている。大講義室の学びの場における開放と集中を杜のゆらぎによる表現として試みている。
4.8.3その他の配慮
OICでは、その他にも、建物の設備であるエレベーターシャフト(写真4-8-10)や、雨水を直接利用する池など、環境配慮のための多様な工夫を行っている。